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「サオトメカズラ」のマイクロノベル 他3篇 #62
サオトメカズラの花の深淵に、世界の欲望が沈んでいるといったのは、アリストテレスだったかの。どうせまた嘘っぱちだろうって。そんな嘘っぱちだかなんだかわからないものを探したくなるのも、欲望のうちなのだよ。
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ほろほろと落ちてくる花吹雪。見上げれば高く伸びたヘクソカズラの蔓に咲く花、一日花で咲き終われば落ちてくる。この街では、この花はサオトメカズラと呼ばれて縁起がいいものとされる。名前の力はそういうものだ。
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ヘクソカズラ収容所なんて、ろくでもない名前をつけやがって。さあ逃げるぞ、われわれはサオトメカズラなのだ。塀からこぼれ出るその姿。でも、塀の内側はアスファルト舗装された空き地が広がっているだけなのです。
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冬が近づくと、サオトメカズラはたくさんの実をつけます。そこにはアリストテレスのいう通り、世界の欲望が宿り黄金色に輝くのです。そして地面に落ちた世界の欲望は何年も生き永らえて、再び芽吹く時を待つのです。
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