頭痛キャラメル 第三十話 【薔薇の絵 前編】
僕は、保育園に通ってた頃から、お絵かきが大好きで、いつもポッケの中にクレヨンが入っていた。
お気に入りのクレヨンがあって、セロリアンブルーのクレヨンを入れたポッケの中と外には、セロリアンブルーの色が染み付いて取れなかった。
そんな僕に対して母親は、決して叱ることはなかった。
いつも、僕の右手の爪の中には、クレヨンの色が入り込んでいたため、ゆで卵を食べたときは、ゆで卵にクレヨンの色が移っていた。
それから何年も経ったある日、僕の家族は母方のおばあちゃんの家に泊まりに行った。
おばあちゃんの家は、とっても大きな家で、玄関から続く長い廊下の奥に居間があって、僕たち家族はいつもその場所でくつろいでいた。
居間には黒電話があり、近所の人から頻繁に電話がかかっていた。
僕はその黒電話の近くの壁に貼り付けた、薔薇の絵が気になっていた。
その絵は、カレンダー裏の白い面に描かれていた。その薔薇の花びらと、茎のトゲを強調した大胆な構図の絵だった。
なんだか懐かしく感じる不思議な絵の魅力にひかれ始めていた。
「これ、誰が描いたの?」僕がそう聞くと、
僕の母親が、「おばあちゃんに聞いてみたら?」といい、続けて、
母親が、「おばあちゃん、この絵誰の絵?」
と、聞くと、おばあちゃんは、「⚪️⚪️君の描いた絵よ」と、僕の名前を呼んだ。
しかし、僕はその薔薇の絵を描いた記憶がなかった。
僕の絵とは、絵の感じも違うし、おばあちゃんに絵をあげた記憶もなかった。
「おばあちゃん、僕はこの絵は、描いていないよ。」そういうと、
おばあちゃんは、「他に描く人はいないよ」。「あんたの描いた絵よ」。そう言うなり、おばあちゃんは、お風呂場の奥の方に向かって、いずれ姿が見えなくなった。
おばあちゃんが用意してくれたお風呂に入って、居間の隣の寝室で、お布団に潜り、眠りについた。
僕の両親とおばあちゃんは、居間でテレビを観ていたが、土曜サスペンス 名探偵 明智 ⚪️⚪️のシリーズが怖く、耳を塞いで目を閉じると、いつの間にか寝てしまった。
後編に続く