安倉上池

想いに触れたまち

僕は兵庫県加古川市の街なかで月一回、学びの場を主催している。
MANABIYA Kakogawa
僕が加古川に生み出したイベント。
なぜ始めたのか。自分の振り返りも兼ねて少しづつ書いていこうと思う。

#02  //////////

まちを使う人の目線に立ってまちを作りたい。そんな想いを持ちながら仕事をしている中で、自分の想いを形にできそうな地域と出会った。

・忘れられた地域
そこは、都市部にあって陸の孤島のように取り残された広大な農地。付近には高速道路のインターやJRなどの鉄道駅もあり、生活するうえでとても便利な地域だった。また、学校も近くにあり居住環境として良好な地域。
じゃあなぜそこは農地だったのか?それは、生産緑地という制度で土地の制限を受けていたから。生産緑地は都市にある緑を積極的に保全しようとする制度だが、マイナス面もある。地価が高い都市部で広大な農地を相続した場合、億単位の相続税がかかる。その莫大な負担を軽減するため、農地を続けるなら税金を猶予しましょうという制度があり、それと生産緑地がセットになって制限をかけられている。納税の猶予は農業を継続している期間のみ、つまりお金が払え無ければ一生農業を続けなければならない。

そんな地域に開発の話が起こった。それは、平成34年、もう平成は30年で終わりなので2023年に生産緑地の制限が終わるからだった。生産緑地は時限立法で平成4年に成立し向こう30年間の期間を有した法律。その法律が切れることを見越して、自分たちで開発をしようと地域の人たちは考えていた。

・想いを形にすることで生まれ変わる事業
僕は地域の人たちを何回か会っているうちに、その地域の人たちの人柄が好きになった。とても紳士で他人のせいにせず、何か必要なことがあれば進んで自分たちで取り組む。よくある行政依存の住民ではない、主体的に行動する人たちだった。そんな人たちと自分たちが使うまちを作ってみたい。そう僕は思い始めた。

業務を進めるにあたり僕は土地を持っている人たちにアンケートを取った。その中で、僕を揺り動かす想いに触れた。
そこにはこう書いてあった、


「納税猶予による農地相続を12年経ているので私の代はこのまま農地としてしか維持できないが、息子にはいろいろな選択肢をもたせたい」

子供を思う親の心がそこにはあった・・・・・。
子供のためにも何とかいい街を引き継いでいきたい。そんな想いに応えたいと思ったと同時に、その人は一生農業をしないといけない。望む望まないに関わらず農業をし続けることを義務付けられた人生。

”その人は農業の奴隷になっているのではないか”

と僕は思った。
自分の人生を制度の中で形づくられ、一人ではどうすることもできない。子供を思う親の前に、一人の人間として人生を楽しく暮らせるように事業で何か生み出せないか?と思った。どうせ農業するなら農業でお金も入り、楽しく過ごせる暮らしを事業で作る。地域の実情に合った課題を足すことで土地区画整理事業は新しい価値を生み、まちを仕立てる仕組みとしてアップデートできると思った。

(つづく)

MANABIYA Kakogawa
https://manabiyakakogawa.wixsite.com/manabiya-kakogawa

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