第16話 プジョー、ルノー、シトロエン…etc。なぜかフランス車しか試乗しなかった私
引っ越すタイミングでクルマに乗れるよう、都内のディーラーを回った。あの頃、狙っていたクルマはプジョーのリフターだった。かなりレアなクルマで、走っている姿を殆ど見たことがなかった。実際、納車待ちも数ヶ月だという。
サイトで見るより、実物のほうがかっこよい。プジョーの新コンセプトMPVというだけあって、ミニバン、SUVの魅力が詰まっている。私たちが探していたのは車中泊ができるクルマ。リフターは余裕でクリアしていた。室内もラゲッジスペースも広く、探していたなかでは文句ないクルマ。ディーゼルエンジンもお財布に優しい。しかし、車両本体価格がちょっと高かった。
ライバル車のシトロエン ベルランゴもチェックした。
正直、値段もあまり変わらない。若干リフターのほうが高い。レア度を考えるならリフターに軍配があがるし、実際に見積もりを取ったのもリフターだった。
そもそもなぜフランス車ばかりに目が行くのだろうか。パリに住んでいたからというのも理由の一つだが、ドイツ車とくらべるとそれほど高くない(むしろ今は国産SUVのほうが値段が高かったりする)というのが魅力だからかもしれない。若者が大好きな「コスパがよい」ということだ。プジョーもシトロエンもフランスだとごく普通の大衆車である。あと、松任谷正隆がなにかの番組で「フランス車が一番よい」って言ってた(気がする)ということにも大きな影響を受けている。私が意訳しているのかもしれないが。
さんざんプジョーとシトロエンを見てまわった私が買ったのは、ルノーのカングーだった。前オーナーがほぼ乗っていない、新古車のような中古車だった。納品までのスピード感が新車ディーラーで買うよりこちらのほうがよいのと、中身はほぼ新車だったのと、同じ店でリフターも乗ってみたが、とにかくカングーのボディカラーに惚れたのだ。
付け加えるならなんといってもカングーの魅力は「灰皿」である。2020年モデルのクルマなのに、灰皿がついているのだ。バカっぽくてよい。そして商用車ベースなのでとにかくシンプル。今のクルマってほぼ精密機械がタイヤつけて走っているようなものだけど、カングーは辞書で「クルマ」ってひいて、説明書見ながら作ったような、正統派なクルマという乗り物な感じ。見た目はかわいいけど、心意気はIWGPで窪塚洋介演じるキングなみにかっこいいクルマだと思う。「ごちゃごちゃ言ってねーで、運んで、走るだけって言ってんの!」ってカングーが言ってるような気がした。
ハイオクだし、安い買い物ではないが、高値でリセールできる人気の車種というのもポイントだ。セルシオが北関東でヤン車に成り下がるなるようなものではなく、カングーはいつまで経ってもカングーでいてくれる気がする。実際、ネットで我が家と同じ色のカングーを見たら値段が上がっていた。この先10年くらい乗ったとしてもまあまあな値段で売れるに違いない(その頃にはガソリン車が廃れている可能性もあるが)。
というわけで、ノーマークであったカングーの虜になってしまった。今では湘南エリアを走るカングーを見つけるたびに「同士だ!」と叫び、手を振っている。なぜだかわからないが、カングーオーナーにきっと悪い人はいないだろうと確信している。
おまる
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