[読む古典漫才] いかのきもち（当て書き：おせつときょうた）

#オチの直前まで無料

#オチを予想してお楽しみください （5文字）

しゃべくり漫才のうまさは｢相槌｣で決まる
●漫才における｢相槌｣はそのときの雰囲気で自然に入れるものなので通常漫才台本には書きませんが，本格的な掛け合いのしゃべくり漫才をイメージできるようあえて細かい｢相槌｣を書き込んでいます。それが｢読む漫才｣です。

おせつ：私最近ね，イカを食べすぎてるんですけどね
きょうた：何をしてるんですかあなたは
お：｢私そろそろイカになるんじゃないだろうか？｣と心配なるくらい食べてしまいまして
き：イカ食べすぎておかしなこと言うてますけどね
お：毎晩食べてますからね
き：毎晩食べてんの!?
お：毎晩食べてる人はね，｢朝起きてイカになってったらどうしよう｣って心配になってくるもんなんですよ
き：本気で心配してます？
お：人生何があるか分からないですからね
き：イカにはならんて
お：あなた災害の備えとかしないタイプでしょ？
き：災害？
お：｢もしかしたらこんなことが起こるかもしれない｣と想像力を働かせてね，ちゃんと備えをしておかないとダメなんですよ
き：それはそうですけどね，イカの話でしょ？
お：だから，｢朝起きたらイカになっているかもしれない｣と想像してね，｢備えをしておいたほうがいいですよ｣って言ってるんですよ
き：大丈夫やそれは。朝起きて｢うわっ！イカになってもうてる！｣ってことはないからね
お：そういう考えの甘さがね，大流行を招くんですよ
き：コロナに関しては僕も反省してますから
お：｢備えあれば憂いなし｣って言いますからね
き：｢備え｣言われてもね，｢自分がイカになったときの備え｣なんて何をすればいいんですか
お：枕元に醤油とワサビを置いて寝るとかね
き：なんで自ら食べられる用意してんねん
お：生姜のほうがいいですか？
き：どっちでもいいんですよそれは
お：イカはどっちがいいんですかね
き：何が？
お：イカの立場やったらね，ワサビと生姜？｢どっちで食べてほしい｣とかあるんですかねぇ
き：それこそどっちでもええわ
お：イカとしては，｢ワサビでも生姜でもどちらでもいい｣と
き：なんで僕の答え，｢イカの意見｣として採用されてんねん
お：あなたイカ代表でしょ？
き：イカ代表ちゃうわ。人間代表や！
お：人間代表でもないやろ
き：イカ代表でもないのよ
お：イカの中でも下位のほうに位置していると
き：｢イカの中でも下位｣ってなんやねん。｢人間界でも下位。イカ界でも下位｣みたいに言うて
お：イカ界では下位ではなく上位のイカなんですか？
き：え？
お：イカ界では下位ではなく上位のイカなんですか？
き：早口言葉みたいに言うてるけど。イカじゃないんですよ僕は
お：イカ人間でしたっけ？
き：誰がイカ人間やほんま〜｢イカ帽子かぶってイカになったろかい！｣ってこのやろー
お：すべりイカですか？
き：｢スルメイカ｣みたいに言うな。イカ芸人ですからね僕は
お：イカ芸人!?イカが好きな芸人ってこと？
き：僕は，イカ刺しから煮付けからアタリメにいたるまでね
お：｢アタリメ｣ってスルメのことですけどね
き：ありとあらゆるイカ料理が大好きですからね
お：イカ好きだったらね，｢朝起きてイカになってったらどうしよう｣って心配になるもんですけどねぇ
き：そんな心配してんのあなただけなんですよ
お：いやだってね，朝起きてイカになってたらですよ，当然布団の中にいるわけじゃないですか
き：夜は人間として眠りについてますからね
お：朝起きたら，｢掛け布団が重くて外に出られない｣という大変な事態になってるんですよ
き：本気で心配してるじゃないですか
お：あたりまえでしょ。｢防災｣というものは｢本気で想像して備える｣。これが基本ですからね
き：｢朝イカになる｣も災害にカウントしてんの!?
お：もちろんイカになったらなったでね，心配は尽きないですよ
き：どういうこと？
お：｢どんな風に料理してもらえるのかな〜｣とかね
き：イカになった後の心配もしてんの？
お：老後の心配くらいしますよねぇ
き：なんであなたの老後｢イカ｣なんですか
お：みんな｢イカになりたい｣という夢があるからこそ，毎日つらくても頑張れるんじゃないですか
き：誰もそんな夢持ってないわ
お：あなたは夢叶えてるからね
き：｢イカになりたい｣という夢叶えてないですよ僕
お：夢叶っても，イカにはイカの悩みがあるんでしょ？
き：だから僕イカじゃないのよ
お：イカなんて特にどう料理されるかでかなり変わりますからね
き：できれば活きのいいうちに刺身にしてもらいたいですけどね
お：イカとしてはでしょ？
き：食べる側の気持ちを言ってるんですよ
お：僕なんかは寿司にしてほしいですけどね
き：寿司は嫌やわ〜
お：なんで？
き：握られるでしょ？
お：握られる？
き：おじさんに
お：｢おじさん｣って言うな。寿司職人ね
き：しかもおじさんがね，微妙にソフトなかんじで握ってくるんですよ
お：強く握ったらダメですからね
き：申し訳ないですけど，ちょっと気持ち悪いんですよ。ソフトに握られると
お：イカとしては？
き：イカとして私はそう感じております
お：やっぱりあなたイカなんですね？
き：イカを代表して言わせてもらいますけど
お：イカ代表やったの!?
き：おじさんにソフトなかんじで握られるくらいなら，いっそのこと煮るなり焼くなりしてもらいたいんですよ
お：イカ焼きかイカの煮つけにしてもらいたいと
き：そりゃあ一番なりたいのは刺身ですよ
お：花形ですからね。刺身は
き：僕だってね，ずっとイカ刺し目指してたんですよ
お：若い頃は刺身の可能性ありましたからね。あなたにも
き：もういい歳になってしまいまして
お：刺身になる夢あきらめかけてんの？
き：鮮度が命ですから。刺身は
お：確かに鮮度の落ちたイカは，刺身にされると逆にかわいそうですからね
き：目標を変更しまして
お：イカとしての目標を
ね，今は煮付けになることを目指しております
お：イカの煮付けは渋いね〜
き：今後は渋い芸風でやっていきますから
お：イカ芸人として
き：｢イカ芸人｣って売れそうでしょ？
お：｢渋い｣言うてもあれでしょ？
き：なんですか？
お：干されるのだけは嫌なんでしょ？
き：◯◯◯◯⚪︎だ

#オチを予想してお楽しみください