漫才論| ²⁷「漫才は呼吸」ってどういう意味なの❓
「漫才は呼吸だ」とよく言われますが,この場合の「呼吸」とはなんのことを言っているのでしょうか?誰がこの言葉を最初に言ったのか,どういう意味で「呼吸」と言ったのかまでは分かりませんので,私が思う「呼吸」について書きます(ご存じの方がいらっしゃいましたら教えてください)
阿吽の呼吸?
漫才に関係がありそうな「呼吸」という表現でまず思い浮かぶのは,「阿吽の呼吸」や「息が合う」といった言葉かもしれません。どちらも似たような意味の言葉で,「二人以上で何かをするときの気持ちや行動が一致している,またはぴったり合う様子」のことです
この言葉はそのまま漫才をしている二人に使えます。実際,「阿吽の呼吸で漫才をしている」とか,「二人の息がぴったり合っている」と言うこともあります。ただ,「漫才は呼吸」という言葉の意味としては少し浅いような気がします
息を合わせる?
漫才の最大の特徴,それは掛け合いです。「一人が話し終わるか終わらないかのタイミングでもう一人が話し始め,そのやりとりをずっと繰り返す」という,普段の会話では絶対にありえないテンポで掛け合いをするのが漫才です。このやりとりのことを,「呼吸」と表現しているような気がします
このような掛け合いができるのは台本があるからですが,台本通りにやればそれだけで,「うまい掛け合いができる」というわけではありません。台本通り完璧にやるだけだと,機械的な漫才になってしまうからです
うまい漫才師はどうやって演じているのかというと,台本の内容をその場の雰囲気に合わせてアレンジしながらしゃべっています。内容自体をアレンジすることも多々ありますが,内容はほぼ台本通りという場合でも,その場の雰囲気に合わせたスピードやテンポや間で話すので,相方と「息を合わせる」必要があります。これのことを「呼吸」と呼んでいるのではないでしょうか
相方との駆け引き
加えて,「一人が話し終わるか終わらないかのタイミングでもう一人が話し始めそのやりとりをずっと繰り返す」といってもそれは,「一人が5秒しゃべったらもう一人が5秒しゃべる」というような単純なものではありません。2,3秒ずつ交互にしゃべることもあれば,片方が長めにしゃべることもあったり,どちらもしゃべらない「間」を作ることもあります
相手が次にどんなセリフを言うのかは基本分かっているのでこれができるわけですが,それでも,セリフの言い方はそれぞれ毎回違いますし,アドリブを入れることもあります。ですから,相手の声を感じ取りながらそれに合わせて自分のセリフを言い,相手もそれを感じ取りながらそれに合わせてセリフを言い,このやりとりを最後まで繰り返します
この駆け引きが「呼吸」であり,「息を合わせる」ということなのではないかと思います
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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】