咲谷みわ

思い出がどんどん薄れていくのが残念で、自分の経験した少し不思議なもろもろを書き残してお…

咲谷みわ

思い出がどんどん薄れていくのが残念で、自分の経験した少し不思議なもろもろを書き残しておこうと思ってはじめました。三十代女性です。娘が一人。

最近の記事

白昼百物語 三十二話目~トイレの花子さん

こどものころにしたことなので、許してほしいのだが、小学生のころのことである。三年、四年だったか。放課後のクラブのあとだっただろうか、少し遅い時間に一人トイレに入っていた。クラブ活動場所の近くの、あまり人通りの少ないトイレである。そこはなんとなく薄暗いせいか、校舎のはじにあるせいか、トイレの花子さんが出るという噂のある場所だった。私の入っていたのは、その花子さんが出ると噂の場所の隣のトイレだった。入ったときはトイレは全て空いていて、用を足しているときも誰かが入ってきた気配はなか

    • 白昼百物語 三十一話目~スプーン曲げ

      ユリゲラーがテレビでスプーンやフォークを曲げたころ私はまだ生まれていなかった。しかし小学生のころ再び心霊やオカルトがよくテレビでとりあげられる時期があって、ユリゲラーのこともそれでみな知っていた。 テレビでユリゲラーの特集があった次の日、もちろん私たちは給食のスプーンを曲げようとした。そして私も含め、何人かが本当に曲がってしまって、怒られるのを怖れた私たちは慌ててそれをもとに戻した。 実際にユリゲラーがテレビでスプーンを曲げたとき、テレビを見ていたこどもたちの多くがスプーンを

      • 白昼百物語 三十話目~学校の怪談

        小学生のころ学校の怪談という映画が好きだった。当時大ヒットしてたしか4まで作られたはずで、全て映画館に見に行った。特に1と2はコミカルな要素も多く、ビデオをレンタルしてきては何度も見た。懐かしくて最近見直したのだが、やはりいい映画だった。本当にあったら嫌だろうが、子どもだけの一夏の怖い体験がなんだかうらやましかった。 学校の怪談1の中で、男の子のいたずらで教室の天井に赤い手形が発見されてみなが怯えるシーンがあった。映画の中ではすぐにそれはいたずらだとばれるのだが、当時私の小学

        • 白昼百物語 二十九話目~お化け屋敷

          憶えている人はどれだけいるだろう。昔石川県の卯辰山にサニーランドという、動物園と水族館と遊園地が一緒になった施設があった。1993年に老朽化と客足の減少で閉鎖されたのだが、私のこどものころにもすでに設備はなかなかに古びていた。 たしかゾウがいたと思う。それくらいの記憶である。なにせ幼稚園のころだ。 遊園地のほうにはこれまた古びたお化け屋敷があった。乗り物にのって進んでいくタイプのお化け屋敷で、人形も飾りも年季がはいっていたが、幼稚園児の私には恐ろしかった。あれが私の最初のお化

        白昼百物語 三十二話目~トイレの花子さん

          白昼百物語 二十八話目~迷子の木

          昔から方向音痴である。車に乗ってもすぐにナビを頼るから、なおさら道を覚えられない。幼いころもすぐに道に迷った。母と伯母とデパートに行ったとき迷子になった。すぐに何かに気を取られるぼーっとした子だった。気がつくと母も伯母も見えなくなっていた。たしかいくつか年上のいとこも一緒だったが、私一人である。 あの心細さ。走り回って泣き出して、おそらく誰かがサービスカウンターに連れていってくれたのだろう、放送をかけてくれて無事に母と再会できた。階段の前でのぼろうかおりようか、それとも動かず

          白昼百物語 二十八話目~迷子の木

          白昼百物語 二十七話目~黒い男

          小学校四、五年生ごろ、いつもの通学路である。いつもの友人と学校から帰宅の途中、クラブの帰りだったのか、すでに空は夕方の気配を漂わせていた。あのころどれだけ話しても話し足りなかった。何をそれほど話しこんでいたのだろう。おかしくておかしくて仕方なかった。噂話やクラスであったこと、恋の話もしていただろう。今は友人と食事をするときは子供の話ばかりになる。しかし本質は変わっていない。内容なんて大した問題ではないのだ。ただしゃべることが楽しいのだ。きっともっとおばあちゃんになっても、私は

          白昼百物語 二十七話目~黒い男

          白昼百物語 二十六話目~顔

          子どものころは自分の顔が苦手だった。子どものころと言っても、幼稚~園に通っていたころのことである。小学生にあがって遅くとも三年生くらいにはその感覚はなくなっていた。 他の友達がうらやましかった。どうしてみないつも同じ顔でいられるのだろう、と。それに輪郭がくっきりはっきりしている。 私の顔は、ときおり違う顔に見えることがあった。そして輪郭がだぶっているような、曖昧に見えることがあった。 それが怖いというよりも、何か不安だった。自分の顔がどれなのか、わからなくなりそうだった。 い

          白昼百物語 二十六話目~顔

          白昼百物語 二十五話目~ケーキ

          小学生三年生くらいのときだろうか。友人の家でケーキを作った。何用のケーキだったのだろう。多分、クリスマスだったと思うが、おしゃれさは微塵もなかった。 手作りケーキと言っても、材料がすべてセットになったものを使ったので、混ぜたり量ったりするくらいだったが、あぁでもないこうでもないと騒ぎながら、ときには揉めながら作った気がする。 クリームも混ぜて泡立てるだけだったのだと思う。 大騒ぎしてケーキは出来上がった。親に手伝ってもらわず、子どもたちだけで作った。やっと食べれるといさんでみ

          白昼百物語 二十五話目~ケーキ

          白昼百物語 二十四話目~ドッペルゲンガー

          小学生のときの記憶が曖昧だ。みなどれほど憶えているのだろう。掃除のときにずっと嵐の曲が流れていたこと。掃除をさぼって窓辺で友達と話していたこと。何をそれほど毎日話していたのだろう。今頑張って思い出してみたが、何一つ思い出せない。 玄関ロビーに飾ってあった誰がとったのかわからないトロフィー。階段の踊り場の大きな鏡。七不思議にも数えられていた遊技場の窓に浮かぶ白いお墓の形の汚れ。休み時間に竹馬をしていたこと。竹馬が得意な子が休みだったために彼女の代わりに出た竹馬披露会(?)で失敗

          白昼百物語 二十四話目~ドッペルゲンガー

          白昼百物語 二十三話目~産声

          数年前に娘を産んだ。予定日より一週間ほど前に陣痛が来て病院に行ったがなかなかおりてこない。どうやら骨盤にひっかかっているようで、三十時間ほどの陣痛のあと急遽帝王切開することになった。帝王切開の場合、下半身麻酔が一般的だと思うのだが、私の場合血液異常があったために全身麻酔下での手術となった。 もちろん全身麻酔では意識はなくなる。子供が生まれてくる瞬間を見られないのは残念だが、そんなことは言っていられない。母子の健康が第一優先である。 私は今まで全身麻酔を二回経験したが、あれは不

          白昼百物語 二十三話目~産声

          白昼百物語 二十二話目~こっくりさん

          今の小学生はこっくりさんなどするのだろうか。そもそも知っているのだろうか。娘に聞いたら、YouTubeで見たことある、とのご返答だった。私のときは小学校三年くらいのときに流行って、何度か放課後に友達数人とした憶えがある。みなが帰った教室に居残って、誰かが作った雑なあいうえおの表に十円を置いて、そこに人差し指を置いた。質問は誰々の好きな子は誰ですか?とか、誰々と誰々は両想いですか?といったものばかりで、全国的におそらくこっくりさんをしていたのはその世代の女子が多かっただろうから

          白昼百物語 二十二話目~こっくりさん

          白昼百物語 二十一話目~守護霊

          守護霊というものはいるのだろうか。よく守護霊を見てもらったという話を聞くが、私は見てもらったことはない。守護霊が見えるという人と出会ったこともない。 霊感がなくても、そういう不思議な能力を持つ人に縁のある人というのがいる。私は会いたいと願っているのにほとんど出会ったことはない。これもまた守護霊と何か関係しているのだろうか。 高校生のときはなぜあれほど眠たかったのだろう。運動部でもなかったのにお腹がよくすいていたし、授業中はいつも眠たかった。そのときも苦手な日本史の授業で必死に

          白昼百物語 二十一話目~守護霊

          白昼百物語 二十話目~バンガロー

          がちがちにインドアな人間であるが、子どものころは親に連れられて何度かキャンプでテントやバンガローにとまった。両親もそれほどアウトドアな人達ではないが、子どもにキャンプを経験させたいと思ってくれていたのだろう。娘は私に似たのか、虫や暑さ寒さが苦手である。キャンプも嫌がって行きたがらない。 私が小学校高学年、妹が低学年頃のことだったと思う。近くに浴場もあるようなバンガローにとまった。バンガローもきれいで、キャンプという感じはなかった。虫が苦手な私にはありがたかった。本好きだった私

          白昼百物語 二十話目~バンガロー

          白昼百物語 十九話目~赤いハイヒール 

          過去のことはすぐに忘れていくたちの私である。子供のころの記憶になると、ぽつぽつとした記憶の島を辿るだけでせいいっぱいである。その島の中に、不思議な記憶があった。実家のベランダを隔てるガラス扉にかけられたカーテンの裾からにょっきりと足が二本出ているのである。しかもその足は赤いハイヒールを履いている。家の様子もカーテンの模様も記憶のそれは実際のものと合致しているが、赤いハイヒールだけがあまりに異質である。 そもそも母はそんな真っ赤なハイヒールなど持っていなかったし、周囲にそんな雰

          白昼百物語 十九話目~赤いハイヒール 

          白昼百物語 十八話目~人形

          人形とかぬいぐるみというものは、簡単に買ってしまうが、簡単には捨てることができないものである。思い出があればなおさらだが、UFOキャッチャーでとっただけのものでも、顔があるものは捨てるのがはばかられる。日本人形やフランス人形のように人に近い見た目のものは特に。だからこそ人形供養などがあるのだろう。 生まれたときに買ってもらった雛人形を娘に受け継いで、今もひな祭りの折には箱から出して飾っている。何事も億劫がる怠惰な私であるが、雛人形に関してはひな祭りまでには必ず飾っている。結婚

          白昼百物語 十八話目~人形

          白昼百物語 十七話目~キャンプ

          インドアな人間である。趣味は読書や手芸で、虫や暑さ寒さが苦手、枕が変わると寝れないタイプである。大人になったあとはキャンプもハイキングも縁遠くなってしまったが、子どものころは親に連れられたり、友人とキャンプ体験に参加したりなどして外に宿泊する経験はあった。小学生のころ、友人と言ったキャンプには県内の小学生が参加していて、その日あった子と二人でテントに宿泊した。目がくりくりとしたかわいらしい子だった。大人になった今では考えられないことだ。知らない人とテントで二人っきりである。女

          白昼百物語 十七話目~キャンプ