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漫才論| ⁵¹「動く漫才」ってどうなの❓

霜降り明星やマヂカルラブリーのように,かなり動きのある漫才には賛否両論あります。漫才にはセンターマイクというものがあり,漫才ファンの中には,「マイクからあまり離れないでほしい」と思っている方が一定数いるからかもしれません

「動く漫才」がめちゃくちゃ向いている人であれば,それを追求するのもいいこと思いますが,安易に動きに頼るネタばかりやっていると,話芸を磨く妨げになってしまうこともあります


適度に"制約"があるほうが成長する

もはやご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが,本当に「マイク一本」だけで漫才をやっていた時代があります。そうなると当然ですが,あまりというよりほとんど動くことができません

人はあまりにも自由な状態よりも,「適度に制約があるほうが成長する」という話を聞いたことがあります。「マイクの前から動けない」という制約があるほうが,漫才師にとってはある意味いい環境なのかもしれません。話芸を磨くしかないからです。実際,昭和の漫才師はうまいコンビが非常に多いです

本格的に話芸を磨いていきたいコンビであれば,「動きに頼らない」「動く漫才はしない」「センターマイクから離れない」という縛りを自らに課すという方法もあると思います

「動き」と「しゃべり」の二刀流

キングコングタイムマシーン3号などは,最初は「動きで笑いをとるだけの漫才師なのかな」という印象を受けましたが,どちらもしゃべりもうまくて驚いたのを今でも覚えています

「動く漫才」も「しゃべくり漫才」もどちらもできるのであれば,いろいろなタイプのネタをやったほうがいいと思います。単独ライブをやる場合にはレパートリー豊富なほうがいいですし,ネタを作ったり演じたりする分にも,いろいろなネタがあったほうが自分たちも飽きがこないからです

年を取ったら?

いずれにしても,年を取れば大抵の人は動けなくなります。それなら「動けるうちに動いておいたほうがいい」という考え方もあると思います

逆に,動けなくなる時のために,「若いうちから動かない漫才に磨きをかけておくべきだ」という考え方もあります

さらに逆に,相当年を取ってもめちゃくちゃ動けたらそれはそれでものすごくおもしろいので,「いつまでも動ける漫才ができるよう鍛え続ける」という手もあると思います

ちなみに私は,一本のマイクに向かってひたらすしゃべる「ほとんど動かない漫才」が大好きです。結局,「好み」と「向き不向き」だと思いますが・・・

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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」

フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた


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藤澤俊輔 (漫才作家/小噺作家)
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】