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エストニアで同性婚を認める原動力になった映画「ファイヤバード」を観て

あらすじ
1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。

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感想

今年度の私のナンバーワン映画が更新された。それぐらい衝撃を受けた作品だった。1時間45分の長さの映画だったが、日本映画だったら全編後編に分かれているぐらいのストーリー展開があった。

しかし、映像美として、映画作品としても少し内容が薄い気がしなかった。むしろ圧倒していた点もあるも思う。

なぜ、こんなことが可能だったのかを自分なりに分析してみたが監督がミュージックビデオ出身であることが起因していると思う。

映画としては、異常な頻度で画面が切り替わり恐らく撮影したのに苦労したシーンを躊躇なくカットしていく。冒頭の基地の紹介シーンでは、5,6秒で次々画面が切り分けるが、そのスピード感が臨場感として伝わり高揚感と生きた表現を可能としていると思った。

描写としてのこだわりは、二点が色濃く反映されていた。話し手の顔、表情をメインに映すことと、肉体美を細部まで表現することである。

映画の会話シーンでは、カメラをどこにおくのかで視聴者の視点が決まると思っている。俯瞰して、第三者として視点を保有するのか、登場人物の視点から当事者意識を植え付けるのか。

この映画において、視点は第三者視点ではあるが、正面から表情をすべてはっきりと映すことで現場に自分いるかのような没入感を実現していた。また、全体的に被写体との距離が極めて近い。

また、映像美としては、肉体をピンポイントで描写するという手法を持ちいていた。クライマックスのシーンで、美をどう表現するのか?
映画監督の手腕が問われるシーンだと思う。

風景を差し込む。フェードアウトのように光を多く入れる。音楽をかける。泣かせる。音楽を止める。等々。

とにかく、違和感というか注目させる必要がある。今この映画のクライマックスですよ。って伝えるために

この映画は、LGBTの恋愛作品であり男同士の恋愛作品であるが暗喩することなく正面から表現することにしていた。しかも、筋肉美などをズームすることで全体像でなく、単体像というかそのままの美しさとしていた。なので、俳優たちはとても鍛えあげていた。

とても原始的な表現であると思った。古代ギリシャから鍛えた肉体というのは、美の象徴とされていた。極めてオーソドックスの映像表現であるが、とっても効果的だったと思う。

また、映画の内容自体としては、事実をベースとしている作品であるからか話の中に無理がなかった。極めて現実的な流れであるが、同時に劇的であった。自分は映画は劇的な内容が好みなので趣味とあっていた。

ただ、同性愛を隠しながらの恋愛映画ではなく、男女男の三角関係を描いた作品だったと思う。女は結婚したが、もう一人の男にも愛情があったと個人的は思っている。むしろ、結婚した男よりも強かった感情もあったのではないかと思っている。

この映画の惜しかった点をあげるとしたら、言語と間を恐れたことであると思う。

言語としては、今作は英語の作品となっている。史実通りにするなればロシア語を話すべきなのだが、昨今の情勢を考えるとロシア語の映画とならば放映できる映画館がほとんどなく英語の作品となったのだろう。

国際情勢の影響を映画が受けるには、悲しいが致し方ない。俳優人も普段英語を話し慣れていない人もいるのか、イントネーションが英語らしさがなく初めては別の言語を話しているのかと思った。
自分は、字幕を追っているだけなのでそこまで気にしなくなったが言語に流暢な人にとっては聞きづらいものがあったかもしれない。

次に間がなかったことである。個人的にジェットコースターのようにストーリーが流れいったのだが、休憩処がなかった。間があるからこそ、思考できると思うし印象を深くできると思う。あるべきところでの間があればもっと良くなると思った。

ただ、面白い作品だと感じた。内容が内容なので人を選びそうであるが。

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