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採用面接で「コミュ障な企業」を見分けるたった1つのシンプルな方法

これまで何回か転職してきましたので、中途採用の面接をたくさん受けてきました。

どの面接も前置きはたいてい同じです。例えば、こんな感じ。

担当「本日は弊社までお越しくださいまして、ありがとうございます」
藤田「こちらこそ、お忙しいところ面接の機会をいただき、ありがとうございます」
担当「今回面接を担当するのは、〇〇事業部の責任者である△△と、採用担当の私◇◇です。よろしくお願い致します」
藤田「よろしくお願い致します」
担当「それではさっそく面接に入ります――」

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ところが、前置きから面接に入った後の流れは、企業によって次の2つのパターンに分かれます。

1つは、採用の担当者が自社の事業内容などを説明するパターンです。例えば、こんな感じ。

担当「弊社の事業内容や今回の募集の背景などは、公開されている範囲ですでにご存じと思いますが、その概要と藤田さんの経歴書のどの部分に注目しているかを、私からあらためて簡単に説明させていただきます」

もう1つは、担当者が候補者に自己紹介を求めるパターンです。例えば、こんな感じ。

担当「手短で結構ですので、藤田さんのこれまでのご経歴を、自己紹介という形で最初にご説明くださいますでしょうか?」

さて、この記事で私が言いたいことは、「前者の方が後者より企業として優良である傾向がある」ということです。

なぜか?

前者は「コミュニケーション能力の高い組織」と期待できるのに対して、後者は「コミュ障な組織」であることが多いと考えるからです。

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仕事で初めて会った人との関係は、名刺を交換しながら互いに自己紹介するところから始まります。

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これは、自ら情報を開示して「あなたを信頼します」「これからお互いに信頼を築きましょう」という姿勢を見せることと同じです。だからこそ、初対面であってもコミュニケーションできるのです。

もし、自分の情報を開示することなく「どちらさまですか?」と相手を警戒し、信頼の姿勢を見せなければ、正しくコミュニケーションできません。自分を信頼しない人を信頼できるはずがないからです(当たり前ですけど)。

だから、「相手を信頼する」を前提にできる企業(コミュニケーション能力の高い組織)は、初対面の候補者と正しくコミュニケーションするために、先に自分たちの情報を開示して信頼の姿勢を見せようとします。

候補者は応募先の企業のことを事前に調べていますので、この説明にはあまり意味はないかもしれません。上場企業であれば開示されている情報も多いので、なおさらそうです。しかし、「信頼の姿勢を見せる」こと自体には大きな意味があります

一方で、相手を信頼できない企業(コミュ障な組織)は、事前に名刺(経歴書)を受け取っているのに、会ってすぐに「どちらさまですか?」と自己紹介を求めます。知らない相手を無意識に警戒しているからかもしれません。

もちろん、自己紹介を求められたら常にダメとまでは言えません。候補者自身に経歴を語らせることで、その候補者の採否判断に関する情報を得られることがあるからです。

そうではなく、「最初から一方的」であれば心証を悪くした方がよいということです。

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では、コミュニケーション能力の高い企業とコミュ障な企業とは、具体的に何が違うのか?

私は、組織の価値観・考え方を明確にし、現場レベルでそれを実践できているかどうかが大きな違いを生んでいると考えています。

例えば、私が採用面接を受けた企業のなかで、最もコミュニケーション能力が高いと感じた企業は、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズでした。

同社は、誠実であること、敬意をもって接すること、信頼を得ることなどを価値観として徹底して共有し、コミュニケーションの場で実践しています。

その実践のとおり、面接は完璧でした。あまりに完璧すぎて、候補者として感銘を受けたくらいです。

そんなケンブリッジは、コンカー、サイボウズなどと並んで、「働きがいのある会社ランキング」で常に上位に入る会社です。ネットに出回る評判を見ても、圧倒的に評価が高い。

面接で「なぜこうまで評価が高いのか?」と尋ねたところ、各面接の担当者は口をそろえて次のように答えました。

・愚直に改善を繰り返してきたから
・そもそも価値観にフィットする人だけを採用しているから

口裏を合わせているふうでもなく、入社5年目の若手から社長まで全員が同じように回答するという事実は、それだけ価値観が盤石であることを裏付けていると思います。

「同じ価値観を共有した相手は信頼できる」という認識を基礎にしたコミュニケーションが確立されていれば、心理的な安全性は高まり、コミュニケーションコストは下がり、意思決定のスピードは上がり、経営効率は高まるでしょう。実際、同社は売上も社員数も伸び続けているそうです。

とはいえ、信頼は裏切られるおそれがあります。しかし、それでもなお、自分たちの価値観に照らして相手の人間性を見極め、「信頼する」という姿勢を貫けるからこそ「コミュニケーション能力が高い」と言えるのです。

逆に、私が採用面接を受けた企業のなかで、最もコミュ障だと感じた企業は・・・・・・まぁ、どことは言いませんが、それはそれは、大変残念でした。とにかく「知らない奴は泥棒と疑え」と異様に警戒しているのがビンビン伝わってくるのです。

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おそらく、コミュ障な組織は、見知らぬ候補者だけでなく、既存のメンバーすら信頼していないだろうと思います。

目を離せばすぐサボる、平気で嘘をつく、場合によっては会社の資産を外に持ち出すかもしれない・・・・・・などと警戒しているのでしょう。

組織に暗黙の掟を漂わせて「ウチ」と「ソト」を区別し、閉鎖的なムラ社会を構成して相互に監視させます。もちろん、リモートワークや副業など言語道断。とにかくルールやシステムで社員を縛りたがります。

だって、相手の人間性など判断できない、とにかく信頼できないのですから、何をしでかすかも分からない。そんなの安心できやしないじゃないか!

このように、コミュ障な組織が「ソト」の人と接するとき、採用担当者は「まずは自己紹介をお願いします」(お前は誰よ?「ウチ」に入る資格あんの?)と、上から目線で候補者を値踏みします

もちろん、採用担当者に悪意があるわけではありません。組織の風土が「信頼しない」なので、候補者に対しても自然と警戒してしまうのです。そして、それが「最初から一方的」という無意識の行動に繋がります

だから、私は「面接の最初に、自社を説明するか、候補者に自己紹介を求めるか」を1つの指標として、まずはコミュ障な会社をふるい落とすようにしています。

だって絶対嫌じゃないですか。コミュ障な会社なんて。
「信頼できないから足枷をつけて管理しよう」なんて、そんなバカな話はありません。奴隷かよ。

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さて、ここまで読んで顔色を変えた採用担当の方が、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。

そう、コミュ障な組織は採用がうまくいかないのです。それだけではなく、そのままでは経営効率が下がり、そのうち業績は振るわなくなるでしょう。

どうすれば「コミュニケーション能力の高い組織」になれるか?

もちろん、組織として大事にしたい価値観を決めて、それを徹底して実践することです。「価値観を共有した仲間は信頼できる」を前提として、風通しのよいコミュニケーションが成立するからです。

そして、それは「仲間として信頼できる人はどのような人物か」を組織として明確にすることと同じなのです。

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労働人口が減り続けるなか、優秀な人材のぶん取り合戦が激化しています。「信頼」が中心にある明るい職場の方が、優秀な人から選ばれやすいと思いませんか。

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・本稿は、「面白い文章を書けるようにするクラブ」のレビュアの皆さまからアドバイスをいただいて執筆しました。ありがとうございます。
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