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白昼百物語 二十二話目~こっくりさん

今の小学生はこっくりさんなどするのだろうか。そもそも知っているのだろうか。娘に聞いたら、YouTubeで見たことある、とのご返答だった。私のときは小学校三年くらいのときに流行って、何度か放課後に友達数人とした憶えがある。みなが帰った教室に居残って、誰かが作った雑なあいうえおの表に十円を置いて、そこに人差し指を置いた。質問は誰々の好きな子は誰ですか?とか、誰々と誰々は両想いですか?といったものばかりで、全国的におそらくこっくりさんをしていたのはその世代の女子が多かっただろうから、こっくりさんも毎日のようにがきんちょの恋愛相談を受けてさぞうんざりしていたことだろう。
みな面白半分で、案の定最初は十円玉は動きはしなかったのだが、特定の男の子の質問のときにだけ十円玉は動き始めた。その子のことが好きな友人の指が白くなるほどに力が入っていて、私は笑いそうだった。特に恋のライバルということでもなかったのだが、その子の好き勝手に動かされるのも癪で、反対方向に力を入れて、十円玉を動かなくしたりなどしていた。どっちにしろ、罰当たりなことである。
こっくりさんのルールとして使った十円玉はその日のうちに使わなければならないというものがあった。十円玉を用意した友人もそのことを意識していたのだが、なぜか今まで使っていた十円玉が見当たらない。私には誰かが隠したとか捕ったふうには思えなかった。そこまで私たちは子供ではなかったし、大人でもなかった。
友人は泣きそうだったが、他の子になぐさめられて帰っていった。特にその子になにか悪いことが起ったとは聞いていないが、あの十円玉は出てこないままだった。
十円玉がどこかに消えてしまったのだとしても、純朴でまだあどけない私たちの中に何かを思って十円玉を隠したものがあったのだとしても、私はそれがこわい。

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