東映夏の不思議映画祭り がんばれいわ!!ロボコン ウララ〜!恋する汁なしタンタンメン!!の巻
この作品、以前の記事に書いた通り、僕が鑑賞する前から「ヤバい」と評判だった。
幼少期になんとなくTVでやっているのを覚えていたぐらいだが、あのロボコンが、いつの間にそんな「ヤバい」作品になって帰ってきたのかと気になり、結果として鑑賞したわけだ。
感想をはっきり言うと、僕がYouTubeで観た「中華擬人化セレクション」で観た浦沢ワールドを、想像を絶するテンポで展開し、中華料理が喋る以外の点でも、「なんでこうなるの!?」という映像を連発し続けるという、かなりアクロバティックな作品だった。
最初僕は、事前にある程度情報を頭に入れていたせいか、「この映画、何かおかしいよ…」というより、「この現場、相当大変だったのかな…」という意味で「ヤバい」のではと感じていた。
実際、コロナの影響で撮影が延期し、緊急事態宣言解除後にクランクイン、10日でクランクアップした作品だ。普通はそんなことせず、公開延期か、「人体のサバイバル!」を単独公開、または別の放映手段に変え、この作品の制作を中止させるべきところである。
だが、この作品のプロデューサーが、そういった判断を下した責任を取るのが怖かったのか、スタッフ陣がどうしても作りたくて説得したのか、今まであまりなかった、凄まじい過密スケジュールで撮影を強行し、本来の脚本や撮影プラン通りに消化できず、足りない映像素材をヤケクソになって編集した結果、やたらと美術やキャストがまぁまぁいいだけの自主制作映画作品が完成したのでは…
と、思っていたのだが、帰ってからいろいろ調べてみると、この作品のプロデューサー、白倉伸一郎氏が、石田秀範監督に「自由にやってください」と言っていたことがわかった。
この雰囲気からして、浦沢さんとシナリオ会議をする時点で、予算と納品締め切り、(あと、突然やらねばならなくなったソーシャルディスタンス)以外、基本的にノリでやってしまってもいいやと考えていたのかもしれない。
そのおかげか、本作は平成後期の大手制作会社が作る子供向け邦画にはなんとなくあった、コンプライアンスやポリコレ精神を、ギリギリ残さざるおえないところ以外は全力でガン無視しまくった、ある意味凄まじく愉快な映画になってしまったのである。
よくよく考えれば、いくら食品サンプルとCGで作られているとはいえ、中華料理が歩き回ったり、喧嘩したり、爆発で吹っ飛んだりするなど、脚本の時点で食品メーカーが嫌がりそうな描写ばかりだし、今回のロビンちゃんの扱いに至っては、演じてくれた子役の事務所が怒り狂わないか心配になるようなことばかりやっている。(後半部分は特にヤバい。マジでヤバい)
こんなことを今の戦隊やライダーシリーズでやれば、どこかで必ずまずいことになりかねないだろう。
そんな、タブーが多い最近のTV特撮ドラマに感じていたフラストレーションをぶつけまくり、「子供は本来こういうのを面白がるんだ! 文句あっか!」と言わんばかりに無茶苦茶なことをやってのけた本作は、観ていて困惑する反面、爽快感があって素晴らしいし、キャストやスタッフが和気藹々しながら作っている姿が想像できる。
不運にも幸運にも恵まれて、結果としてはいい意味で「0点!」になった作品だと言えるかもしれない。
今後、こんなコンプライアンスやポリコレとは縁を切り、今までの子供向け映画のあり方にあえて背を向けた、反骨精神全開の実験映画みたいな子供向け映画を、シネコンで観ることはほとんどないだろう。
しかし、せっかくロボコンのスーツを作ったのだから、様々なお手伝いのやり方を教えてくれるハウツー系YouTuberのつもりが、やり過ぎて迷惑系に変貌する(もちろん仕込みであることは前提だが…)ロボットYouTuberとして活躍する姿を観てみたいところだ。
これなら、ロボコンというコンテンツにも、「がんばれいわ!!」という言葉にもマッチするし、それこそ、何本かに一回ぐらいは、中華料理とゲーム実況したり、ロビンちゃんがおもちゃの変身アイテムでライダーや戦隊に変身し、セクハラしたロボコンをしばき倒すという、本作のように意欲的な動画を作ることも可能だろう。
そうして人気が出れば、またシネコンのスクリーンでロボコンが活躍する姿を拝むことができるかもしれない。
そう願いたくなるぐらい、本作はいろんな意味でインパクト絶大だが、久しぶりの劇場の大画面で、なかなか面白い経験をさせてもらった。
今後のロボコンの活躍には、是非とも期待したい。
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