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漫才論| ⁸⁹漫才添削事例②

LINEオープンチャット『漫才なんでも相談室🌱』にて,投稿していただいたネタの感想と軽めの添削を行なっています。「漫才添削ってどういうかんじなの?」と思っている方のために,漫才添削事例をご紹介いたします(オープチャットに入るとその他の添削事例もご覧いただけます)【「漫才なんでも相談室」は終了しました】

今回ご紹介するのは,甚平者さんの『YouTube広告』というネタです


『YouTube広告』甚平者

阿笠「はいどうもオレンジタウンです」
財前「よろしくお願いします」
阿笠「頑張って行きましょう」
財前「最近思うんですけども」
阿笠「何ですか」
財前「Youtubeに広告を付けようって言い出した奴を見つけ出したいんだよね」
阿笠「またすごい事言い出したな」
財前「だって良い所で広告を入れられる奴の気持ちを考えた事があるのかって」
阿笠「それはしょうがないよ」
財前「何で」
阿笠「広告で収入を得ている代わりに無料で使えるんだから」
財前「それだったら有料でも良いから広告を無くして欲しいよね」
阿笠「すでにあるんだよ・・・」
財前「そうだったの!?」
阿笠「1200円さえ払えば、広告を無くせるプランがあるんだよ」
財前「いやでもなあ」
阿笠「それぐらいのお金ケチるなよ」
財前「そうじゃなくて、そのスパンだと忘れそうかなって」
阿笠「スパン?」
財前「年毎じゃ、契約したのを忘れちゃいそうで」
阿笠「月々で1200円じゃ!」
財前「えっ!?」
阿笠「年毎に1200円って経営成り立つか!、それぐらいだったら10回に1回の割合で流さないと破綻するわ!」
財前「だとしたら俺は無理だな」
阿笠「じゃあ我慢しろよ、広告があってこそ成り立つんだから」
財前「もういっその事、付けようって言い出した奴を何が何でも見つけ出すわ」
阿笠「財力より労力でぶつかっていくのね、でもどうするんだよ」
財前「そんなのネットで調べればすぐに出てくるだろ」
阿笠「どうやって調べるんだよ」
財前「タップルとかウィズとか、何ならomiaiとかで」
阿笠「何でマッチングアプリで探そうとするんだ!」
財前「ダメかな?」
阿笠「見つけ出したとしても気持ちが悪いよ何だか」
財前「ツイッターとかは?」
阿笠「マッチングアプリでさえなければ良いよ、好きにしな」
財前「どう書こうかな」
阿笠「情報提供を求める感じで書いた方が良いんじゃないの」
財前「Youtubeの有料プランを親が払ってくれなくて、それで喧嘩してしまい家出してしまいました」
阿笠「は?」
財前「せめてYoutubeの本社に電話をして、広告を無くしてもらうようにお願いしたいのですがそれまでは家に帰れません」
阿笠「ねえ、何書いてるの」
財前「漫画喫茶で夜を明かそうにもお金がありません。どなたか今晩泊めていただけないでしょうか、当方中3女子」
阿笠「お前ネットの怖さを知らないなさては!、最後のフレーズに食いつくお兄さんは数知れないんだぞ!」
財前:スマホを持って眺める仕草をしている
阿笠「何してんだよ」
財前「市川で良ければどうですか」
阿笠「そんな相手側のコメントとか書かなくて良いから!」
財前「船橋でも良いなら、ご飯食べてなければ一緒にでも」
阿笠「いやもうね、皆さん実際問題こんな風に集まってくるんですよ」
財前「錦糸町まで来れたら1週間は泊めてあげられるよ」
阿笠「未成年のお子さんがいる親御さんは本当に気を付けてあげてください。あなたの管理が悲しい事件を未然に防ぐんです」
財前「亀戸に住んでいる20代の大学生です。良かったら連絡下さい」
阿笠「うん」
財前「西船橋に住んで・・・」
阿笠「総武線がヤバい!、良く使う沿線だけにショックが大きい!」
財前「思いもよらずに知りたくない事を知ってしまう事ってあるよね」
阿笠「だとしても総武沿線沿いに住んでる人皆があんなんだと思うなよ!」
財前「でもそれぐらい許せないって事を分かって欲しい」
阿笠「じゃあ実際にその人に会えたとして何て言うの?」
財前「僕の気持ちを分かって欲しい、なんなら想像してみて欲しいと」
阿笠「うん」
財前「動画の先を待ちわびている時に何の関係も無い広告が突然出て来たらあなたはどんな気持ちですかと」
阿笠「うーん・・・それだと説得力に欠ける気がするんだよなあ」
財前「極稀にだけども4分以上の広告を挟み込んでくるのはやめてほしいと」
阿笠「それは俺も分かる!」
財前「30秒過ぎても終わる気配が無くて、時間を見たら残り3分30秒ってなってて」
阿笠「1分30秒しかない動画についてる時なんかは、本編より長いってどういう事だよってね」
財前「サムネイルでは画面一杯になってるのに、再生してみたら小さい画面でしかも右寄りか左寄りでその横に全然関係ないアニメのアイコン」
阿笠「分かるわあ、背景が銀河みたいになってたりするんだよねそれで」
財前「そう言う動画に限って広告がたくさん付いてて」
阿笠「広告の位置を示すあの黄色い棒が並びすぎてて、横断歩道に見える時があるんだよね」
財前「後はね」
阿笠「もう止さないか!、何で延々と2人でYoutubeあるある並べてんだよ。結局何が言いたいんだよ」
財前「Youtubeがあって良かった」
阿笠「結局それかい、もういいよ」

漫才の感想と軽めの添削

「マッチングアプリで探す」っておもしろいですね!しかもそこから,SNSでの問題とYouTubeの広告に関して多くの人が思っていることを結びつけて展開しているので,全体の流れもおもしろいです!

余計な言葉をどんどん省いたり,言い方や順番を変えてみたりして,スッキリとした掛け合いを意識していくと,さらに良くなると思います。例えば
────────────
財前「最近思うんですけども」
阿笠「何ですか」
財前「YouTubeに広告を付けようって言い出した奴を見つけ出したいんだよね」
阿笠「見つけ出す?なんのために?」
財前「YouTubeって良い所で広告入るでしょ?」
阿笠「CMというのはそういうもんですけどね」
財前「『良い所でCM入れられる人の気持ち考えろよ!』ってそいつに言ってやろうと思って」
阿笠「広告収入があるから無料で使えるんですよあれは」
財前「そんなのいくらでも払いますよ。広告なくしてくれるなら」
阿笠「あるだろそういうの」
財前「あるの!?」
阿笠「1200円払えば広告なくせるプラン」
財前「1200円ってちょっと高くない?」
阿笠「『いくらでも払いますよ』って言っただろ」
財前「1年で1200円でしょ?」
阿笠「月々じゃ!」
財前「月々!?」
────────────
こんなかんじで。これが「正解」というわけではありませんが(おそらく漫才に「正解」はないと思います),こういう書き方を覚えるのもいいような気がします

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作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた


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藤澤俊輔 (漫才作家/小噺作家)
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】