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MANABIYA Report vol.31【加藤寛之さん】

2019.10.18(金)19:00~21:00
coworking space mocco 大会議室
エリアの期待値を上げるシンプルな法則~まちのリブランディング~
株式会社サルトコラボレイティブ代表 加藤寛之さん


1.地域の中で循環させる仕組み

(1)域内で循環させる!
加藤さんはご自身のことを都市計画家とおっしゃっていました。その都市計画家の加藤寛之さんは全国各地で地域の人たちと会社を作り地域を少しずつ変えていく取り組みをされています。なぜ、会社が必要なのでしょうか?それは地域の中でお金を循環させたいからだそうです。よく、地域活性化策として都市部の会社に活性化策を依頼し、お金を域外に流出させている事例がみられます。これでは地域は活性化しないと加藤さんは言われます。
『乗数効果』という考え方があります。これは域内でお金を循環させることで、乗数的に経済効果が生まれる考え方です。域内で出来るだけお金を循環する仕組みを作りたい。地域の人が責任を持って自分たちの地域を活性化させる。そのために加藤さんは地域の人たちと会社を作っているそうです。

(2)作りたいものは何か?
加藤さんからさまざまな事例を紹介していただきました。どれもこれも面白いのですが、僕が特に印象に残ったのは、各地域単体で動いているのではなく、お互いがつながっているということです。全国各地の食材を都市部で販売する。入口と出口をしっかり作り地域の資源をちゃんと流通させている。それによって地域がちゃんと外貨を稼いでいることです。これは全国を股にかける加藤さんならではの活動だと思いました。
もう一つ面白い事例を紹介します。それは大東市の「ズンチャッチャ夜市」です。大東市は大阪市の東側に位置するベッドタウンです。その大東市にある住道の駅前で毎月、最終水曜日の夕方からマーケットイベントが開催されています。なぜ、平日の夜なのでしょうか?むかし、大東市の人たちは仕事終わりに大東市に戻り駅前で仲間と飲む文化があったそうです。でも、いまそんな人たちが少ない。そういった大東市の文化を大切にしながらまちを活性化させる。そのために平日の夕方から開催されているそうです。
そんな大東市の文化を持った人たちが開催するイベントですから、ビールがよくが売れるそうです。そして飲み始めは自分たちが仕事をしてきた大阪市内が夕焼けで色づくマジックアワー。そんな素敵な時間に仲間たちと飲むビールは最高だと思います。そして、妄想は膨らみ、大阪市内とつながる寝屋川を船で通勤出来たら!なんて話も出ているそうです。
よく、マルシェイベントが全国各地で開催されていますが、それはどんな風景を作りたいのか?加藤さんがお話してくれた「大東ズンチャッチャ夜市」はそんなことを僕たちに問いかけているようでした。

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2.まちづくりのシンプルな法則

(1)プロセスをデザインする。
日本全国でまちづくりをされている加藤さんがこれからのまちづくりに必要なことは「リブランディング」とおっしゃっていました。そして「リブランディング」するためには、プロセスをデザインする必要があるとおっしゃいました。
<プロセスデザインのエッセンス>
・現在地があってゴールがある。
・そのゴールまでのたどり着き方を戦略的にする必要がある。
・まちづくりは少ないリソースで戦う必要があり、戦略が大切である。
・戦略とは戦いを略すること、つまり戦わずして勝つ方法を見つけること。
・少数で考え動きフォロアーを大切にする。
→少数とはまちに愛着を持った人でまちの動きに敏感な人、そんな人たちが感じる変化の兆しを大切にする。
・地域の要素は漏れなくトコトン出し尽くす。
・短い時間で集中的に検討しすぐに実行に移す。

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(2)衰退している原因は?
そもそも、なぜまちは衰退し始めたのでしょうか?加藤さんは一般的に原因として謳われているものは現象であり原因を追究していないとおっしゃいます。
・まちの成長を左右する大きな変化は人口推計や生産者人口割合からみると1995年にあった。
・1995年以前=誰でも売れる時代。1995年以降=売れない時代
・一般的に原因と言われているものと劣化コピーによる対処方法
(賑わいがない、コミュニティの弱体化、集客施設がない⇒街バル、ゆるキャラ、マーケットなど)
・まちが衰退した本当の原因はネットや大型店舗に役割を奪われ、用のないまちになったため。まちに求められる価値が変った、ならば未来のまちに対する価値に仮説を与える必要がある。

(3)シンプルな法則
まちづくりにおけるシンプルな法則とは
【コンテンツ×キーワード×未来のお客さん(ファンベース)】
加藤さんはまちづくりとは「新しい価値観を生み出すこと」とおっしゃいます。そして、それは未来のお客さんに向けて、今ある地域の資源を活用する。どこかの誰かの事例を使うのではなく、しっかりと地域に根差した活動が大切だとおっしゃいました。
・未来のお客さんは少数派であるが、未来に向けて重要な人なので大切にする必要がある。
・未来のお客さん(ファン)がシーダーとなって普及を拡げてくれる
・コンテンツ×キーワード×未来のお客さんが決まれば後は事業を進めるだけ。
・トライ&エラーを繰り返しながら徐々に開発を進める、アジャイル開発(トヨタのかんばん方式:必要な分だけ足していく)が適している。
・未来のお客さんは志向で定義する。志向で定義すれば、性別/年代/距離を越えることができる。

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3.あなたのまち、●●で“目くらまし”していない?

(1)ワンワード、ワンイシューの怖さ
加藤さんは「姫路のまちは伊賀と同じです」とおっしゃいました。それを聞いて僕の頭の中は「?」でいっぱいになりました。いったい姫路と伊賀と何が同じなのでしょうか?
そこでみなさんに質問です。
「伊賀といえば?」
「姫路といえば?」
それぞれすぐに出てきませんでしたか?そう
「忍者」
「お城」
ですよね。でも、本当にそれだけでしょうか?「忍者」や「お城」がそのまちの本質や暮らしの豊かさを表しているでしょうか?僕たちは「忍者」や「お城」を隠れ蓑にしてちゃんと“まち”に向き合ってなかったのかもしれません。

(2)日常の暮らしにこそ地域の未来がある
伊賀ではとても素晴らしい地域の資源がたくさんあるそうです。
・加藤清正と並んで築城の名手といわれた藤堂高虎が作ったまち
・日常のおやつに和菓子を食べるほど充実している和菓子店
・まちのお店で日常的に食べられるほど流通がしっかりしている伊賀牛ブランド
どれもこれも日常にある魅力的な地域の資源です。その地域の資源をしっかり伝えるために季刊誌「daco」というメディアを2年限定で作られました。限定としているのはいつまでもつくり続けるのを予防するためです。やりたい事は地域の良さを伝えること、作り続けることではないという信念を感じました。
そして、その魅力をみんなに伝えるために月一マーケットを開催する。
そのマーケットからいろんなプレイヤーが生まれています。
・総菜が美味い魚屋さん
・マーケットを通じて未来に希望を持った和菓子屋さん
色んな人がマーケットを通じて自分らしくイキイキと商売をされていました。プレイヤーとはどんな人でしょうか?「play」とは「遊ぶ」という意味です。ぼくは「まちのプレイヤー」とは「人生を楽しんでいる人」だと思います。そんな、日常を楽しんでいる人たちがいる伊賀に行きたいと思いました。
伊賀のまちづくりは僕たちに日常の大切さ、日常の価値をしっかり見つめ丁寧に伝えることの大切さを教えてくれているようです。

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4.最後に

加藤さんの話は常に“エリア”を意識してらっしゃいました。単体ではなく地域。地域がよくなることで人々の暮らしがよくなる。この“エリア”の括り方が非常に大事だと思いました。僕たちは○○市や○○県といった文脈で地域を語ろうとします。でも、本当にそれが自分たちを表している地域でしょうか?市町合併を繰り返し大きくなった市町村は自分たちの生活感とかけ離れているようにも思えます。
僕たちが僕たちらしさを表すエリア。それは人それぞれに違うと思います。僕たちが僕たちらしさを表現できる地域。それは僕たちが地域の資源を楽しく語りあえるエリアだと思います。そんな地域の資源を見つめなおし、地域の良さを再編集し、丁寧に伝えていく。そこに本当のまちづくりがあるのではないかと思いました。

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「稼ぐまちづくり」
リノベーションまちづくりや公民連携事業などまちづくりの事業手法として盛んに行われています。一方で社会福祉の側面から見た時に「稼がないまちづくり」もあります。加藤さんは「稼ぐまちづくり」は何処でも出来る。それを証明するとおっしゃいました。一見「稼ぐまちづくり」は派手で空中戦をしているように見えます。でも、加藤さんお話を伺うと、日常を大切に、自分たちの生活を第一にまちを紡いでいく。そんな地味だけれど優しい眼差しでまちづくりを諦めない所に「稼ぐまちづくり」の信念があると思いました。

今回のMANABIYAはまるっと2時間、加藤さんのお話でした。その熱量と知識に参加者の方々は食い入るように話を聞き、熱心にメモをとってらっしゃいました。イベント後にお話出来た人、後日お話した人、みなさん「よかった!」と言われていました。みなさんの活動に足りなかった部分や新たに見えた部分、そして『よし、がんばろう!』という気持ちを強く持たれたからだと思います。理論と実践が融合した加藤さんのお話は本当に素晴らしかったです。

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最後に加藤さんがとても印象的な言葉をおっしゃいたので、ここで紹介します。

未来は一握りの少数派からはじまる。
“みんなのため”から脱却して限りある地域のリソースを未来のファンのために使う。
未来は一般大衆の中にない。
未来とは現在の地続きではない。


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