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富士通が目指す未来のAI向けコンピューティング

こんにちは!富士通広報note編集部です。
近年、AI技術の急速な進化と普及で、私たちの生活も大きく変わってきています。革新的なサービスが次々と生まれる一方で、AIを開発・利用するためのコンピューティングリソースの需要が増え、また、消費電力の増加による環境への影響も心配されています。地球環境に配慮しながらAI技術を発展させ、より多くの人がAIの恩恵を受けられるようにするには、コンピュータの進化が不可欠です。
そんな中、富士通は本日、Advanced Micro Devices, Inc.(以下、AMD)とAIやHPC領域における協業を進める覚書を締結しました。これにより、富士通の次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」を搭載したプラットフォームではAMDのGPUも利用できるようになり、AIコンピューティングの選択肢が広がります。今回は、「FUJITSU-MONAKA」の開発をリードする新庄直樹に、富士通が考えるコンピューティングの未来と、AMDとの協業の狙いを聞きました。

インタビュイー:富士通株式会社 富士通研究所 先端技術開発本部 本部長
        新庄 直樹

「FUJITSU-MONAKA」の開発をリードする新庄直樹

まず「FUJITSU-MONAKA」について教えてください

「FUJITSU-MONAKA」※1は、富士通が次世代データセンター向けなどに開発しているArm命令セットアーキテクチャに基づく汎用CPUで、最先端の2ナノメートルテクノロジーを採用しています。自社設計のマイクロアーキテクチャ、低電圧技術といった富士通独自技術活用により、高い処理性能と電力効率を両立させることを目標に、2027年リリースに向けて開発を進めています。また、その性能を手軽に最大限活用できるように、OSSコミュニティ連携を通じた業界標準ソフトウェア対応を推進しています。

※1 FUJITSU-MONAKA:この成果は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業の結果得られたものです。

「FUJITSU-MONAKA」のAIに関する取り組み

今回AMDとの協業に至った狙いは何でしょうか

AMDとの協業は、高性能かつ省電力なAIコンピューティング基盤を構築し、AIのオープン化を加速するという共通のビジョンを実現するためのものです。

「FUJITSU-MONAKA」は、高い電力性能を誇るCPUです。これと高性能なAMDのGPUを組み合わせることで、多くのAIサービスにおいて優れたパフォーマンスと電力効率を実現するAIコンピューティング基盤を実現し、グリーンなデータセンターの実現に貢献できると考えています。

AIにおける「FUJITSU-MONAKA」の強みとは?

■AIにはモデルの学習と推論処理がある

一般的に、AIには学習させてモデルを作るプロセスと、学習済みのモデルにもとづいてデータの予測や分類を行う推論のプロセスがあります。「FUJITSU-MONAKA」とGPUの組み合わせは、大規模言語モデルをはじめとする様々なAIモデルの学習と推論処理に活用されます。AIの学習には膨大な計算資源が必要なため、GPUがよく使われますが、推論処理では必ずしもGPUが最適とは限りません。特に、推論処理においては、「FUJITSU-MONAKA」単体でも高い性能を発揮するように設計しています。

■「FUJITSU-MONAKA」はAIの高い性能が発揮できる

推論処理は、学習ほど演算量を必要としないため、CPUでも十分に対応でき、CPUで処理した方が電力効率もすぐれている場合があります。「FUJITSU-MONAKA」は、AIに必要十分な精度で大量の演算を行えるAI専用命令※2を搭載し、生成AIエンジン※3などもCPU単体で高い性能を発揮するよう設計されています。これにより、例えば大規模言語モデルなどの生成AIを使うときにも、推論処理にはGPUを使用しない分、優れた電力効率を実現します。さらにCPUであるために、柔軟なアプリケーション開発が可能、エッジコンピューティング環境や小規模データセンターにも導入しやすい、といったメリットもあります。また、「FUJITSU-MONAKA」は競合CPUに比べて高性能、低消費電力、高セキュリティを誇り、より速く、グリーンかつ安全な推論環境を提供します。

■物理シミュレーションをAIで置き換えることも

また、AIにより、高度なシミュレーションを置き換えるようなユースケースも考えられます。その一つは、サロゲートモデルと呼ばれる、AIを使って流体力学などの複雑な物理シミュレーションを代替する手法を用いるものです。例えば自動車の空力設計において、まず、シミュレーション結果をもとにGPUで学習したサロゲートモデルを構築します。大まかな解析結果を得るフェーズでは、CPUでも高速に結果が得られるサロゲートモデルを使った推論を活用します。より物理現象に忠実な結果が求められるフェーズでは、CPUを用いて高精度なシミュレーションを実施します。このように、フェーズに応じてサロゲートモデルを活用することで、業務プロセス全体の効率化を図ることができます

 ※2  AI専用命令:FP16(16ビット浮動小数点数)、FP8(8ビット浮動小数点数)などの低精度浮動小数点演算命令のことを指します。一般的なアプリケーションでは高い計算精度が求められますが、AI処理では、一度に大量の演算を行う速度が優先されます。精度を抑えることで一度に大量の演算が実行可能になり、高速なAI処理が可能となります。

※3 生成AIエンジン:「FUJITSU-MONAKA」で高い性能を発揮するように設計された生成AIに関するソフトウェアを指します。現在、主にGPUで動作するソフトウェアを「FUJITSU-MONAKA」で実行可能にする取り組みを進めており、CPUのみで生成AIをリーズナブルに利用できることを目指しています。

「FUJITSU-MONAKA」のサービス事例

今回の協業を通して、富士通はどのようなAIコンピューティングを目指しますか?

富士通は、AMDとの今回の協業を通して、よりオープンなAIやHPC向けプラットフォームの構築を目指しています。オープンソースソフトウェア(OSS)のコミュニティや団体と連携を強化し、OSSベースのAI向けソフトウェアの開発を推進します。これにより、多くの開発者が様々なハードウェアを使って容易にAIアプリケーションを開発できる環境を整備し、AIのオープン化を促進し、AIの社会実装を支援します。富士通は、AMDとの協業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献する、よりオープンでアクセスしやすいAIコンピューティングを実現していきます。


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