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富士山自然図鑑⑧(ラジオ原稿)「アマツバメ」※無料

ラジオをお聴きの皆様、こんにちは。富士山五合目図鑑を担当します富士山ネイチャーツアーズ岩崎です。
このコーナーでは私の大好きな富士山で生きる様々な生き物たちにスポットを当てて、彼らの生き様や、思わず「へぇ~」と声を出してしまいたくなる興味深い生態を紹介していきます。
富士山に行くのが楽しくなる、新たな富士山の楽しみ方が見えてくる、そんな情報をお届けします!

今日は富士山五合目で暮らす鳥「アマツバメ」についてお話します。
先ず初めにツバメという名前が付いていますが、この鳥、なんとツバメの仲間ではありません!ツバメはスズメ目、ツバメ科、ツバメ属に属するのに対し、アマツバメはアマツバメ目、アマツバメ科、アマツバメ属に属する全くの別種です。

アマツバメ:アマツバメ目アマツバメ科アマツバメ属
ツバメ:ツバメ目ツバメ科ツバメ属

翼を広げると20cm程の鳥で、ここ富士山には夏鳥として春から夏にかけて飛来し、繁殖、子育てをして、冬を前に東南アジアやオーストラリアなどの温かい南半球へ何千キロもの渡りをします。そんな長距離を小さな体で飛び続けることも凄いことですが、アマツバメは更に飛ぶ生活を極限まで推し進めた特別な鳥でもあるのです。

食事はもっぱら空中を飛ぶ昆虫を捕食するため、流線型の無駄のないフォルム、ブーメランのように長く伸びた翼、V字型の尾羽など、とにかく飛ぶことに進化の方向性を特化させたことで勝ち抜いてきた鳥で、飛びながら睡眠や交尾まで成し遂げるという妙技まで会得しています。卵を産み温めるとき以外は殆ど地上に降りることはせず、生涯を空で過ごす飛翔のスペシャリストなのです。

では、なぜそんな彼らが富士山を繁殖地として選択したのか?
実はアマツバメは断崖絶壁に巣を作ります。歩くことに不向きな短い足は、地上戦においては圧倒的に不利。空中戦では負け知らずのアマツバメでも、どうしても叶えることが出来ないのが、空中での産卵と子育て。そこで外敵が近寄れない断崖絶壁に、いずれも前を向いた四本の爪をひっかけ、しがみつくように岩場を利用します。度重なる噴火や崩落によって荒々しい断崖絶壁が露出している富士山は彼らの子育てにはもってこいの環境なのです。

度重なる噴火や崩落によって崖状の地形が多い

アマツバメをはじめとする地球規模で暮らしを営む渡り鳥にとっては地球全体が身近な環境。富士山の自然環境だけでなく、繁殖地と越冬地の両方の環境が揃っていて初めて彼らは命を繋いでいくことが出来るわけです。つまり富士山の上空で風を切って飛び回るアマツバメの姿は地球環境のバロメーターでもあるのです。

この春は、キュルキュルと鳴きながら飛翔する空のスペシャリストを探しに富士山出かけてみてはいかがでしょうか。

それでは、またお会いしましょう。富士山ネイチャーツアーズ岩崎でした。ありがとうございました。

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