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現実逃避

小児がんを発症してからは、


家のなかでも一人になる瞬間は、


ひとりで死後のことを思うようになった。


書籍「生き抜く力」でも述べたが、

夕方のテレビアニメを見ながら、


僕の意識は、

死後の世界の方向を向いていた。


当日、まだ10歳の私にとっては、


「死」は、この世で一番怖い事だった。


本や、テレビのなかの、設定や空想ではなく、


現実世界の、それも自分自身に
のし掛かった事実。


その事は、


とてつもなく重く、息苦しい現実だった。


その、どんな手段を取ったとしても


決して逃れられないこと


それが、

僕の身体のなかで起きてしまった事実。



結局、僕は、この現実を、現実として受け止めることができなかった。


「現実逃避」ということばを知る、ずっと前に、


僕は現実逃避を経験した。

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