一句《ボヘミアの 風が樹氷を 揺らす音》杉並公会堂、日本フィル
2023年1月24日火曜日15時、
場所は杉並公会堂大ホール、海老原光さん指揮、日本フィルの演奏によるドヴォルザーク交響曲8番を聴いてきました。
海老原さんは舞台袖から指揮台まで急ぎ足です。
速い!
そして指揮台に颯爽とかけ登り演奏が始まる・・・か、と思いきや、譜面台のページを確認して、一枚めくってスタートです。(あら?っと、心のなかで笑いました)
プログラム・ノートによると「この“第8番”はドヴォルザークの交響曲のなかでも最も郷土色の強い」ドイツ的な構成にチェコ独自のエッセンスを取り入れた作品とのこと、ボヘミアの風土や雰囲気を存分に楽しませていただきました。
アンコールはブラームスのハンガリー舞曲第6番です。
この曲は途中に、音を「のばして〜、ためて、ためて、はい」再開、みたいな部分が2ヶ所くらいありまして、この「ためて、ためて」あたりで海老原さんは指揮棒を高く掲げたまま、顔だけ客席のほうへ振り向き一瞬固まります。
で、また、演奏者のほうへ素早く視線を戻し「はい」再開となります。
1回めは客席も「何があったのでしょう?」とあっけにとられましたが。2回めは海老原さんのパフォーマンスとわかり、振り向いたところで会場から笑いが漏れていました。
それは楽しいアンコール演奏でした。
そして、調べてみました。
今回聴いたドヴォルザークの交響曲第8番と、ブラームスのハンガリー舞曲第6番について。
ブラームスのハンガリー舞曲第6番はオリジナルではなく、演奏を聴いたブラームスが採譜・編曲したものです。しかも、もともと演奏していたのは(ヨーロッパの少数民族ロマなどの)ジプシーで、ブラームスが勝手にハンガリー舞曲と思い込んでいただけ。
ジプシーのオリジナルだろうがなかろうが、ハンガリー舞曲集は人気で、とにかく楽譜が売れました。
そこで、ブラームスはドヴォルザークへ舞曲集はお金になるとアドバイスをし、それを受けてドヴォルザークが作ったのがスラブ舞曲集です。ただし、スラブ舞曲集はドヴォルザークの完全オリジナル。
スラブ舞曲集の楽譜も売れました。
ドヴォルザークが取り引きしていたドイツの出版社は、こういう短い曲をもっと書いてほしいと要求しますが、そのような依頼と報酬に不満を抱いたドヴォルザークは長くて納得の行く交響曲を書き上げ、楽譜をイギリスの出版社へ持ち込みます。
それが、ドヴォルザークの交響曲第8番です。
ドヴォルザークが長い曲を作ってくれて良かった。曲の完成から133年後に「杉並」で「日本フィル・海老原さん」が演奏して、私が聴いて感動することになったのですから。
ほんとうに、いい曲ですし、いい演奏でした。
さて、急ぎ足でここまで説明してきましたが。
急ぎ足はマッハ0.004くらいかな。
そのマッハって、人の名前で、速さの単位のことです。マッハ1は音速と同じ、摂氏20℃のとき時速1,237キロ。マッハ1を超えるとき衝撃波が発生し大きな音を伴います。
雷は光(が通るジグザグの経路)が空気を熱し、空気の熱くなった部分がマッハ1以上の速さで膨張するので衝撃波が生じ、あの「ゴロゴロ」音が発生します。
これを研究した人がエルンスト・マッハで、ドヴォルザークと同じチェコ出身、ドヴォルザークの3才歳上、ウィーンで物理学、哲学、心理学、音楽学などの研究に勤しんだ人物です。
そういえば、
カーテンコールで海老原さんは舞台袖と舞台中央をやや駆け足で移動していました。
速い!
たぶんマッハ0.006くらい。
読んでいただき、ありがとうございます。