漫才論| ¹⁶³鰻和広のインタビューから見えてくるこれからの銀シャリの漫才の"形"
「かまいたちと銀シャリは『途中でボケとツッコミが入れ替わるスタイル』に変えたのか❓」という記事の中で,「『ツッコミもボケるようになった』というよりむしろ,『ボケ側のほうが変化してきた』という印象がある」という点について書きました
この記事では,二組の漫才をみていて感じた私の「印象」また「予想」を書いていますが,その後,OJWebに掲載された銀シャリ鰻さんのインタビュー記事の中で,その「答え」のような内容を話していたのでご紹介します
ボケとツッコミは今はもう自由
鰻さんにも元々は「ボケはこうあるべき」という感覚があったものの,変化している様子がよく分かります
橋本さんはそれはそれは「ボケたい」人だと思います。ただ,それを「ツッコミだ」と思っている可能性はありますが,あれはあえて分類するなら「ボケ」です。ただ,ここまでくるともう「ボケかツッコミか」を分類する意味はほとんどありません。あれが銀シャリの"形"であり,二人の"関係性"と言ったほうがいいと多います
橋本さんがボケたおして止まらないとき,最近では鰻さんが「何を言うてんねんずっと」とツッコむことが増えてきて,「あのツッコミ方は普通のツッコミっぽくないけどいいな〜」とずっと思っていたのですが,鰻さんの心からの言葉ゆえの魅力だったんですね
ツッコミはアドリブが多い
銀シャリは,「鰻さんがネタのキッカケ」というスタイルゆえに,橋本さんがめちゃくちゃ自由にやれるというところもあると思います。完全に暴走していることも結構ありますが,そのときの橋本さんが(鰻さんもですが)ものすごく楽しそうにやっていて,あれこそが「漫才の醍醐味」です。本人たちが「本当に楽しい」という"リアル"に勝るものはありません。M-1などの競技漫才でこれと同じようなことができる漫才師が現われたら,かなり強いと思います
ただ,鰻さんは「話の本題に戻す」という役割ゆえに,橋本さんの"ツッコミという名のボケ"のアドリブが終わるのを待っているかんじがあります。二人で暴走し出したらまったく前に進めなくなるので,「本線に戻す」という役割ももちろん重要ですが,「鰻さんももっとツッコめばいいのに」と思って私はずっと思っていました
その点ついて鰻さんがどう考えているかについても語ってくれています
僕ももっといきたい
「鰻さんがもっといく」というのは,橋本さんがボケたおしているのを笑って見ているだけでなく,そこにもっともっとツッコむということだと思います。鰻さんの次の日にアップされたインタビューの中で橋本さんも同じようなことを言っていましたが,なんなら「さらにボケをかぶせにいくくらいのかんじでもいいのに」と私も思います
鰻さん自身も「もっといきたい」と思っていて,橋本さんも「もっとふざけていい」と思っているので,これからの銀シャリの漫才は間違いなくさらなる進化を遂げることになると思います
漫才師の真の価値は,「M-1後にどこまで進化し続けられるか」で測られるような気もします
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「みんなで作る漫才の教科書」とは,テーマ別に分類した「漫才論」にみなさんから「質問」「意見」「反論」などをいただいて,それに答えるという形式で教科書を作っていこうというプロジェクトです
THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】