白昼百物語 三十九話目~蚊柱
今年九十四になる祖母は、数年前まで畑仕事をしていた。
子どものころほど頻繁に訪れなくなった祖母の家に、訪れた夏の日、耳の遠くなってしまった祖母は、私にトマトを食べさせようと家の前に作った小さな畑に私を連れていった。
そこには驚くほど太い蚊柱が立っていた。年に一度か二度しか蚊に刺されることのない、刺されにくい体質の私だが、さすがにその蚊柱には引いてしまった。祖母はその蚊柱に気がついているのかいないのか、ずんずんトマトを取ろうとして蚊柱に近づいていく。おばあちゃん、かばしら!とい