1年たった新型コロナとの戦い。この国はいつになったら先手を打てるのか。
武漢での第一報から1年が経過しました。
WHO(世界保健機関)が公式に発表した世界で最初の新型コロナウイルスの症例は2019年12月8日に発症したとされている。8日で1年。日本で最初に新型コロナ感染者が報告されたのは2020年1月16日。1例目の感染者の男性は1月6日に中国・武漢市から日本に帰国し、1月14日に診断していた。
予測されていた通り、冬になって新型コロナウイルス第3波が到来。
こうなるまで、何をしていたのでしょうか。
「勝負の3週間」がもたらしたもの
政府から「勝負の3週間」と言われ、早くも2週間が過ぎましたが、一向に治る気配を見せません。
全国の主要都市では呼びかけ直後の週末の人出は減ったものの、その1週間後には再び増加するところが目立った。通勤電車の客も高止まりが続き、営業短縮の要請に応じない飲食店も多い。警戒期間が長引く中、コロナ対策で緩みが出ている。
もうみんな対策疲れを起こしている中で、勝負の3週間と言われても、対応しきれないというのが本音ではないでしょうか。これまで以上の「対策」を取るのは個人のレベルでは限界があるということではないかと思います。
これまで10ヶ月にわたって国民が「三密を避ける」「マスクをする」「消毒をする」といった対策を取り続けている中で、政府が行ったのは、一人10万円の現金の配布と各種助成金、そして、さらに頑張れという叱咤だけと言えます。医療機関に対しても、感謝を口にしますが、支援が見えません。
新型コロナウイルスをめぐり、西村経済再生担当大臣は11月25日、今後3週間で感染増加を抑えられなければ「緊急事態宣言が視野に入ってくる」と述べた。政府の分科会からは感染急増地域の往来自粛や、酒類を提供する飲食店の営業時間短縮などが提言された。忘年会など繁忙期の飲食店には大きな痛手となっている。
政府にしても都道府県にしても、自粛を要請するばかりで、飲食店にお金を出すと言っても、1番の稼ぎどきに雀の涙では、ついてくる店も少ないのではないでしょうか。
この状況は予測できなかったのか
感染者数が最高値を示す中で、その数以上に問題なのは、やはり重症者と死亡者の増加だと思います。医療機関の疲弊が見える中で、患者の母数が増えれば重症者が増えるのは当然で、さらに重症者数が増えれば死者が増えるのも自明の理です。
さらに、保健所のトレーシングが追いつかなくなり感染源の特定ができず、病床確保よりも看護師確保が追いつかないという状況は、これまでのコロナ対策が崩壊しかけているという実情を表しているのではないでしょうか。
保健所への支援、医療機関への支援といった、政治でできることを怠ってきたつけと言われても仕方がありません。
推測を可能な限り控えて、現状のデータから予測できることを挙げてみましょう。非常に短期的なところのみになってしまうとは思いますが……。
この本の著者・峰宗太郎先生によるインタビュー記事です。
まず予測できるのは、陽性率の拡大だと言います。
短期予測として考えると、まずPCR検査の陽性率は上がる可能性があるでしょうね。これは流行が拡大しているからです。
その結果、「コンタクトトレーシング(濃厚接触者調査・クラスター対策)のキャパシティー(感染者、濃厚接触者の追跡調査の能力)が足りなくなってしまう」ことを危惧しています。
そして、これは現実化している問題です。そして、PCR検査は増えている中で、陽性率も上がっています。
「実は日本がしのいできた理由のひとつに、クラスターを早く見つけて感染源を(特定した)ということがあるんですけど、もう保健所が疲弊して、クラスターの感染源を見つけるという方法が取れなくなっている」
保健師の業務は、医師の指示の下で、病状確認、PCR検査の対象か否かの確認、PCR検査を必要とする人の検査日時・場所の確認と連絡、PCR検査の結果説明、陽性と判定された場合は感染経路を調べ、入院や施設・自宅療養の振り分け、濃厚接触者の確認と必要時はPCR検査の勧奨、自宅療養の場合1日2回病状確認の電話等と多忙を極めています。人員不足が生じ、健康局(本庁)や各区保健福祉センターなどからの応援に加え、アルバイト保健師・看護師を雇用していますが、本来一番大切な感染予防業務が十分できない中で、次々と発生する患者への対応に追われています。このような現状をもたらした一番の原因は、「保健所法」が1994年制定の「地域保健法」に変わり、全国の保健所が半減されたことにあります。1992年、全国に852カ所あった保健所は、2020年4月現在、469カ所に減らされました。ここ数年、保健所を減らしてきたつけが回っているわけです。
特に大阪はその傾向が強いのは、大阪市は、効率優先で病院を統合し、保健所を減らしてきたからです。さらに、市から府に移そうとして居ます。
大阪市では感染経路や濃厚接触者を追跡する「疫学調査」が追いついておらず、クラスター(感染者集団)対策が後手に回り感染拡大に歯止めがかからなくなる恐れがある。
保健所の現在の状況は、こうした保健所軽視の流れの中で起きたことで、実は、事前に予測できたことなのではないかと思います。
戦犯探しの前に危機を実感せよ
こうした状況に峰先生は続けます。
濃厚接触者が追えないということは、どの人が検査前確率が高い人であるかを判断する、大きな材料が失われてしまうわけですし、取りこぼしが出てくるということを意味しますよね。
そうなると緊急事態宣言の可能性にも言及しています。
クラスター追跡ができなくなれば、PCR検査も、隔離も、治療入院も、すぐにキャパの問題に直面するでしょう。結構危機的な状況になりつつあると思います。少なくとも決して油断していいような状況ではありません。
GOTOなどに戦犯探しをしている場合ではなく、もはや猶予がない状況だということです。
「GoToが原因だったか否か」は既に問題ではなく、検査・対処能力のキャパシティーを危惧すべきフェーズに入っている。感染者は指数関数的に増えるので、今、まだ余裕があるように見えても、あっという間に限界が来るんです。
この指数関数的に増えるという状況に対して、政治家の動きは線形ですらなく、一進一退で対策が進みません。まだ大丈夫と専門家の指摘を聞きそらしているうちに、あっという間に感染が拡大したのが、今回の第3波だと言えるでしょう。
では、第3次感染拡大では何に注意すべきでしょう。テレビでは新規感染者数の多さに絞った報道が多いようですが、本来見るべきはその中身です。闇雲に感染者数の増加の数字だけを恐れるのではなく、注目すべきデータを定め、その推移に注意を払うことが大事でしょう。
例えば大阪における状況は、独自の大阪モデルの導入という吉村知事のテレビ向けの発言に反して、数字が急増し、対策は奏功しているといえません。
ちなみに直近1週間の人口10万人当たり新規感染者増加数は12月4日の発表時点で過去最高の29.87を記録しています。11月7日に10を超えてからわずか1カ月、本当にあっという間の出来事でした。
その背景は、先ほど書いたように保健所の軽視とパフォーマンスばかりで実態が伴わない対策で現場が疲弊しているから結果だと考えます。大阪市役所の雨合羽は片付いたんでしょうか。
無策が混乱を加速する
それにしても、対策を打ち出すタイミングが遅いことと、タイミングが悪いことが、やる気を削いでいるのではないでしょうか。増えてから対策しても遅いということを、いつになったら学ぶのでしょう。
この過去の無策が、結局、次に有効な策を打ったとしても、それを台無しにするわけです。みんなが信用しなくなるからです。
峰先生は心配します。
政府への不信感が募ると、ワクチンの接種にも大きく影響するでしょう。ワクチン接種というのは、これは行政などに対する信頼感があってこそなんです。
ファイザーのワクチンはマイナス70度の冷凍庫が必要で、今アメリカでもイギリスでも冷凍庫の需要が急増しているそうですが、日本は手を打っているのでしょうか?
自治体や病院などからの問い合わせが多く、中には、一度に数百台注文した場合の納期や価格について尋ねるケースもあったということです。
国産ではなくデンマークからの輸入なので、国家間での取り合いになるかもしれません。
国内企業に国が増産を依頼している様子はないようです。
群馬県に工場がある「PHC」は、マイナス80度に対応できる冷凍庫の海外からの注文が増え、ことし1月から10月までの出荷台数は前の年の同じ時期と比べて1.5倍に増えました。
ファイザーには買取を約束しているのに、こうした国内企業への優先確保を行わないのは、辻褄が合わない気がします。
一時期お世話になった企業が困っても知らんふりです。
新型コロナウイルスの感染拡大で医療用ガウンが不足したことを受け、兵庫県の依頼で生産体制を整えた同県豊岡市のかばんメーカーが、生産継続の是非を巡ってジレンマに陥っている。経済活動を再開させた中国の安い輸入品に押され、豊岡製ガウンが不良在庫となる恐れが出ているためだ。
何故、国産の在庫を確保しようとしないのでしょう。
困ったときだけお願いばかりで、ひと段落したら見向きもしない。
そういう人いますよね。
そんな人の次のお願いを、どれだけ聞く気になるでしょう。
今の国の施策は、まさに、そんな感じです。
いつになったら先手を打てるのか
冬になればウイルスが蔓延することは十分予測できたはずですが、11月後半になって数字が上がってきてから慌てたわけです。
でも、それが12月といういちばんの稼ぎ時を直撃する自粛要請となった。
4月の緊急事態宣言では、ゴールデンウィークを潰して、人の移動を制限したことで一定の効果がありました。
しかし、その後、夏休み前、シルバーウィーク前、と連休で人の移動が増えることが予測できる時期に効果的な手が打てず、結果として、予測できたはずの冬の流行に備える気配もなかった。
指数関数的に増加する感染者を前に、牛歩のような対策では間に合いません。
3週間後をどういう時期にするかをイメージして手を打っていく姿勢を見たいものです。このままではお正月に実家に帰れない人が大勢出るか、もしくは、みんな見切り発車でこっそり実家に帰って蔓延するか。
そのとき、感染ルートは追えるのでしょうか?
いつまで保健所と医療機関を疲弊させるのでしょうか。
終わりのない戦いになるばかりで、きちんと兵站を用意して備えることができないのは、豊臣秀吉の朝鮮出兵以来、第二次世界大戦の南方戦線撤退まで事欠かないのが日本の歴史ですが、今回もまた政治家は学ばないまま進むのでしょうか。
日本国内での最初の感染例から一年になる1月16日にどういう状況を迎えるかを決めて、そのために何をするか、今から準備しておくのが先手を打つということではないかと思います。
オリンピック開催に向けて、最低でもそれが条件ではないでしょうか。
サポートの意味や意図がまだわかってない感じがありますが、サポートしていただくと、きっと、また次を頑張るだろうと思います。