【悲報!】サボテンが枯れる部屋
私は北海道の某所に住んでいるのだが、高校を卒業し専門学校に通う為、札幌に部屋を借りることになった。
部屋を探す
なんのかんの色々あって、兄も同じ部屋に住むことになり(注:別に私のお目付け役という訳ではない)二人暮らし用の部屋を家族そろって不動産屋さんに見学させてもらった。
私はよくわからないのだが不動産屋さんは一番最初に一番立派な部屋を見せてくれるのだろうか?最初の部屋はとても立派なマンションだった!
私達家族は鼻息荒く部屋の隅々を見学、広さも二人暮らしに申し分なく壁も厚く立地も最高。我々は言葉を交わさずに目配せをしあった。『ここに…しよう…。』
その後も他の部屋を見て回ったが家族ともども心ここにあらずで特に記憶にない。とにかく最初の所だ!最高だ!両親も札幌周辺に来た時にホテル替わりに利用する気満々で誰も止めるものはいなかった。
不動産屋さんも正直引くぐらいの速度で部屋が決まった。
実は私たちが見学した部屋はそのマンションの高層の部屋で、実際私たちが住むことになるのは1階だという。日当たりが死ぬほど悪いことを不動産屋さんは何度も注意していたが、私も兄も日光にまるで興味がなく、まったくもって問題がなかった。そのことについて両親も熟知してるので話が早い。
新しい家具などは私も兄も面倒だったため両親に丸投げしてしまった。両親との家具においての趣味の違いを私は後々ものすごく後悔するのだが、それはまた別のお話。
サボテンとの出会い
さて、話が前後してしまって誠に申し訳ないのだが私のサボテンについて話をせねばなるまい、なんせタイトルにあるのだから仕方がない。
あれは中学だか高校の頃だ。私は当時よく土産物店などに売っている小さなサボテンに心奪われていた。特に何の気なしに突然心を奪われてしまったのだ。奪われてしまったと書いてあるが私は元々非常に物欲が低く「あのちっちゃいサボテンほしーなー」くらいのものである。
ある日、一緒に住んでいる祖父が旅行に行くのでお土産は何が良いか?と聞いてきた。普段の物欲の低い私なら「なんでもいいわい、そんなもん。なんか旨い物」というレベルなのだが、その時は「サボテン!サボテンを買ってきてよ!おじーちゃん!!」と普段のうらぶれぶりからは想像もできない程、瞳をキラキラを輝かせて祖父に詰め寄った。これにはジーちゃんもニッコリだろう、そうだろう。
祖父の旅行中もサボテンの事で頭がいっぱいだ。サボテンにもいろんな種類がある。一体どんな子が私の元へやってくるのか期待に胸を膨らませながら数日後…。祖父帰宅。
私はサボテンの出現に待機した。
「ほらサボテンだよ」祖父が渡してくれる。
うん…サボテンだ…。これはあれだ…植木屋さんとかで売ってる普通のサボテンだわ。
…やっちまった。この可能性を考えてなかった愚かな自分に腹が立つような立たないような…。
すっくとそびえ立つ威風堂々のサボテンの姿…私は硬直しそうな口を何とか動かし「ジーチャンアリガトー」と言った。たぶん言った。言ったよね?過去の自分さん?
ひとまずサボテンはリビングに飾る事にした。そのサボテンを見ているとファイナルファンタジーシリーズに出てくるモンスター「サボテンダー」を思い出すので黒マジックで顔を描いた。顔がついてると不思議なもので愛着がわく、せっかくなので命名をした「さぼる」と。…ひどい名だ。
サボテンなのであまりお世話の必要がない。しかしなんせ顔もついてる名前もついてるで何となく気になる存在であるのは家族共通の認識として確かだった。
私はサボテンはあまり成長しないものだと思っていた。なんとなくそんなイメージを持っていたのだが「さぼる」は違った。名は体を現さなかった。そう彼は著しく成長したのだ!なんか一部分だけ!
頭の(便宜上の仮称)一部だけが何故かみょーんと伸びてしまった!なんだお前は!!誰だよ!
さらなる存在感を放つ「さぼる」。
まぁサボテンの「さぼる」と私の出会いはこんなもんだ。嘘っぽい話だが基本的に嘘は書いていない。
話しは戻り
さて話は私の新居に戻る。私は住み慣れた実家から札幌の新しい部屋に移り住んだのだが、その時なぜか「さぼる」を連れてきてしまった。
どういう経緯でわざわざリビングに鎮座していたサボテンを持っていったのか記憶に定かではない。もし自分で持っていくことを言い出したのなら過去の自分に問いたい「なんで??」と。よくあんなトゲトゲした物を不慣れな引っ越しで同行させようと思ったもんだ、アホか。リビングに置いとけ!リビングに!!
…そうしたら、あんな悲劇も起きなかったのに…(聡い読者の皆様ならここでタイトルを思い出してお察しである)
深刻な日照不足
私たちの部屋は不動産が何度も警告した通り深刻な日照問題を抱えていた。基本的に日光はまったく部屋に入って来なかったのだ。ある季節の(いつだかもう覚えていない)ほんのひととき50センチ四方くらいの日光が申し訳程度に差すくらいだった。日照時間ゼロがデフォルトの状態だ。
しかし私も兄もまったく問題なく非常に快適に過ごしていた。騒がしい札幌とは思えないほど外の音も隣の部屋の物音もまったく聞こえないのだ。
引っ越し当日家族そろって管理人さんに挨拶に行き粗品を渡したのが功を奏したのか管理さんにもとても親切にされた。私も兄も外面が良かったので会うたびにハキハキと挨拶をしていたので、おそらく品行方正な若者に見えた事だろう。
私と兄をよく知る人物から見れば「貴様ら何者だ!さてはやつらの皮をはいで着ている宇宙人だな!!?」と思う事だろう。我々兄弟はそういう所だけちゃっかりしている。さすがやで!
私たちはあまりに快適に愉快に過ごしていたため気づかなかった…「さぼる」がいつの間にか腐っていたことに…
ごめんなさい、嘘は書かないと書いてあったがタイトルに嘘があった。サボテンは枯れたのではない、腐ってしまっていたのだ!!!!!!!ナンダッテー!?
日光に全くあたらなかった事とキッチンの流し周りに置いておいたのがさらに悪かった。「さぼる」はいつの間にか変色し、ぐねぐねになってしまっていた。「さぼる」という名にふさわしい姿だ。やはり名は体を表すのだろう。
ごめんな「さぼる」。リビングにそのまま置いておいたらこんな事にはならず、もしかしたら今もこの家にいたかもしれないのにな。遠い見知らぬ土地で果てる事になるとは…。いや、そもそも遠い見知らぬ土地からやってきたのだ彼は。私があの時、可愛いミニサボテンに心奪われジーちゃんにあんなお願いしなければ「さぼる」は真に品行方正な人に買われ今も元気で…。
まあいいや
サボテンの話しはここまでにしよう。腐っちまったもんは仕方ない。命名した時に決まった運命だ。
あの部屋はとても快適だった。私が漫画の描き過ぎで(あ、漫画家でーす)体調を崩して実家にあえなく帰還する事にならなければ、ずっと住んでいたいと思っていた。今でもありありと部屋の様子を思い出せる。完全に第二の我が家だ。あの部屋にもう一度戻りたいという郷愁の念のようなものも感じる。
沢山漫画を描いた。漫画を描いて兄とゲームで遊んだ。そんな思い出がいっぱいだ。…今とあんま変わんねーな。
いや、だからこそだろう。あの部屋は一度、完全に我が家だったのだ。飛び地の故郷だ。私の心はまだあの場所に少しだけ残っている気がする。
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