MANABIYA Report vol.08【柳川誉之さん】
2017.10.26(水)19:00~21:00
00.Work Shop space & Office
居酒屋から発信する居場所づくり~事業の元となる想い~
株式会社フォーシックス代表 柳川誉之さん
"感謝"があれば認めてもらえる。”決意”があれば自己実現ができる。小さなアクションが居場所をつくる。
1.”働く”ってなんだろう?
(1)会社はなぜ存在するのか?
新入社員の3割が3年以内に会社を辞めている現状。
企業ブランドを追い求め就職した人達の中で実際の業務に携わり、ギャップに耐えられない人達。
経営者と労働者?会社の中で立場が異なる人達がいる違和感。なぜ会社の中で戦いがあるの?
企業という箱に人が集まるのではない。人が集まって会社を作っている。
(2)会社をつくるもの
人は生まれながらに"感謝"という心を持っているのではないか?
子供の頃持っていた感謝の心、大人になるにつれ忘れてしまっている。
感謝する心が人と人をつなぎ会社をつくっている。
(3)働くとは?
一般的には生活するためやお金を稼ぐためだが、本来は困っている人を助けたり何かの役にたとうしているのではないか?
例えば….『塩』
塩は人間が生きて行く上で必要なもの。
食卓に塩が届くまでには、製造~流通~販売などさまざまな人が関わっている。もし、誰かが関わりを持たなくなると生きていけない人が出てくる可能性がある。
人びとが生きていくために”働く”という行為が必要。
”傍楽(はたらく)”
"傍(はた)"を"楽(らく)"にする。"傍(はた)"を楽しくする。
働くという漢字「人が重いものを持つのに使う力」→「人が重なり力を合わせる」
2.社会を動かす居場所
(1)社会を動かす会社という歯車
"歯車"という表現はネガティブではない。みんなが歯車となって社会を動かしている。
会社が自己主張してしまうと社会がまわらない。社会の歯車として会社はどのように行動するか?
(2)ForSix5つの幸福度を高める活動の先にある社会貢献(Mission)
1、スタッフと、その家族の幸福度を高める
スタッフだけではなく、そのスタッフの家庭環境まで考える。
2、取引先と、その家族の幸福度を高める
取引先はパートナー、お金を払っている側が偉いわけではない。
3、顧客の幸福度を高める
営業中は顧客が一番、スタッフだけが楽しいお店ではだめ。
4、地域住民の幸福度を高める
地域が会社を育てる、地域に愛されている会社は長続きしている。
5、株主、出資者の幸福度を高める
法的には会社は株主・出資者のもの。でも、それだけではない。
そして
6、社会の一部として本気で社会貢献をする事
社会貢献が目的ではなく、自分達の活動を突き詰めて社会の課題を解決する。
(3)目指しているもの
①【家族愛】をテーマに【居場所】を創造し、自殺者を減らしていく。
【家族】血縁的な繋がりではなく、すべてが家族。万物を構成するモノを突き詰めて行けばみんな同じではないのか?
【居場所】空間的な基礎の上に心の拠り所となるのが居場所。居場所が沢山必要と思ったのは兄が自殺をしたから。
ものが豊かになり暮らしやすい日本で過去に30,000人/年の自殺者がいて、今でも24,000人/年の方々が自殺をしている。
居場所をつくり自殺者を減らしたい。
②障害者雇用率6%を達成し、人間的バリアフリー環境の100年以上続く企業を目指す。
現在、人口の6%程度(740~780万人)の障害者の方がいらっしゃる。障害者に認定されていない方を含めると約10%(1100万人~1200万人)の方が支障を持ちながら日々の暮らしを送っている。障害者をケアするのではなく、お互いに学び合い共に歩んでいく事が必要だと思う。
お互いが、がんばれば乗り越えられるまで心の壁を少しずつ下げる人間的バリアフリー環境を作っていきたい。
3.自分を”認知”してもらった居場所から始まる居場所を守るための"決意"まで(生い立ち)
(1)大人ばかりの社会の中で
大阪市で7人兄弟の末っ子として生まれる。
一番上とは20歳違い。
両親が経営するお店を手伝いながら多くのお客さんと接し、6歳頃には複数客のお使いで同時にいくつものたばこを買いに行っていた。
お使いをすることで周りの大人に褒められ、お駄賃をもらうのが喜びとなる。
学校では小3の時にクラスの不良に偶然(?)けんかに勝ち、クラス内で自分を変にアピールする行動が多くなってきた。(○○で机の上を走りまわったり、授業中に○○したり・・・・)
12歳に兄が開業した喫茶店で手伝いを始める。時給350円で働き学校の給食費を支払い、友達と遊ぶ程度のお金を持っていた。
小学生の時は掃除、中学生になれば冷たい飲み物を運ぶ事も許され、14歳になるとホットコーヒーを点てることも出来るようになる。
ある日、マスターである兄が家出。母親を助けるため教師に話をし、学校の授業中にお店に戻りレジ締めをすることもあった。
その後、兄の代わりにバイトの面接をするようになる。
(2)兄の死、経営者としての人生
兄が複数の事業を始めるも、行き詰まり家族の保護を受けながらも自殺。
兄からの経営を引き継ぎ、二十歳で喫茶店のオーナーになる。好調な喫茶店の収入から身の丈以上の生活をする時期もあった。
23歳から兄が経営していた複数の事業を引継ぎ売り上げを伸ばすことに成功し、年商4億円を達成。
26歳には喫茶店を除くすべての事業経営を譲渡し喫茶店に集中し始める。
29歳、矢沢永吉の言葉にあせり、2年間自動車販売会社で下働き。
「20代頑張ってない奴は、30代へのパスポートもらえないんだよ!」
31歳、心斎橋でBARを経営。昼はお酒を飲まないキャバクラとして「カフェクラ」を始める。メイド喫茶と同じようなシステムを先行して採用しており、あと少しのアイデアがあれば「メイド喫茶の帝王」になっていたかも?(笑)
しかし、BAR事業は半年で行き詰まり多額の借金を抱え「自殺」を意識する日々が続いた。
次に行ったIT関連事業が大当たりし、多額のお金を得ることが出来た。
しかし、お金を欲していた自分が多額のお金を得たときに、「自分一人で抱えておくのはマズイ」と感じ地縁を始めとする方々にお金を配る。
(3)大自然が導いた決意の架け橋
飲食企業の社長に請われ、グループ内の赤字店の店長になる。
4月からの半年で何らかの結果を残すと宣言し、2,3ヶ月で前年度売り上げ120%の驚異的な数字を上げるが、グループ内では賞賛と妬みの両方の声があった。
その後、約束の半年を待たずに経営判断で店舗の閉鎖が決定された。
活力が出てきた店舗スタッフとお店の未来に悩むある日、開店前の一時間半ほどをスタッフみんなでバーベキューをする。楽しい時間を過ごす中、スタッフへの愛着が高まり彼らの居場所を守りたいと思い始める。そんな気持ちを後押しするかのような”ダブルレインボー”が空に映し出された瞬間に"決意"が舞い降りてきた。
4.未来へのまなざし
(1)まちづくりに触れて
フォーシックスの「スタッフを大切にする」という運営方針を師匠として尊敬する方が高く評価し、自身が運営する小型風力発電などを行う「アースグループ」の代表取締役に就任要請をされ、任につく。
現在は青森・北海道・秋田などで事業実施に向けた住民説明会を実施している。住民から”まちづくり”への要望が多いが"まちづくり"ではなく、一つ一つモノや事業を作っていく事を提案している。
(2)組織・企業・まちが続いていくために
会社が続いていくための仕組みを考えていくと神社に行き着ついた。
神社は宮司が全てを管理しているのでは無く、地域が神社を支え、地域が神社を使っている。
中崎町に開店した居酒屋”てつたろう”は神社をコンセプトにクラウドファンドで募集した出資者の名前を提灯に書き、店舗内に掲示している。応援し続けてもらうお店として”てつたろう”は未完成であり続けたい。
組織は企業に属しており、企業は地域に属している。ならば恐れずに地域に出向き、話をし、共感を得れば夢が語れる。その夢を実現するために互いが少ずつ行動することが”まちづくり”ではないか。
感想・意見交換
●会社って簡単に作れるんですか?また、なぜ今まで会社を設立していったのですか?
-作れます。以前は初期費用として300万円ほど、登記をしてもらうなら追加で20~30万円ほどあれば出来ます。
働くには自分が気持ちよい環境にしたい。特に社長などの役職に固執している訳ではない。
”誰かに認めてもらいたい”その欲求を満たすために"自分で工夫してなにかしてみたい"という考えがある。その環境があれば役職は関係ないが、組織のトップに近い方がその環境を作りやすいので、会社を設立しているのかもしれない。
●"誰かに認めてもらいたい"という欲求は"誰かに認めてもらっていない"という不満につながる。そんな時が今までありましたか?
-以前声をかけてもらった会社で1年ほどそんな状況があった。
低迷している店舗を立て直す役割で社長に請われ入社した。社長は劇的な変革を期待していたが、実際は地道な取り組みによる変化をしている中で社長の思いと現実とのギャップから衝突することが度々あった。
お世話になっている社長であったため自分で出来る事はしようとしていたが気持ちが腐っていき、社内での限界を感じて会社を辞めることにした。会社を辞めるまで業務に対する提案はし続けたが、『辞める人』の意見として誰も取り入れてくれなかった。
●missionのスタッフへの周知は?
-"1.スタッフとその家族の幸福度を高める"は特に意識している。
スタッフの幸福度は会社が高めるものではない。スタッフ全員が社内で幸福度を高めようとする意識や行動が必要。
そのため、missionに賛同してもらってから会社の一員として採用している。
●生き方が任侠ぽいと感じるが?
-生まれた場所が地域のコミュニティを大切にする
環境であったため、"約束は守る"が地域住民の潜在的な意識の中にある。
そのため、簡単に"約束する"とは言えない。それが自分を窮屈にしている部分もあるが・・・・・。
【参加者からの感想】
社長が簡単に約束すると社員に負担を強いる場合がある。身の丈に合わない大きな約束を突然されると社員は大変。
それより、社員の幸福度を高めるために少しづつ積み上げて内部を改善していくことの方が大切。
【参加者に対するアドバイス】
潜水艦が作りたくて潜水艦を作っている会社に入ったが、本当に携われるか心配になる。
-潜水艦のサイズや仕様などにこだわりが無いのであれば、自分で作ったらどうか?
自分で出来る事から始めて、ある程度結果を出すことで少しづつ周りが認め、いつか社内で取り上げられ潜水艦事業に携われる時がくると思う。まず自分から始めてみてはどうか?
振り返って
柳川さんのお話はとてつもないほどの経験から得られた膨大な知識と、さまざまな書籍から得られた理論が組み合わさり、とても分厚かったです。知識だけでは体系的で無いため伝えきれず、理論だけではリアリティが無い。そのどちらもあるから説得力があり、魅力的なお話になったのだろうと思います。例えば"お金"に関する話について、お金に困りったりお金に恵まれたりしたからお金の事が分かる。そして、お金を"ツール"と言い切れるところは恐らくファイナンスについて学ばれているのだろうと思います。
居場所についてはMANABIYAで何回か取り上げたテーマですが、スペースやしつらえなど物的なアプローチが多かったと思います。その中で僕は((人+モノ)×コト=愛着)n乗=居場所と定義してみました。
人とモノや空間があり、それを何かコトでつなぐと愛着が生まれる。愛着を重ねながら居場所になっていくと思います。その中で大事なのは”コト”。どうやって人やモノをコトでつなぐのか?そのつなぐものはなにか?それを知りたくて柳川さんのお話を聞きました。
恐らく”コト=感謝”だと思います。
コトをしつらえやデザインとして捉えていましたが、どうもそうでは無いらしい。しつらえやデザインの元には”人を動かす力”であり、それが"感謝"なんだと思います。「感謝された、感謝している」といったポジティブな気持ちがその場をポジティブにし、愛着を生み、愛着が育ち、居場所になるんだろうと思います。
マズローが提唱した欲求の5段階についても、示唆に富んでいました。マズローの本自身は読んでいませんが、ネット上の知識から、欲求は5つに区分され段階を経ていくとされています。僕自身、そのようなステップがありどの段階か?を考えることがありました。でも、柳川さんのお話はそうでは無いようです。恐らく、欲求の区分は5つでいいと思います。というより、いくつに区分するかはあまり意味を持たない。それより、欲求とはその場に必要な欲求が満たされているか?相互に作用しているかといったものだと感じました。
例えば子供のころ支払いの都合で家が停電した時、柳川さんは友達を呼んで楽しんだ。恐らく【安全欲求】は満たされていないが、集団的帰属の【社会的欲求】は満たされているんだと思います。また、綿菓子のバイトをしている時、売り上げを伸ばして親方に褒められたいという【尊厳欲求】の中で、自分で何かを考え試してみたいという【自己実現欲求】もありました。
そして、その欲求をポジティブな方向に持って行くのが柳川さんは上手だなと感じます。
家族、仲間、会社、行政、どれも組織です。
以前読んだ本で、人が一人では生きていけないのは生理学的なモノだと書いてありました。
・人は便利なくらしをするために二足歩行になった。
・二足歩行になることにより、胎児がおなかの中に居る時間が短くなり、産まれても立って歩いたり出来ない、誰かに育ててもらわないといけない状態で産まれる。
・誰かに頼って育ってきたため、誰かに認められたい。誰かがいないと生きていけない。
とても的を得ているし、面白いなと思っています。また、そこから更に考えを伸ばすと、
・誰かを育てる、誰かとつながる。それによりさらに自分達の生活をより良くなる。
・より良くするための組織が出来ていく。
ということだと思います。
つまり、組織とは自分達の生活をより良くする仕組みで、家族・仲間・会社・行政は大きさが違えどどれも同じなんだと思います。
”会社は自分達の幸福度を高める場”
柳川さんのお話から家族・仲間・会社・行政が一直線上にあるモノなんだと教えてもらいました。
最後に、
柳川さんのお話は『また聞きたい!』と強く思いました。柳川さんの再登壇を何かの機会で持ちたいなと思います。
でも、あんまりコミットしようよ!って言い過ぎて出来なかったら困るので、高まる熱量を静かに暖めていきたいと思います。