MANABIYA Report vol.29【喜多川颯馬さん/赤松伸哉さん】
2019.09.20(木)19:00~21:00
coworking space mocco
学生というキャンバスに描く僕たちの未来予想図
神戸芸術工科大学 喜多川颯馬さん
岡山大学 赤松伸哉さん
『最近の若い子は?』
あなたが大人なら若いときに言われた言葉かもしれません。あなたが若者なら今、言われているかもしれません。最近の若い子はどんな感じなのでしょうか?やる気がない、覇気がない、夢がない。いろんな「ない」を言われますが、実際に話してみるとすごくよく考えていて、夢も持っている。そんな「いまどきの若者」のお二人をお呼びして旅するMANABIYAvol.29を開催しました。
◆外枠をデザインするには中にも想いを持つ◆
喜多川颯馬
1.学生のうちに出来ることはしておきたい
一人目の「いまどきの若者」は神戸芸術工科大学で建築デザインを学んでいる喜多川颯馬さんです。いろいろなことに興味があるとおっしゃる喜多川さんの趣味の一つが旅先でぶらぶらすることだそうです。
最初に喜多川さんがお話してくれたのは、サグラダファミリアで有名なバルセロナのお話。バルセロナの旧市街にバリアフリー用に設置されたスロープに腰かける人たちを見て喜多川さんは素敵な光景だと感じられたそうです。本来は障がい者の方の通行用に作られたスロープが他の用途になっている。人々が思い思いにまちを自分なりに使いこなしている。そんな素敵なシーンを紹介してくださいました。他にも、日本で桜を囲んで学生が花見をしている横で子供たちが遊んでいる風景も。
喜多川さんは「何かをするには場所がいる」「場所をデザインすることで価値が生まれる」とおっしゃいました。そして自分自身が場や行為をデザインしたいという思いをもち、学内で実践されたそうです。
みんなが使っているなんでもない場所にハイテーブルを置いてみたり、通路にベンチを置いてみたり。日常に何かを置くことで違った日常が生まれることを感じられたそうです。
「建築は外枠」
「外枠をデザインするには中にも想いを持っておかないといけない。だから、建築だけでなくグラフィック、イベントデザインなど学生のうちにできることをすべてしておきたい。」
とおっしゃいました。
2.空間から場づくりまで
●3Fストリート
喜多川さんの活動としてまず紹介していただいたのは、三宮センター街の3階にある通りをデザインされた事例です。センター街の1階メインストリートは人であふれていますが、3階にある細い通路は人通りがありません。喜多川さんはその場所に神戸らしい気品を持った落ち着ける場所を作ろうと、「素敵な時間の間にも素敵な時間を」をコンセプトに人が滞留できる空間をデザインされました。今では、買い物の合間に一息入れることが出来る空間としてまちの人たちにつかわれているそうです。
●ちびっこうべ
次に紹介していただいたのは『ちびっこうべ』という子どもたちがプロから学んで自分たちでまちをつくる企画に携わったお話です。喜多川さんは建築チームの一員としてお店の設計に携わったそうです。お店のコンセプトは「森の中」。本物の竹や木を使って子供たちと森を作っていました。子供たちは現場に置いてある資材に腰かけてベンチのように使ったそうです。喜多川さんはその光景を見て柔軟な発想を子供たちから学んだそうです。
子どもたちの発想も豊かですが、なんでも学ぼうとする喜多川さんの姿勢が素晴らしいと思いました。
●すまホーン
最後の事例紹介は何かを作る建築家としてではなく、コミュニティをつくる活動もされています。それが『すまホーン』という活動。どんな活動かというと、スマホを使って学生が地域に入っていく仕組みです。よく、大人と学生の協働といって一緒に場づくりをしようとしますがなかなか上手くいきません。そこには世代の壁があるから。一言で「いっしょに」と言ってもなかなか一緒に活動は出来ません。そんな場を見て喜多川さんはお互いにちゃんと役割を作ってあげればいいのでは?と考えました。その役割が「先生と生徒」
どちらが先生かというと「学生」です。では学生が大人に教えることが出来るものとは?そこで「スマホ」の登場です。学生は誰でもスマホを使いこなすことが出来る。その特徴を生かして、デジタル機器が苦手なお年寄りの中に入って先生として対話する。そうすることでコミュニケーションが自然に生まれる場づくりをされています。2年半の活動で10名ほどの学生が地域に入り、地域の方と普段からコミュニケーションを取っているそうです。
3.柔らかい発想を持ち続けていたい
喜多川さんは常に視点に意識を持ってらっしゃいます。視点を変えることで思ってもみない使い方がある。視点を変えることでさまざまな人とつながれる。普段の生活の中でチャンスは沢山ある。常に視点を変える姿勢を持ち、いつまでもクリエイティブな発想を持った人として社会に出て行きたいとおっしゃいました。
◆『個』として地域に関わる◆
赤松伸哉
1.始まりは気持ちを伝えること
二人目の「いまどきの若者」は岡山大学で経済学部に所属する赤松さんです。映画やお笑い、スケボーなど赤松さんも喜多川さんに負けず劣らずいろいろなことに興味を持たれています。そんな赤松さんは中学の時に『起業』ってかっこいいなと思われていたそうです。そして、岡山大学に進学して自分のやりたい事を探していましたがいまひとつ足りない日々を送っていたそうです。そんなある日、家庭内で家族どうしこれからの事を話し合う機会があったそうです。その時に赤松さんは「学校を休学して東京に行きたい」という自分の思いを始めて家族に打ち明けたそうです。そして家族の了解をもらい、東京に向かった赤松さん。そこから赤松さんのさまざまな活動が始まりました。
2.つながる・ひろがる
●東京でのインターン
東京ではecbo株式会社という荷物一時預かりを提供している会社にインターンとしては居られました。社員5人の会社でしたが、関西への店舗展開を行うなどとても活動的な環境だったそうです。そして、赤松さんは京都・大阪への店舗開拓を担当するようになったそうです。そこで、赤松さんは社長を始めとする会社の方々や地域のオーナーさんの想いに触れることで成長されたそうです。
姫路を離れても姫路に対する思いを持ち続けていた赤松さんは、インターンを継続しながら姫路で塾のアルバイトをして姫路の人と直接つながる機会を探されていたそうです。
●放課後Box
姫路でのつながりを探していた日々。とあるイベントで知り合った方から思いがけず機会を頂いたそうです。それは荒川小学校の近くにあるフリースペースを活用しないか?とのこと。大学から塾の講師をしていた赤松さんは塾では学べない『学び』が出来たらと思い、毎週水曜日に子供たちと一緒に『放課後Box』という活動を始められました。
宿題やったり一緒に遊んだり、月に一回は課外授業として出店体験やデイサービスへの訪問、そしてプログラミングなどいろいろな体験を子供たちと作っていったそうです。そして、姫路まちづくり振興機構さんと共同でイベントを開催するなど活動はさらに広がっていきました。
そんな広がりを持ちながらも赤松さんの中では『繋ぎ役でしかない』という違和感があったそうです。
●レザークラフトとの出会い
「学生」としてではなく「個」として自分から発信したいという思いを持っていた赤松さん。そんな思いを持っていた赤松さんに京都で思わぬ出会いがありました。友達と出かけた京都でレザークラフトを体験。レザークラフトに感動し、調べてみると姫路の地場産であることを知ったそうです。
「皮革を通じて姫路のまちをもっと知って欲しい」
「レザークラフトを通じて人と人がつながる機会を作りたい」
そう思った赤松さんは仲間達とレザークラフト体験を始められました。そして将来はレザークラフト×ゲストハウスという泊まれるアトリエを計画されているそうです。名前もtomarie(トマリエ)っていう素敵な名前に決まっているらしいです。
レザークラフト体験は「作業をしているので会話を強要されることがない」「体験の時間を通じて姫路の魅力を伝えることができる」など体験だけでなく様々な良さを持っているそうです。そして現在は皮革工場とつながり、皮革の歴史を知るまちあるき企画を行ったり、工場での製造過程を知るなど、更に広がりをみせています。
3.好きなことを好きと言える社会
赤松さんが放課後Boxで子供たちと関わる中で、ある男の子の言葉が凄く印象に残ったそうです。彼は絵を描くのが大好きだったそうです。勉強もそれなりに出来ましたが本当に絵を描くのが大好きだったそうです。そしてその男の子は赤松さんに「勉強は決まった事をしないといけないけど、絵を描くのは自由だから好き」と言ったそうです。
好きな事を好きと言える。自分がやりたい事を勇気を出して家族に話した赤松さんだからこそ印象に残ったのではないかと思うし、赤松さんの活動のベースには「好きなことをする」といった想いがあるのではないかと思います。
恐るべき学生たち!(感想)
今回のMANABIYAは初の学生さんお二人に登壇して頂きました。とかく『学生』としてカテゴライズされ、まちづくりや地域ではなんでもしてくれる便利屋さん的に扱われるきらいがある彼ら。何かしようとすると手伝ってといわれ、社会人(『学生』ではない人たち)が何か話しようとすると先輩の意見を聞いてごらんと言われる。そんな状況に違和感を覚え、僕たちこそ『学生』と向き合って学生の話を聞くことが大切なのでは?と思って企画しました。
いまどきの若い子はしっかりしていますね。
喜多川さんの視点はすでに立派な社会人の視点です。何かに違和感を持ち、その場や関係性が持つ本質的な部分を自分のフィルターを通して、建築や仕組みづくりで表現しようとする姿勢はとても素晴らしいと思いました。
また、赤松さんは直接的な触れ合いを大切にしながら、人を巻きこんだり、人に巻き込まれたり。そうやって、人の想いを感じながら、『学生』ではなく『赤松伸哉』として自分に出来ることを探しています。
僕は一方通行的な「大人」⇒「学生」の構図を双方向として「大人」⇔「学生」の構図を作ってみたいと思いました。でも、終わってみると「喜多川颯馬」⇔「赤松伸哉」⇔「参加者ひとり一人」というふうになっていました。結局、僕自身が「学生」さんという視点から抜け切れていなかったことを二人は教えてくれました。「社会人」「学生」ではなく、「自分」がどう生きるか?いまはその環境が「学生」であるというだけ。
そんなことを今回のMANABIYAで僕は学びました。
あと、僕と同年代の参加者の方が面白いことをおっしゃっていました。
「なんか二人ともしっかりしているなー、恐るべき学生たち」
最後に、僕に赤松さんを紹介してくれ、今回のMANABIYAを一緒にコーディネートしてくれた本多香奈子さん。お世話になりました。ありがとうございます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?