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「ひっつき虫」のマイクロノベル 他3篇 #17

 町対抗ひっつき虫大会。選手のグローブには、町内で丹精こめて栽培された競技用オオオナモミのずっしり重い鈎棘の実が握られている。相手につけた量が多い方が勝ち。競技用に改良される前は、このくらい小さかったものだ。

 ひっつき虫ことオナモミの実。久しぶりに見かけて、子どもの頃を思い出した。近所の仲間と投げあって遊んだ日々。秘密の探偵団のバッジにもなった。そして、そのオナモミの花言葉を最近知った。「頑固」「粗暴」「怠惰」。あの仲間たちは、どうしているだろう。

 真っ赤に燃える満天星躑躅の紅葉の時期は短い。冬芽はたくさんの小さな蠟燭のようにも見える。亡き人を思い、静かに手をかざすと、満天星躑躅は人肌に温い。知らんけど。

 石畳の上に、苔が描いた言葉があると、こっそり教えてくれた人がいる。その言葉の意味に驚いて、苔に返事が書きたいのだけれど、どうすれば苔の言葉が描けるのか、未だわからない。その間にも、言葉は描き足されていく。

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