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漫才論| ¹⁶³鰻和広のインタビューから見えてくるこれからの銀シャリの漫才の"形"
「かまいたちと銀シャリは『途中でボケとツッコミが入れ替わるスタイル』に変えたのか❓」という記事の中で,「『ツッコミもボケるようになった』というよりむしろ,『ボケ側のほうが変化してきた』という印象がある」という点について書きました
この記事では,二組の漫才をみていて感じた私の「印象」また「予想」を書いていますが,その後,OJWebに掲載された銀シャリ鰻さんのインタビュー記事の中で,その「答え」のような内容を話していたのでご紹介します
ボケとツッコミは今はもう自由
──ツッコミとボケのポジションは、今までずっと変わらず?
鰻 銀シャリとしては変わらずです。今はもう自由ですけどね(笑)。橋本もボケたいんでしょうね。「漫才とは」ってのが別にないので、「自由にやったらええやん」って感じで。ふたりのやりとりでおもしろかったら、それでええと思ってるんで
──橋本さんのボケもツッコミも、両方好きですか?
鰻 両方好きですけど、ツッコんでるときの橋本を見るのが好き。おもしろいんですよ。横におるのって、特等席じゃないですか。今までは「ボケの人がニヤニヤしたらあかん」と思いながらやってたんですけど、最近はそんなんもうええわと思って。そのまんまの感じでいくと、めちゃくちゃ笑ってまうんですよ(笑)。
──橋本さん自体が鰻さんのツボなんですね。
鰻 そうですね、ツッコんでるところがやっぱりおもしろいですね。だいぶ長尺のときあるじゃないですか(笑)。「こいつ何言うてるねん、ずっと」ってホンマに思うときあるんで(笑)。
鰻さんにも元々は「ボケはこうあるべき」という感覚があったものの,変化している様子がよく分かります
橋本さんはそれはそれは「ボケたい」人だと思います。ただ,それを「ツッコミだ」と思っている可能性はありますが,あれはあえて分類するなら「ボケ」です。ただ,ここまでくるともう「ボケかツッコミか」を分類する意味はほとんどありません。あれが銀シャリの"形"であり,二人の"関係性"と言ったほうがいいと多います
橋本さんがボケたおして止まらないとき,最近では鰻さんが「何を言うてんねんずっと」とツッコむことが増えてきて,「あのツッコミ方は普通のツッコミっぽくないけどいいな〜」とずっと思っていたのですが,鰻さんの心からの言葉ゆえの魅力だったんですね
ツッコミはアドリブが多い
──橋本さんのツッコミって、アドリブなことも多いんでしょうか?
鰻 そのときに出たことを言うてます。当初はどこで終わるんかわからんぐらいでしたけど、今では「あ、もう終わる」ってわかります。橋本が「もう言いたいこと言うたんやろうな」ってのが。
──すごい。阿吽の呼吸。
鰻 これは長年やらないと。「この人がどこでしゃべり終えるか」っていうのは、家族レベル……家族でも噛み合わないときありますよ。僕がネタのキッカケなんで、「この人は言いたいこと言い終わった」ってタイミングで入りますね。言ってる最中はおもしろいんで、ずっと笑ってますけどね(笑)。
──何千回とやっているネタなんだろうけど、毎回橋本さんは本気で言ってるんだろうなって思うのは、本当にその場その場で言いたいことを言っているからなんですね。
鰻 本気で思ってるんちゃいます?(笑)
──その橋本さんの熱量とリアリティが、銀シャリさんの漫才の魅力のひとつですね。予定調和でやっていないというか、言葉の一つひとつに気持ちを乗っけている。
鰻 そうですそうです。それがホンマに理想ですよね。
銀シャリは,「鰻さんがネタのキッカケ」というスタイルゆえに,橋本さんがめちゃくちゃ自由にやれるというところもあると思います。完全に暴走していることも結構ありますが,そのときの橋本さんが(鰻さんもですが)ものすごく楽しそうにやっていて,あれこそが「漫才の醍醐味」です。本人たちが「本当に楽しい」という"リアル"に勝るものはありません。M-1などの競技漫才でこれと同じようなことができる漫才師が現われたら,かなり強いと思います
ただ,鰻さんは「話の本題に戻す」という役割ゆえに,橋本さんの"ツッコミという名のボケ"のアドリブが終わるのを待っているかんじがあります。二人で暴走し出したらまったく前に進めなくなるので,「本線に戻す」という役割ももちろん重要ですが,「鰻さんももっとツッコめばいいのに」と思って私はずっと思っていました
その点ついて鰻さんがどう考えているかについても語ってくれています
僕ももっといきたい
──それに笑ってしまいながら話を戻してるっていう鰻さんの魅力もあって。
鰻 笑ってしまいますねぇ。だから、僕がもっとその場でしゃべってる感じが出せれば……僕自体演技が下手だから、そこもっといきたいんですけどね。
──そうなんですね? 今が一番いい状態なのかと思っていました。
鰻 いや、僕ももっと言葉が自然に出るほうが、橋本ももっと自然になると思うんで。自然になり過ぎず、その人が一番テンション高い、一番いい、なんかおもしろいことしてるなってときを演じられたら100%です。演じたらっていうのもあれですけど、そこに持っていけるかどうかです。
──なるほど。
鰻 自分が主役になれたなぁってテンションあるじゃないですか。あれを自分で操作して持っていくんですよ。それが理想ですけど、そのスイッチがめっちゃムズいと思います。……でもあんまり裏側を言うのもあれか。
──漫才の裏側をこんなに聞いていいのかな?と思いながら聞いていました。
鰻 ホンマは何も考えてないって思われたいですからね(笑)。そもそも、あんまりネタとも思われたくもないですし、永遠のテーマなんですよね。ネタだけど、ネタって思われてもね。……これどこまで掲載するか、僕だけのものでないんで、橋本の反応も見てくださいね。マネージャーというか、橋本ですね(笑)。
「鰻さんがもっといく」というのは,橋本さんがボケたおしているのを笑って見ているだけでなく,そこにもっともっとツッコむということだと思います。鰻さんの次の日にアップされたインタビューの中で橋本さんも同じようなことを言っていましたが,なんなら「さらにボケをかぶせにいくくらいのかんじでもいいのに」と私も思います
鰻さん自身も「もっといきたい」と思っていて,橋本さんも「もっとふざけていい」と思っているので,これからの銀シャリの漫才は間違いなくさらなる進化を遂げることになると思います
漫才師の真の価値は,「M-1後にどこまで進化し続けられるか」で測られるような気もします
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THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」
フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔 出演: おせつときょうた
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![藤澤俊輔 (漫才作家/小噺作家)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/77838232/profile_c9960e93d122afc92f44a5ae3be39d6e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)