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vRAN技術によって未来のモバイルネットワークはどう変わるのか?
こんにちは!富士通広報Note編集部です。
皆さんがお使いのスマートフォン(スマホ)。当たり前のようにネットワークにつながっていますが、その仕組みを考えたことはありますか?これには無線基地局とスマホの間で「RAN(Radio access Network:無線アクセス網)」と呼ばれる無線技術が活躍しているんです。
普段あまり気にしたことがないと思いますが、実はビルの屋上などにたくさんのアンテナやRadio Unit (無線機)が設置されているのを見ることができ、これらは無線基地局につながっています。そしてそれらたくさんの無線基地局が連携し、電波の品質を常に最適化することで、スムーズな通話や高速データ通信を実現しているのです。
富士通は、このRAN技術の進化に貢献し、より快適なモバイル社会の実現を目指しています。
このスマホの無線基地局が、いま仮想化技術の導入により、高い柔軟性と効率性を持つvRAN(Virtual RAN:仮想化無線アクセス網)へと進化しようとしています。
今回は富士通のネットワーク部門をリードするEVPの水野晋吾に、富士通が考えるモバイルネットワークの未来を聞きました。
インタビュイー:
富士通株式会社 執行役員EVP
システムプラットフォームビジネスグループ 副グループ長 水野晋吾
![](https://assets.st-note.com/img/1731980806-d6ayO9QM0pewbKEfBAcCHNJW.png)
あらためてvRANとは何ですか?
vRANは、従来の基地局の機能をソフトウェアで制御する革新的な技術です。従来は、基地局の機能全てが一つの装置に詰め込まれていましたが、vRANでは、制御部分(CU)と無線処理部分(DU)を分離し、それぞれを仮想化して、ソフトウェアとして動作させるのです。まるで、スマホのアプリのように、必要な機能を個別に追加したり、アップデートしたりできるようになります。
最大のメリットは柔軟性とコスト削減です。富士通が提供するvRANには、ハードウェアとしてGPUなどインラインアクセラレーターを搭載した汎用のサーバを使用します。ハードウェアを共通化できるため、初期投資を抑えられますし、故障時の修理も容易になります。ソフトウェアアップデートで機能追加もできるので、新しい技術への対応も迅速に行えます。さらに、クラウド技術と組み合わせることで、ネットワーク全体の運用管理も効率化され、人件費などの運用コストも大幅に削減できます。これは、通信事業者にとって大きな魅力であり、より低価格で高品質な通信サービスを提供できる可能性を秘めていると考えています。まさに、これからの時代を支える基盤技術と言えるでしょう。
vRANに、なぜGPUが使われるのでしょうか?
5G、そして将来の6Gネットワークでは、膨大なデータ処理がリアルタイムで求められます。従来のCPUだけでは処理能力が追いつかず、遅延が発生したり、通信品質が低下したりする可能性があります。そこで、並列処理に非常に優れたGPUが有効となるのです。
例えば、Massive MIMO(注1)と呼ばれる、多数のアンテナを用いた高度な無線技術では、膨大な数の信号を同時に処理する必要があります。GPUの並列計算能力によって、この処理を高速化し、高品質な通信を実現します。さらに、AIや機械学習を活用し、ネットワークをリアルタイムに高速かつ高品質に最適化します。
また、将来の6Gに向けても、従来、LTEや5Gのように通信システムの世代が変わると、それに合わせた性能や機能に合わせたハードウェアへ更改する必要がありましたが、GPUは6G時代を見据えた十分な信号処理能力を備えているため、ソフトウェアのアップデートのみで5Gから6Gへスムーズな移行が実現できるのです。このことが、6Gへの移行において、コスト削減と迅速なサービス展開に大きく寄与します。
特に、2021年から行っているGPU技術の世界的リーダーであるNVIDIAとの協業により、最先端のGPU技術とソフトウェアをvRANに活用することで、他社を凌駕する高性能で効率的なvRANソリューションの提供が可能になります。単にGPUを搭載するだけでなく、NVIDIAの専門知識と技術サポートを最大限に活用し富士通の無線技術と融合することで、次世代モバイルネットワークに最適化されたシステムを実現できます。この協業は、5Gおよび6G時代のモバイル通信の発展に大きく貢献すると確信しています。
注1 Massive MIMO:基地局側で伝搬路状態を高精度に推定し、ビームフォーミング技術を用いて複数の端末と同時に通信する技術。
vRAN技術における富士通の強みは何ですか?
富士通の強みを、一言で言えば「総合力」。長年にわたる通信システム開発の経験、先進的な技術への積極的な取り組み、そしてグローバルな展開力、これらが三位一体となって、他社にはない優位性を生み出しています。
具体的には、長年の通信事業者との協業を通じて培ってきた深い理解と実績があります。単に技術を提供するだけでなく、通信とAIの融合など、お客様のニーズを的確に捉え、最適なソリューションを提供できる点が強みです。技術面では、高度な仮想化技術、AIや機械学習技術、そしてGPUを活用した高速処理技術などにより、安定したシステム運用、高性能なネットワーク制御、そして迅速なサービス展開を可能にしています。特に、NVIDIAとの協業によるGPU活用は、他社に先駆けた取り組みであり、競争優位性を確立する重要な要素となっています。
vRAN技術によって、私たちの暮らしはどのように変わりますか?
vRAN、特に富士通が提供するGPUを活用したvRANは、皆さんのモバイル体験を飛躍的に向上させます。まず、通信速度と安定性は劇的に向上することが期待できます。 これまでは混雑時などに速度が低下したり、途切れたりする経験をされた方も多いと思いますが、私たちのvRANは、GPUによる高速な信号処理とAIによる高度なネットワーク制御で、場所や状況に関わらず、常に安定した高速通信を提供します。高精細動画のストリーミングも、オンラインゲームも、ストレスなく楽しめるでしょう。
また、GPUの並列計算能力は、新たなサービス創出にも貢献します。例えば、ARやVR技術の活用が進み、より没入感のあるエンターテインメントや、遠隔医療、遠隔教育といった分野での革新的なサービス提供も期待できます。またリアルタイム翻訳機能が高度化し、言葉の壁を越えたコミュニケーションも容易になるかもしれません。
これらは、単に通信速度が速くなったというだけでなく、生活の質そのものを高める恩恵をもたらす変化と言えるでしょう。
富士通は、オープンなアーキテクチャーを採用し、様々なパートナーと連携することで、vRANエコシステムの構築をリードしていきます。NVIDIAとの協業によるGPU技術の活用もその一環です。私たちは、安全で信頼性の高い、そしてより快適なモバイル社会の実現を目指しています。そのためには、単に製品やサービスを提供するだけでなく、通信事業者へのきめ細やかな技術サポート、そして将来を見据えた技術開発にも積極的に取り組むことで、vRAN技術の普及を加速させ、より多くの利用者がその恩恵を受けられるように尽力していきたいと思っています。
富士通は、2024年11月には、ソフトバンク株式会社とのパートナーシップも発表し、様々なパートナーとの連携を強化しています。vRAN技術を進化させ、快適で新しい未来のモバイル社会を創出していきます!