マルちゃん3兄弟、涙の誓い
朝、目が覚めて台所に行くと、夕飯の残りの野菜炒めが、寂しそうにして置かれていました。
野菜炒め曰く「俺、いつ食べて貰えるのかな?このウチの奥様、朝はトースト、珈琲って決まってるからな。何か作ると言っても目玉焼きぐらいだし、毎日同じもの食べて飽きないのかな。まさか俺のこと、このまま放置して捨てちゃうなんて、そりゃ無いよな。」
暗い台所で、野菜炒めは心細かったことでしょう。私は野菜炒めを思いっきり抱きしめて食べてあげたかった。しかし、白いご飯を今から炊くのも面倒ですし、どうしましょう?と考えていると、そこに飛び出してきたのが、あのマルちゃん一家を支える「マルちゃん3兄弟」。ラーメンの王道を行く兄貴分「マルちゃん正麺・醤油味」。皆から慕われている姉さんは、ちょっと皮肉屋でしょっぱい事も言う“しおね~”こと「マルちゃん正麺・旨塩味」。そして今年10月にマルちゃん正麺10周年記念!ありが10(とう)キャンペーンで発売され弟分として一家に加わった「マルちゃん正麺・旨辛醤油」です。
兄貴分のマルちゃん正麺・醤油味が言います。「ここは俺の出番だな。王道の醤油味と野菜炒めの相性はバッチリだ!」
しおね~も負けていません。「何言ってるの。タンメンを知らないの。野菜と塩味の相性こそ、ベストカップル!私の出番ね。」
ところが、元気がないのはマルちゃん正麺・旨辛醤油です。「兄貴、姉さん、そうやって二人に出てこられちゃ俺の出番が無いじゃないですか。ただでさえ、ここの旦那さんは“やっぱりラーメンは醤油だな”とか言っていますし、タンメンだって大好きなんです。しおね~の色気じゃなくって塩気に勝てる男なんていやしません。」
兄貴分の醤油味が済まなそうに声をかけます。「悪かったぜ。でも、お前だって今流行りの旨辛じゃね~か。辛味を利かせたスープは誰をも唸らせる味だぜ。」
褒められたにもかかわらず旨辛醤油はもう泣き出しそう。「ダメなんです。ここの旦那は俺を初めて食べた時、豆板醤でメチャ辛く炒めたモヤシを山盛りにしてのせたんです。そして食べながら口から火を吹いて“こんな激辛、誰が食べるんだ”って叫んで完食して怒っちゃったんです。それ以来、旨辛を激辛と勘違いして食べてくれないんです。残った野菜炒めを、まさか豆板醤で炒め直さないでしょうし、そのまま俺にのせてくれれば、旨辛の醍醐味を味わって、俺だって世間並みの評価をいただけると思うんです。」
しおね~は、目に薄っすら涙を浮かべながら言いました。「そうだったのかい。ここの旦那って火を吹きながら完食し怒っちゃうアホだったんだね。そんな辛い目にあったと聞いちゃお前の出番しかないね。さあ、行っといで。旦那にガツンと旨辛を味あわせておやり。」
沸騰した鍋に向かう旨辛醤油。振り向いて二人に言いました。「兄貴、姉さん、行ってくるよ。俺の味わった屈辱を晴らして、マルちゃん一家の名誉を守ってくるぜ。」
しおね~の目から涙がこぼれます。「その誓い、受け取ったよ。お前の心意気はマルちゃん一家の誇りだよ。」
醤油味の兄貴も弟分の旨辛醤油に声をかけたいのですが、もう胸が詰まって言葉がなかなか出てきません。「旨辛~、、、、お前と兄弟盃を交わせて俺は幸せだったぜ!」
「あにき~、しおね~、おさらばです。」グツグツと沸騰した鍋に旨辛醤油は入っていきました。
はかなくも3分後には旦那さんの胃袋へと消えていったマルちゃん正麺・旨辛醤油。
旦那さんは激怒した過去をさらっと忘れ「真っ赤なスープに恐れをなしたけど、辛味がただ辛いだけじゃなく、ちゃんと旨味に昇華していて、なかなかのもんだね。」なんてわかったようなことを言ってます。
誓いは果たされました。マルちゃん一家の名誉は守られたのです。醤油の兄貴も、しおね~も、旨辛醤油の心意気、永遠に忘れることはないでしょう。