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■ダンサー人生[第十五話]

あなたは、自分の中の「本当の姿」を知っていますか?そして、その本当の自分に変身する鍵を手に入れましたか?誰も知らない、本当の自分に会いたいですか?yesであれば、この話(ストーリー)をヒントに、本当の自分に会う鍵を見つけてください。■■■

 よさこいの醍醐味というか、最大の見せ場は、舞台ステージ上の演出だと思う。いわゆる有名なよさこいチームの演出はかっこよかった。その演舞を見た時の感動は、しばらく余韻が消えない程、印象的だ。「私達も感動的な演出をしたい。やりましょう!」。わたしは、あるイベントの練習場で、振付師のNさんに提案した。その頃の私は、各イベントの常連メンバーとなっていた、そして、Nさんから、舞台演出の案出しをお願いされるようになっていた。私は、よさこいチームの中での役割が与えられて嬉しかった。

 私が、よさこいを始めてから大好きになったチームが北海道にあった。残念ながら今は解散してしまったが、とても感動的な演出で私の心を捉えた。私はそのチームの虜になり、そのチームの演舞を見るために、北海道に足を運んだ。100名を超える踊り子、よさこい、ソーラン節、クラシック、ジャズを融合した、斬新な演舞曲、力強くかつエレガントな振付、新しい感覚の色使いとデザインセンスの衣装、そして何より、チームメンバーであることを誇りにしていることが容易に思い知れる踊り子の表情。これらが正に融合した、壮大な演出であった。「まるで、ミュージカルの様な演舞」とよさこい仲間が表現していたが、その通りである。私は、そのチームの演舞を見たときに、鳥肌が立った。そして、その鳥肌がなかなか引かなかった。私はこのチームの魅力に引き込まれてしまっていた。

 私は演舞構成を全面的に依頼される前から、「自分が創る演舞は、こんな感動を生むものにする。」と決めていた。そして、その日は、それからまもなく実現することになる。私は、踊り子であり、演舞演出担当となった。よさこいは、踊り子と観客がセットで主役であると思っている。私は踊り子として、そして観客の立場から両者が共に感動する演舞演出を考えなければ、と考えていた。しかし、同時に自分自身の中には、ある葛藤が芽生え始めていたのだ。

 「わたしが大好きな北海道のチーム演舞」と「わたしが大好きな現チームの演舞」

この2つの関係だった。お気に入りのチーム演舞に対する憧れは真実だが、現チームには独自のカラーがある。そもそもメンバーの年齢層も大きく異なる。演舞演出担当として、憧れのチームと同じような、演舞構成を創っても、それは、私が望まれていることではない。

 話は変わるが、私はずっと昔、中学生の頃、一人の女性に告白したことがある。「ずっと、好きでした。」と。その瞬間、なぜだか過去形の言葉を発してしまった。しかし、これは本音だったのかもしれない。後から思い返してみると、自分の中ではもう終わった恋だったのだと、そう理解した。正直気持ちは、なくなっていた。私は、恋をしていた過去の自分との決別式のようなものだと後から理解した。正直、告白されたこの女性からしてみると、ずいぶん迷惑な話である。「以前はたまらなく好きだったが、これからは、違う道で進まなければならない。さようなら、ありがとう。」といった感じだった。よさこいの演舞演出についての、葛藤とよく似ていた。私が、これから創り上げなければいけないのは、今のチームの演舞演出なのだと。改めて自覚した。

 こうして、こだわり抜いて創られた演舞は、見る人を感動させる。そして、いつまでも語り継がれる。何より踊り子自身も演舞後、何年経ってもその時の感動が呼び起こされるのだ。私の演舞構成創りはさらに本格的に進むことになる。


◆本当の自分に会うポイント◆      ① 一つの作品を手掛けること。それこそが過去から未来の自分自身と向き合う、ということである。

② 好きなこと、好きな人への告白をすることは、これからの新たな道を歩む自分自身にとっての決心となる。

第十六話に続く

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