漫才論| ²⁴漫才は練習しすぎないほうがいいの❓
漫才の練習量については,「死ぬほど練習したほうがいい」という意見と,「練習しすぎないほうがいい」という意見で,真っ二つに割れています。今回は,「練習しすぎないほうがいい」という意見を取り上げます
ナイツの場合
ナイツの塙さんはよく「練習しないほうがウケる」と言っていますが,これは普通の漫才師にはあまりあてはまらないと思います
ナイツが得意とするのは,「塙さんがひとりでしゃべりながらひたすらボケ,土屋さんはそれについていくかのようにひたすらツッコんでいく」というスタイルです。この漫才スタイルであれば,一回目(一回も練習していない状態)が一番おもしろいという場合さえあります。ボケるほうも新ネタですから新鮮な気持ちでしゃべれますし,ツッコむほうは初めて聞くわけですから,本気で真剣に聞き,リアルなリアクションができます。その結果,フリートークのようなライブ感のある活き活きとした漫才になります。練習すればするほど慣れてきたり,飽きてきたりして,このライブ感が出せなくなってしまうので,「練習しないほうがウケる」という状態になります
ですから,普通の掛け合いではなく,ナイツに近いスタイルの漫才をするコンビであれば,「練習しないほうがウケる」ということも十分あり得ます。「ナイツは正統派」とよく言われますが,「ほとんど掛け合いをしない」というかなり特殊なスタイルの漫才だと思います
中川家の場合
中川家が「練習しすぎないほうがいい」と言っているのは,中川家の漫才が「アドリブ漫才」に近いスタイルだからだと思います。アンタッチャブルもこのスタイルに近く,「箇条書きできる程度の筋だけ決め,あとはアドリブでやる」というスタイルです。これができるコンビであれば,そもそもそこまで練習する必要がありません
ただしこれは,中川家やアンタッチャブルのような天才的な漫才師だからこそできることであって,普通の漫才師がこれをやると,ほとんどの場合大変なことになると思います
通常はかなりの練習量が必要
このように,ナイツの塙さんと中川家のお二人は同じようなことを言っているように見えて,実は全然違う意味で「練習しすぎないほうがいい」と言っているのだと思います
ナイツのような「掛け合いではないスタイル」か,中川家やアンタッチャブルのような「天才的な漫才師」でないかぎり,通常はかなりの量の練習が必要です。練習量が見え見えの漫才を嫌う方もいますが,あれはそもそも「練習量」の問題ではなく,「演じ方のうまさ」の問題です
特殊なスタイルの漫才師や天才的な漫才師の意見ももちろん参考になりますが,何も考えず鵜呑みにすると,痛い目を見ることがあります
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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】