作家に敬称をつけるか問題
呼称といえば、エッセイを書くときなどに、作家に対して、呼び捨てにするか、さんをつけるかも、悩ましいところなのです。
芥川龍之介は「芥川さん」と書くと、違和感あります。
でも、開高健は、私のなかで「開高さん」なんですよね……。
あと、カート・ヴォネガットも、いつも「ヴォネガットさん」と言うので、呼び捨てにしたくない感じがあります。
それから、面識のある作家も、呼び捨てにしづらいのです。
大学の授業でも「新見南吉の『ごんぎつね』が……で、令丈さんの『若おかみ』シリーズが……」とか言ってしまったりして、呼称が統一されていないのはどうなのかという思いがなきにしもあらずです。
ちょうど読んでいた『学術書を読む』という本のまえがきに、以下のような文章がありました。
本文で紹介する人々のお名前については、存命の方については、原則すべて「さん」付けで記し、物故者については敬称を省き、存命かどうかが不明な方々については「氏」をつけました。(中略)単に作法の問題ではなく、学術書を読む際に、著者やその研究分野を絶対視せずに、しかも敬意を払いながら身近なものとして読むということも、大切な心構えだと思うからです。
鈴木哲也『学術書を読む』より
これは「京都大学の特にフィールド科学分野の慣習」にならっている、らしいです。
作家のエッセイなのだから、研究者の論文のように厳密にする必要はないと思うものの、自分なりのルールは決めておいたほうがいいかもしれません。
ちなみに、この『学術書を読む』という本は「大学生がどのように『専門外の本』を読むのか」という選書の手引きとしての実用的な面がありつつ、現在の「本」や「出版」や「知」をめぐる社会状況に対する考察が高い視座で書かれていて、とても面白かったです。
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