[漫才] 鍋奉行 -紫綬褒章受章ver.-(当て書き:オール阪神・巨人)
#オチを予想してお楽しみください (3文字)
オール巨人:今年はね,新しいこと始めようと思ってましてね…
オール阪神:それはええことやね。新しいこと始めるのは若さを保つ秘訣ですからね
巨:何しようかといろいろ考えまして…
阪:ほうほう。「何しようか」と考えて…
巨:転職することにしたんですわ
阪:てんしょく?朝っぱらから?
巨:朝も昼も関係ないやろ,転職に
阪:この歳になるとね,朝から天ぷらはちょっとね〜
巨:君は何言うてんねん
阪:君ももうええ歳なんやから,朝は焼魚定食にしなはれ
巨:「てんしょく」て,天ぷら定食ちゃいますよ
阪:ちゃいますの?
巨:違います
阪:ほんなら何?
巨:職業をかえるほうの「転職」
阪:それはあの〜,「漫才をやめる」ということですか?
巨:漫才はやめます
阪:漫才やめんの!?
巨:やめます
阪:「やめます」てそない真顔で言いなさんな。紫綬褒章いただいんやから,まだまだ漫才せな
巨:そうなんですよ。ありがたいことに紫綬褒章いただきまして…
阪:ほんまにありがたい。みなさんのおかげで…
巨:褒章もらったんやからもうええんちゃう?漫才やめても
阪:あほなこと言うな。「この賞に恥じないように,これからもできる限り漫才で走り続けたい」ってインタビューで言うたで,わたし
巨:みなさんよろしくお願いします。今後は阪神くんひとりで漫才で走り続けますんで…
阪:何を言うてんねん。ほんなら君は,漫才やめて何すんねん
巨:鍋奉行
阪:鍋奉行!?
巨:漫才師やめて,鍋奉行になろ思うてましてね
阪:いやいやいや。それ転職ちゃいますやん。ただの無職のおっさんが,定年後に鍋つついてるだけや
巨:鍋奉行とはそういうもんや
阪:だいたいね,鍋奉行なるのに漫才やめる必要ないですからね
巨:阪神くん
阪:なんですか?
巨:流行ってるからといってね,僕には「二刀流」は無理やから
阪:二刀流?
巨:流行りに乗かって軽い気持ちで「二刀流」手出したら痛い目見ますからね
阪:漫才師で鍋奉行やってる人のことを「二刀流」とは言いまへん。そもそも「鍋奉行」は職業ちゃうから
巨:何言うてんねん。「鍋奉行」ってお奉行様やろ?立派な職業やないか
阪:君は鍋奉行のこと「お奉行様」やと思うてんの?
巨:「鍋奉行」言うてんねやから,お奉行様やろ?
阪:ちゃうわ。今の時代に「お奉行様」なんていないですよねぇ
巨:まぁまぁ今で言うたら,「官僚」とか「国家公務員」のことですよねぇ
阪:「鍋奉行」はそういうんと違いまっせ
巨:だからとりあえず,国家試験の勉強しよ思うてましてね
阪:国家試験!? 鍋奉行の国家試験?そんなもんないわ
巨:ないの!?
阪:あるかそんなもん
巨:それやったら,日本全国にいる鍋奉行のみなさんはあれ,無資格でっか?
阪:「無資格」て,鍋奉行に資格なんていらんねん
巨:でも僕は念のためにね,資格は取っておこ思うてるんですよ。こう見えて慎重なタイプやから
阪:だから,鍋奉行の資格なんてないの
巨:ないの!?
阪:ないわ
巨:それやったら,どうしたら鍋奉行なれんの?
阪:そんなもん立候補やがな
巨:鍋奉行て立候補制ですか?
阪:「立候補制」て…,そない大袈裟なもんでもないけど,「僕がやります」言うたら誰でもなれるわ
巨:そんな簡単なもんちゃうやろ
阪:そんな簡単なもんやがな
巨:阪神くんは知らないんですわ
阪:何が?
巨:鍋といえば普通4,5人でやりますけどね,そのうち鍋奉行というのは大抵一人なんですわ
阪:知ってるわ
巨:つまり,日本の人口約1億3,000万人の中で鍋奉行になれるのは,たったの2,600万人ですからね
阪:多いんか少ないんかよう分からんけどもやな…
巨:めちゃくちゃ「少ない」でしょ。僕なんて「なろ」思うてんのに全然なれないですからね
阪:僕はしょっちゅうやってますけどね〜
巨:君のせいやないか!
阪:僕は普通に鍋奉行やってるだけやがな
巨:君がいつも先に鍋奉行やるから,僕は鍋奉行になられへんねん
阪:それは入り時間の問題や
巨:「入り時間」ってなんですか?
阪:鍋をやる部屋に何時に入るかという話や。君いつも遅れてくるやろ
巨:そない遅れてないやろ。7時からやったら遅くても7時15分には着いてますからね
阪:鍋奉行やりたいんやったらもっと早く現場に入らな
巨:「現場」って何?
阪:鍋をやる部屋のことや
巨:君,鍋をやる部屋のこと「現場」言うてんの?
阪:鍋奉行用語や
巨:鍋奉行用語!?
阪:業界用語やがな
巨:阪神くんの入り時間何時?
阪:5時
巨:早ない?
阪:早ない,早ない
巨:2時間も前から現場入りしてんの!?
阪:あたりまえや。鍋奉行なんやから
巨:それ…,僕が思うてる「鍋奉行」のイメージとちゃうな…
阪:ちゃんと4時から買い物全部済ませて,5時には現場に入んねん
巨:買い物も全部すんの?
阪:あたりまえや。それが鍋奉行の務めや。君みたいに7時15分に入ってくるようなもんに鍋奉行は務まらへんねん
巨:いやでも…実は僕もね,5時には現場付近に到着してるんですよ
阪:今さらなんでそないバレバレの嘘つくねん
巨:嘘やないて
阪:君はいつも7時15分にならんと来ないやないか
巨:それはやな…,鍋奉行になりたいから…
阪:鍋奉行になりたいんやったら,ちゃんと5時に現場入りせな
巨:鍋奉行やったら,「ちょっと遅れて行ったほうがええかな」と思うやろ
阪:なんでや
巨:お奉行様だからや
阪:どういうことや
巨:偉い人ってね,なんでかよう分からんけど,「ちょっと遅れて入ってくる」みたいなとこあるでしょ?
阪:「重役出勤」みたいなこと言うてんのか
巨:それやそれ!お奉行様やったら,後から悠々と入っていかんと威厳保てないから,鍋奉行になるためには少し遅れて行ったほうがええと思うやろ普通
阪:君のその鍋奉行に対するイメージはどこで培ったんや
巨:だから僕はいつも5時に現場に着いてやな,近くのファミレスとかで2時間くらい時間つぶして,7時15分に現場入りしてんねん
阪:それでいつも君は7時15分ぴったりに来とったんか
巨:7時10分には部屋の前まで来て,7時15分になった瞬間に部屋に入るんですわ
阪:そない無駄なことせんと,君も5時に現場に入りなさい
巨:5時に現場入りして何すんの?
阪:ダシをとるんやがな
巨:ダシを?2時間もかけて?
阪:いいダシとるには2時間くらい必要や
巨:2時間あったらもっと有意義な時間の使い方できるやろ
阪:「有意義な時間の使い方」て,君は5時に来て2時間もファミレスで時間つぶしとるだけやないか
巨:ファミレスで有意義に過ごしてますよ
阪:何してんの?
巨:弟子をとってるんですわ
阪:何?
巨:弟子をとってる
阪:僕がダシをとってる間に,君は弟子をとってたんかいな
巨:お奉行様というのは今でいう「師匠」みたいなもんやからね…
阪:だから君の鍋奉行のイメージおかしいて
巨:師匠ちゃうの?
阪:全然ちゃうわ
巨:僕,お奉行様て「師匠」のことやと思うてたから,すでに弟子をとってしまったんですけど…
阪:なんで自分も鍋奉行なれてへんのに弟子とってんねん
巨:ちなみに,君は何でダシをとるタイプ?
阪:ダシ?僕は鶏ガラでダシをとるタイプやね
巨:君は鶏ガラ?僕は人柄で弟子をとるタイプなんですけど…
阪:師匠!かぶせるな。「鶏ガラでダシをとる」みたいに「人柄で弟子をとる」て言うな
巨:いやいや,ほんまに人柄で選んで弟子とってんねん
阪:それは漫才の弟子やろ?
巨:漫才の弟子ちゃいますよ。鍋奉行の弟子です
阪:鍋奉行の弟子になるやつなんておらんやろ
巨:今ね,弟子10人いるんですわ
阪:10人も!? よう集まったな,鍋奉行の弟子募集して
巨:でも今困ったことになってましてね
阪:何が?
巨:弟子たちからね,「師匠,そろそろ鍋奉行の稽古つけてください」てものすごいメールきてるんですよ。どうしたらええの?
阪:知るかそんなもん。君,自分も鍋奉行になれてないのに弟子に稽古なんてつけられるわけないやろ
巨:だからとりあえず,今すぐ簡単に誰でも鍋奉行になれる方法教えて欲しい。阪神くんいつも鍋奉行やってるんやから分かるやろ
阪:そんなん簡単や
巨:どうしたらええの?
阪:◯◯◯鍋をしたらええ
あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】