建築家・XR空間デザイナーの2022年
建築家・XR空間デザイナーとして独立して1年が過ぎました。
今年はStudioでは建築家として物件選定フェーズから関わったり、空間とブランディングのお手伝いをしたりと従来の設計の範囲を越える様々なプロジェクトを行いつつ、
VirtualLabではXR空間デザイナーとして様々なプラットフォームのXR空間制作をしたり、メタバースサービスやVRアプリの空間デザイン行っていたりしました。
現状は、建築家・XR空間デザイナーを称していますが、正直、建築家という肩書きが窮屈に感じる時もあり、空間として取り扱う領域がかなり曖昧になり、拡張していったのを実感した1年でした。
空間の新たな「リアル」について
空間の新たな「リアル」をつくるというのはクラフトノーツで掲げているテーマであるのですが、
ここでいう「リアル」は"それぞれの現実"を指していて、フィジカルな現実とバーチャルな現実の両方のことを指します。
ますます社会にXRが浸透してくる中で、フィジカルな現実とバーチャルの現実の割合が揺らいでいくと考えていて、
時代やビジネス、ユーザーが必要としている「リアル」を空間を通してどう創出し、獲得していくか、その人の「リアル」は空間と共にどのように作られていくのか。そんなことに興味があり、活動をしています。
具体的には、今までは現実は1つだけと捉えられてきたのが、XR技術によっていろんな現実を持つことができるようになったと言われています。
そのため、社会やその成り立ちに変化が生まれることで、空間のプログラムが変化したり、新たな用途が生まれてくると思います。
それがバーチャル空間単体であったり、フィジカルな空間の拡張であったり、フィジカルとバーチャルが入り混じった空間であったりと様々ですが、
それによって、新たな建築計画、空間デザイン、空間体験の構築が必要になってくると考えており、そういった部分をStudioと VitualLabの2部門でサポートできないかというわけです。
当然フィジカルとバーチャルで獲得できる「リアル」については異なると思っていて、VRだけでなくARなどの技術も使い構築していく必要もあると思っています。
フィジカルな空間とバーチャル空間の扱いの変化について
例えば7月に設計したXRエステのプロジェクトは、バーチャルの技術が入る前提での内装設計であり、フィジカルな空間とバーチャル空間を等価に扱うようなプロジェクトをやりました。
具体的には、店舗をデジタルツイン空間としても用意し、そちらでできることを設定することで、フィジカルな空間ではしっかりとベッド数や部屋がとれるという考え方です。
フィジカルな空間のほうはコンパクトなため、それぞれの場所に多重の意味や機能を持たせる計画にもしています。
他にも渋谷パルコではXR実験店舗兼ギャラリーというNFTを活用した空間が出現していたり
当たり前のようにフィジカルな空間とバーチャル空間がセットで作られる事例がいくつか出てきています。
いずれにしても本質的なものを目指すのであれば、バーチャルをどのように活用するか、何のためにバーチャルを作るのか。その目的設定が必要になります。
バーチャルでの目的をしっかり定義することで、フィジカルな空間の作り方も変わってくると感じました。
XR空間体験について考える
XR表現を高めるために、NEWVIEWSCHOOLというプログラムにクリエイターとして参加しました。そこで行われるレクチャーは、様々な領域で活躍される方々によるもので、XRの体験を考える中でXRが総合格闘技であることを再認識しました。
また最後には、真面目にバーチャルとリアルの価値についた考えつつも、コミカルなテイストの作品を制作しました。
こちらはアワードのファイナリストに選出され、渋谷パルコで展示をしてもらったりしました。
AR(Augmented Reality)への取り組み
今年はARにも取り組みました。ARは都市や建築の拡張につながる技術として勉強会に参加したり、
以下のような取り組みをしています。
Kawaii Cyberpunk
withARハッカソンで都市とXRについて考えコンテンツを制作しました。新宿東口をKawaiiとCyberpunkを感じるオブジェクトで構築された様子をARモバイルアプリを使って見られるようにしました。
アプリにはcyberpunkな義手でビームを撃てたり、Twitter連携でお気に入りのシーンを世界に拡散できる機能を搭載しています。
古町夜市
古町夜市というまちづくり系のイベントに、NEWVIEWクリエイターたちとXR作品を展示するブースを出展しました。
当日は新潟でも稀な大雪の天候でしたが、
地下道を利用したイベントであったため、
400人近い人が来場し、ARって何?VRって何?というお客さんが多かったのですが、体験し出すと皆さん夢中で楽しんでくれている様子で、感覚的に未来を感じ取ってくれているようでした。
社会全体が試行錯誤のフェーズだった1年
メタバースと言われる様々なサービスも、
それがどういう社会を構築するのか、どんな価値を与えられるのかを解像度高く考え、実践できているものが良いものだったと思いますし、そういったものを今後も支持したいと思っています。
また建築家としてXR領域に関わりながら見てきた まだ朧げな" メタバース"の輪郭と、一部の建築業界との認識のズレについては下記の記事として書いています。
1年を通して良い事例、そうでない事例含めて
幅広く観測をしてきたので、来年は良い事例に分類されるような空間体験を作っていきたいと思っています。
また建築をやりながら、XRに興味を持ってバーチャル領域に飛び込んだこともあるので、今後もフィジカルな空間の知見を活かしながら、
XR空間体験やメタバースについて新しい視点を獲得できるようにしたいと思います。
最後に、この1年でも数多くのプロジェクトのご依頼をいただきました。
これも皆様のおかげと思っております。
来年もよろしくお願いいたします。