フランケンシュタインが作ったモノ
少し前からNetflixで配信されていた「フランケンシュタイン対地底怪獣」と「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」を鑑賞した。
「フランケンシュタイン対地底怪獣」は初鑑賞、「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」は昔、京都のオールナイト上映で観たことがあるが、あまりに眠たい状態で観たため、大まかなストーリーぐらいしか覚えていない。
なので、2作品とも初鑑賞ということになるが、なかなか面白かった。
巨大な人間の怪物をどうするかであくせくする人間模様は、「シン・ゴジラ」と同じ図式であるが、そこは本多猪四郎監督、人々の感情や情感を丁寧に描写している。
セリフ一つを聞くだけで、フランケンシュタインの怪獣が本当にいるような気持ちにさせられるところは、流石と行ったところだ。
唐突に大ダコが現れて湖(?)に引きずり込まれたり、海底火山が噴火したりするという展開は、少々無理矢理感があったが、それを包み隠すぐらい素晴らしい。
60年代当時、北米におけるゴジラシリーズの配給権やマーチャンダイジング権を取っていた、アメリカのベネティクト・プロという会社が製作に加わっていたこともあり、特撮シーンのクオリティは凄まじいことになっている。
この2作品に出てくる怪獣たちは、基本的に10mから20m前後、ゴジラの約半分であるため、木にしろ家にしろ、6分の1や15分の1のミニチュアが使われている。
しっかり作り込めば、ミニチュア一つ一つの質感にリアリティが増してくるし、縮小するのが難しい火や水、爆発などもさらにリアルに近くなるので、怪獣たちが街や野山を駆け回るシーンやバトルシーンでは、まるで本当に、その場で怪獣たちが戦っているような迫力を感じることができるのだ。
それだけではない。特撮は物体の重さを表現するため、ハイスピードで撮ることが推奨されているが、怪獣同士の戦闘で使うと、動きが遅く、凄まじいまでにテンポが乱れることがある。
そこらへんの塩梅が難しく、実際、僕は一度失敗したことがあるのだが、フランケンシュタインの怪獣と地底怪獣バラゴンのバトルシーンは、そのスピード感やカットのテンポ感がなかなか良く、「これだ! これが僕の求めていたテンポ感だ!」と感動した。
こんなことを書くと怒られるだろうが、近年のウルトラマンですら、この域に達しているのか疑問に感じるレベルである。
怪獣と巨大ヒーローが戦う作品を作りたい学生には、是非とも参考にしてもらいたいシーンである。
戦闘シーンのみならず、マットペイントや合成、水槽に絵具を垂らして表現するキノコ雲や、人形で表現された馬や猪、人物シーンで窓の外の景色に使われているミニチュアセットに至るまで、勉強になるシーンは盛り沢山である。
CG時代である現代でも、それぞれのシーンで使われている撮影手法をしっかり学べば、制作活動の役に立つことは間違いない。
というわけで、この2作品は観て損は絶対にしない作品だ。
これからCGにしろ、ミニチュア特撮にしろ、VFXを学びたいという紳士淑女諸君は、必ず観ていただきたい。
栄えある東宝特撮映画の本気はまさに、ここにある!