[読む古典漫才] オープンカーニノルモノヘ(当て書き:おせつときょうた)
#オチを予想してお楽しみください (15文字)
しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる
●漫才における「相槌」はそのときの雰囲気で自然に入れるものなので通常漫才台本には書きませんが,本格的な掛け合いのしゃべくり漫才をイメージできるようあえて細かい「相槌」を書き込んでいます。それが「読む漫才」です。
おせつ:私,オープンカーを買おうと思ってましてね
きょうた:何してんねん
お:あかんの?
き:売れてからやろ。オープンカーは
お:売れてからは無理でしょ
き:面割れてるから?
お:犯罪者みたいに言うな
き:顔丸出しですからね。オープンカーは
お:あれは売れてない人の乗り物ですよねぇ
き:言い方に棘あるわ
お:ただね,ゲリラ豪雨が心配なんですよ
き:「オープンカーに乗ってるときに」ってこと?
お:オープンカーに乗る以上ね,多少の雨は覚悟してますよ
き:少し濡れるくらいはね
お:でもさすがにゲリラ豪雨は困るでしょ
き:突然降ってきますからねあれ
お:車の中に水が溜まってね,溺れるかもしれないじゃないですか
き:溺れるか!
お:人は水溜りでも溺れることあるからね
き:オープンカーは屋根ないんやから,車から出たらいいんですよ
お:洪水のときは普通の車より安全ってこと?
き:洪水でドア開かなくなったりしますからね。普通の車だと
お:屋根ないほうが逃げやすいか
き:オープンカーにも屋根はありますけどね
お:いや屋根はないやろ
き:オープンにしてる時はね
お:「オープンにしてるとき」ってなんやねん
き:屋根はずしてるときですよ
お:「オープンにしてるとき」とかないやろ。いつでもオープンや。それがオープンカーやないか
き:雨の日はどうするんですか?
お:それは「覚悟できてる」言うてるやん
き:雨に濡れる覚悟?
お:この覚悟がないとねぇ,急な雨で濡れたときに凹みますからね
き:覚悟してればびしょ濡れになりながらオープンカー運転してても凹まないんですか?
お:「覚悟」とはそういうもんやないか
き:そういう「覚悟」いらないんですよ。雨の日は屋根付けてください
お:屋根を付ける!?オープンカーに!?
き:雨に濡れながらオープンカー運転するなんて恥ずかしいですよねぇ
お:屋根付けるほうが恥ずかしいやないか
き:何が恥ずかしいんですか
お:タンクトップ買ってね
き:タンクトップ?
お:袖縫い付けてる人いたらどう思います?
き:何してんねん!袖付けるんやったらタンクトップ買う必要ないやん
お:そうやろ?屋根付けるんやったらオープンカーなんて買う必要ないんですよ
き:オープンカーとタンクトップ一緒にすな!
お:オープンカーは「屋根がない」というところに価値があるんですよ
き:確かに,BGMみんなに聴かせるかんじで走るのかっこいいですけどね
お:颯爽とね。「オープンカーのことを歌った歌」かけながら
き:爽やかな洋楽とかですよね
お:雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ
き:それ宮沢賢治の楽曲やないか
お:「楽曲」言うな
き:それのどこが「オープンカーのことを歌った歌」やねん
お:これは,宮沢賢治がオープンカーに乗ってる時に思いついた詩ですよねぇ
き:絶対ちゃうやろ
お:そうですよねぇ。宮沢さん
き:誰が宮沢賢治やほんま〜「雨ニモマケズオープンカーに乗ったろかい!」ってこのやろー
お:人違いでしたね。宮沢さんはすべり知らずですからね
き:宮沢賢治もすべったことあるやろ
お:「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ」なんてね,オープンカー乗ってるときじゃないと思いつかないですよ
き:そんなことないわ!だいたい,宮沢さんオープンカー乗ってるイメージないんですよ
お:僕はあえて雨の日にね,屋根のないオープンカーで「雨ニモマケズ」という曲かけながら走るんですよ
き:朗読CDやろそれ
お:[運転する真似をしながら] 「東ニ病気ノコドモアレバ 行ッテ看病シテヤリ 西ニツカレタ母アレバ 行ッテソノ稲ノ束ヲ負ヒ 南ニ死ニサウナ人アレバ 行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ 北ニケンクヮヤソショウガアレバ ツマラナイカラヤメロトイヒ ヒデリノトキハナミダヲナガシ サムサノナツハオロオロアルキ ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ サウイフモノニ ワタシハナリタイ 」。な?
き:何が「な?」なんですか
お:かっこいいでしょ?
き:かっこよくないわ!ほんまにそれやってる人いたらおもしろいですけどね
お:それよ!
き:何が?
お:雨の日に屋根も付けず,宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の朗読CDかけながらオープンカー走らせる理由
き:どういうこと?
お:僕は漫才師やから。いつだって笑いを取りにいくんですよ
き:オープンカーに乗っているときも笑いを取りにいく
お:「◯◯◯◯◯◯◯ ◯◯◯◯◯◯◯◯」
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】