[漫才] 薄々(当て書き:ナイツ)
#オチを予想してお楽しみください (17文字)
塙宣之:僕,漫才協会の副会長をやらせていただいているんですけどね…
土屋伸之:そうなんですよ。うちの塙さん漫才協会の副会長やってるんですよ
塙:そろそろ狙っていこうかと思ってるんですよ
土:何をですか?
塙:会長の座に決まってるじゃないですか
土:そういうことはあまり言わない方がいいですよ。青空球児・好児の球児師匠が会長ですからね
塙:狙ってるのは球児師匠の座じゃないですよ
土:もしかして?名誉会長の座狙ってんの?内海桂子師匠ですよ名誉会長
塙:そんなくだらない座は狙ってないですよ
土:くだらないって言うな。僕らの師匠なんだから内海桂子師匠は
塙:もっと上の座ですよ
土:もっと上?そんなのないでしょ
塙:上方漫才協会の会長の座に決まってるじゃないですか
土:なんで上方漫才協会の会長が東京の漫才協会の名誉会長の上なんだよ。歴史ある漫才協会の副会長がそんなこと言っちゃだめだろ
塙:やっぱり上方漫才協会に入りたいじゃないですか
土:副会長が何目指してんだよ。たぶん僕ら上方漫才協会の会員にもなれないと思いますよ
塙:会員にすらなれないの?こんなにがんばって漫才してるのに?芸を認めてもらえてないってことですか?
土:芸の問題じゃなくて場所の問題だからね。上方は大阪だから
塙:それで思い出しましたけど,僕,実は最近前髪が薄くなってきてるんですよ
土:上方(髪形)違いだろ。なんだよいきなり
塙:カミングアウトした方がいいかなと思って。髪だけに
土:ダジャレかよ。それわざわざ言わなくてもいいんじゃないですか?
塙:隠し通した方がいいんですか?いろんな手を使って
土:いろんな手って…。発毛とか,植毛とか,いろいろありますからね。まぁでも正直,塙さんの頭のことはみんな薄々気づいてはいましたけどね
塙:薄々?…その薄々っていうのは…僕の髪が「薄い」ってことを言ってるんですか?
土:「薄々」って別に髪の薄さのことじゃないですからね。気にしすぎですよ
塙:毛になるじゃないですか
土:「気になる」でしょ。毛がほしいあまりに「毛になる」って言っちゃてるから。気にしてもしょうがないでしょ。どうせなくなるんだから
塙:「どうせなくなる」って…なんてことを言うんですか。こっちは残された少ない髪の毛で毎日一生懸命やりくりしてるんですから
土:やりくりって…。今さらやりくりしてもねぇ…。若い時にちゃんと貯金しとかないからこんなことになるんですよ
塙:貯金!? 髪の毛って貯金できるんですか?
土:無駄遣いしないってことですよ
塙:毛の無駄遣いなんてしてないですよ
土:若い頃,髪の毛脱色したりとかしてませんでした?
塙:してないですよ。小1の夏休みにパンチパーマあてたくらいで…
土:1学期に何かあったんですかね。小1の夏休みにパンチパーマって…
塙:小1の1学期ってつらいじゃないですか
土:小1の1学期のつらさを和らげるためにパンチパーマあてたの?
塙:若気の至りですよ。毛だけに
土:今日毛にまつわるダジャレ多くないですか?「上方」とか,「カミングアウト」とか,「毛になる」とか,「若気の至り」とか。「薄々」っていう言葉にも反応してたし…
塙:今もう毛のことで頭がいっぱいだから反応しちゃうんですよ
土:毛で頭がいっぱいなんじゃなくて,毛のことで頭がいっぱいなのね
塙:だいたいねぇ,髪の毛のシステムって理不尽じゃないですか?
土:髪の毛のシステム?なんですかそれ
塙:若いときは髪の毛がなくなるんて知らないですからね,わざわざお金を支払って,髪の毛を業者に引き取ってもらってたんですよ
土:普通に床屋に行ってただけでしょ
塙:はい
土:「はい」じゃないよ。なんで大げさに「業者に引き取ってもらってた」とか言うんですか
塙:だって二ヶ月に一回床屋に行って,一回3,500円だとしたら年間約2万円ですよ。30年間床屋に通ったら60万円じゃないですか。これまで60万も支払って髪の毛を手放して,で,気づいたら今度は髪の毛が足りなくなってるって,どういうことなんですかこのシステム
土:別にシステムとかじゃないからね。ただハゲてきちゃったってだけでね
塙:完全に床屋さんに金を騙し取られた格好になってるじゃないですか
土:床屋さんは普通に髪切ってただけですけどね
塙:最初は普通に切ってただけだからいいんですよ。でも床屋さんにはおそらく「あっ…ハゲてきたな…」って気づいた瞬間があるはずなんですよ。気づいたにもかかわらず,その事実を隠したままその後も髪を切り続けたんですよ。きっと金に目がくらんだんでしょうね
土:犯罪者みたいに言うな
塙:詐欺罪にあたるんじゃないですか?切っては金を取り,切っては金を取りを繰り返してるわけですからね
土:それが「散髪」というシステムですから。だいたい「ハゲてきた」って気づいたとしてもどうせ髪は切るでしょ
塙:「一声かけてくれたっていいじゃないですか」って言ってるんですよ
土:床屋さんが?なんて?
塙:「お客さん近々おハゲになられるようですが,今後もこのまま髪を切りつづけていいんですか?」って
土:言えないでしょそんなこと。それにそう聞かれたとしてもどうせ切るでしょ髪
塙:切らないよ。髪の毛がなくなるって分かってたら,僕は髪を切るのをやめましたよその時点で
土:のばしつづけるってこと?
塙:あたりまえじゃないですか。永遠にのばしつづけますよ
土:「永遠」って。ずっと髪切らなかったら最終的に落ち武者みたいになるだけだからね。真ん中の髪は抜けてしょぼしょぼで周りはロンゲみたいな
塙:落ち武者のみなさんは別にハゲてるんじゃないですけどね。わざと真ん中を剃ってるんですよあれは。侍なんですから
土:だったらいっそのこと侍になったらいいんじゃないですか?
塙:侍になる?どういういことですか
土:侍になって,髪の毛真ん中だけ剃るんですよ。そうしたらハゲかかってるってばれないじゃないですか。「あ〜あの人侍なんだなぁ」って思われるだけでね
塙:「あ〜あの人侍なんだなぁ」とはならないでしょ。「なんだあいつ!」ってなるでしょ
土:それは塙さんの佇まい次第でしょ
塙:佇まい?
土:塙さんが,いかにも「侍!」っていう佇まいで立っていたら,みんな「あ〜あの人侍なんだなぁ」って思いますから
塙:今何時代だと思ってんだよ。「あ〜あの人侍なんだなぁ」って納得する人いないでしょ。だいたいねぇ,僕は別に侍として認めてもらいたいわけじゃないんですよ。ただ取り戻したいだけなんですよ。失われた前髪を
土:往生際が悪いんですよ。落ち武者とはいえ侍なんだから,潔く前髪はあきらめたほうがいいですよ
塙:僕は落ち武者じゃないですからね。ちょっと前髪が落ちやすいだけですよ
土:一度失った前髪はもう戻って来ませんから。あきらめてください
塙:そんな簡単に「あきらめろ」とか言うなよ。さっき育毛とか植毛とかいろいろあるって言ってたでしょ
土:方法はいろいろありますけどね,結構お金かかるんですよ
塙:お金ならちゃんと貯金してますから。植毛のための口座作って
土:専用の口座あるの?いくら貯まったんですか?
塙:1万円
土:やる気あるの?1万円って…
塙:やる毛はありますよ
土:やる気ね。やる毛はないでしょ。1万円で何本くらい植毛できるか知ってます?
塙:1000本とか?
土:25本
塙:少なっ!25本植えても無駄だろ
土:だからお金かかるって言ってるじゃないですか
塙:出してもらっていいですか?
土:僕が?塙さんの植毛代を?
塙:僕がこれ以上ハゲたら困るでしょ?
土:僕が?別に困らないですよ
塙:もし僕がこれ以上ハゲたらこのネタできなくなりますよ。このネタ「薄々」っていうネタですからね
土:「ますます」とかにすればいいんじゃないですか?
塙:何うまいこと言ってるんですか。ハゲをバカにしてるでしょ
土:バカにはしてないですよ。もっとハゲても別にこのネタできますから
塙:じゃあ,このネタをやった時のギャラは僕が全部もらって,そのお金で植毛するっていうのはどうですか?このネタをやればやるほど,どんどん髪が増えていくっていうシステムにしましょうよ
土:どんどん髪が増えたらこのネタできなくなるでしょ
塙:このネタできなくなったら,植毛するお金がなくなるからまたハゲてきて,そしたらまたこのネタをできるようになるっていうシステムですから
土:でもそしたらそのギャラでまた植毛するんでしょ
塙:するよそりゃあ。植毛してまたどんどん髪が増えてきてこのネタができなくなったら,また植毛するお金がなくなってきて,またハゲてきて,そしたらまたこのネタをできるようなるという永遠に繰り返すことができるすごいシステムですから
土:それもうねぇ,髪が増えたり減ったりするっていう芸がメインの芸人になっちゃいますけどいいんですか?
塙:髪芸があれば◯◯◯◯◯◯⚪︎?◯◯◯◯◯◯
土:◯◯(◯◯)違いだよ。いいかげんにしろ
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】