偽物って何が悪いの?「若者から見た模倣品について」
どうも、こんにちは。haruと申します。
仕事で知的財産や、模倣品対策なんかにちょっと携わったりしています。
このノートは、思考の整理のために書いてみました。
物書きには慣れておりませんので、駄文はご容赦いただけますと幸いです。
最初に述べたいのは、この意見は一消費者の視点であるということです。
私の身の回りにいる、ごく普通に暮らしている大学生や社会人、中高生と話して感じたことを、ちょっと書き記してみたくなりました。
と、いうことで、突っ込みどころ満載ですし素人考えが多分に含まれておりますので、仕事とは関係ない、一個人の意見です。
それでは、早速行ってみましょう。
「BALENCIAGA」と「BALENAINYAGA」
私が模倣品を身近に感じたのは、大学生になってからでした。
それまでも、「中国ではブランド物の財布がたたき売りされている」とか、「ECサイトで半額以下で売っていた」なんて話は聞いたことがありましたが、中学高校と男子校で体育会として過ごした私には無縁の世界でした。
その後大学に進学し、周りがおしゃれをし始めるのに合わせて服や靴なんかに興味が出始めた頃、大学の友人が「見て見て!」とBALENCIAGAのキャップを持ってきたのです。
ちょっと調べればわかることですが、著名ブランドのキャップといえば定価ではおよそ4~5万円。なのにその子は2000円で買ったと言っていたのです。
いやいや、そんな馬鹿な、と言っていると友人は「よく見てみ」とにやにやしながらロゴを指さしました。
そこに書かれていたのは「BALENCIAGA」ではなく「BALENAINYAGA」という文字でした。そう、よく似せたコピー品だったのです。
今考えると露骨にロゴを寄せていて相当悪質な物品ですが、当時の私たちはなんだよ偽物かよ~なんて大爆笑でした。
そもそも、模倣品(コピー品)はいけないこと
ここでいう模倣品とは、主に商標権や意匠権、著作権を侵害している物品を指します。最近では、特許権を侵害した模倣品も増えてきているようですが、ざっくりいうと「本物をコピーしたもの」です。
多くの場合、模倣品は中国などの国外で安価に、大量に生産されます。
そして、時には本物と誤認させながら税関をすり抜けて入ってくるのです。
知的財産権の侵害は、法律で禁止されている、立派な犯罪です。例えば、著作権侵害は刑法で裁かれる場合もあり、最大で1,000万円以下の罰金、または10年以下の懲役、もしくは併科(両方が課される)の恐れがあります。
では何故知的財産権は存在するのか。知的財産権は、主に「産業や文化の発展に寄与する」為に作られた法律です。
詳しくはググって下さい。ここで言いたいのは、模倣品を許すとどうなるか、ということです。
端的に述べると「市場経済の衰退」を招きかねません。
まず第一に、模倣品というのは安価で製造されていることが多いです。その為、特にこだわりがない人は模倣品を買うでしょう。そうすると、正規品が売れなくなります。
本来なら適正に市場に回る金が別の市場に流れるということです。
また、新しい発明やブランドを作っていた人達も、本来得られていたはずの評価がなくなるとすれば、やる気がなくなるでしょう。
その循環で、経済が悪化、あるいは衰退していくのです。
色々説明は端折ったり論理を飛躍させましたが、大体こんな感じです。つまり、模倣品は許してはいけない、ということを大前提に頭に置いていてほしいと思います。
でも、関係なくない?なんでって、『安い』から
それでも、若者にとって、正規の権利者が誰かなんて、あんまり関係ないです。
大事なのは、「いかに安くブランド品が買えるか」ですから。
一部の人間は、情緒的な価値、即ち「ブランドの本質」に重きを置きますが、多くの人間にとってブランドとは「ネームバリュー」でしかありません。
そのネームバリューが安く手に入るなら、粗悪品だろうが何だろうが特段問題はないでしょう。
そして、貧困世代の若者にとって「安く手に入れた」はある種「勲章」にもなりえます。特売で走り回って格安で買ったことを自慢している主婦のようなものです。最も、そこには偽物というマイナスの付加価値がついているのですが。
知的財産権侵害への啓蒙は若者にあまり響かない
そしてそもそも、市場経済の衰退、なんてことは想像もつきませんし、考えたこともありません。何故なら、誰も教えてくれないからです。
だからこそ、著作権の侵害だ、という言葉は若者にあまり響きません。
もしそうだと言われたとして、「悪いのは作った人で、買った俺らは悪くない」と本気で思っています。
2021年1月1日より施行された改正著作権法では、違法と知りながらダウンロードする行為も規制されるようになりました。
何故こんな法律が施行されたのか?人々の根本には、「自分に損がない」から問題ないと思っているからです。
映画の予告を見ていても、著作権侵害は犯罪だというCMばかり流れますが、「じゃあなぜ犯罪なのか?」という点を伝えることは少ないですよね。
個人的には、そもそも啓蒙の仕方が間違っているように思えて仕方がないのです。
じゃあ、どうする?
「ブランドの本質とは情緒的な価値だ」と前述させていただきました。
これは、仕事でブランドに携わっている中で感じ、学んだことです。
製品やロゴは、ただ作られただけでは「文字や記号」でしかありません。
そこに作り手の想いや価値観が加えられることで、ブランドとして醸成されるのだと思います。
それなら、ブランドにはブランドなりの戦い方、啓蒙の仕方があるのではないでしょうか。
おわりに
今回は、自分が仕事に携わっている中で疑問に思ったことをまとめてみました。
買えない仕組みを作る、ということも大切ですが、そもそも買いたいと思わせないことのほうが重要ではないでしょうか。
そして、その意識は早いうちから身に着けさせるべきだと思っています。
我々はZ世代なんて呼ばれていますが、本当に生まれた時から世界中が繋がっている世代です。
昔は騙せていたお為ごかしも、今の子どもはすぐ調べて知ってしまいますし、お金を稼ぐことも、使うこともできます。
そして、得られる上場が飛躍的に増えた現代では、その倫理観も大人のあずかり知らないところで育っていきます。
大人になってから得た常識では、子どもの頃に身についた倫理観を上書きすることは難しい。理論ではなく情緒で、訴えかけることも重要です。
それこそが、情緒的価値に基づいている、『ブランド』としてあるべき姿ではないかと、私は考えています。
文頭にも書かせていただきましたが、以上は私の個人的な見解であり、所属する組織、あるいは団体と一切関与しないことを明記させていただきます。
また気が向いたら、文字を書くことがあるかもしれません。それでは。
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