行きつけのbar
僕はお酒が飲めない。
だから憧れがある。
嫌なこと
困ったこと
悲しいこと
入り口に入った瞬間の僕の表情で判断してくれるbarのマスター。
「いらっしゃい」
無表情のマスターの声。
カウンターに座ると勝手に出てくるお酒。
お酒にとんでもなく弱い僕の希望する、薄めのカルアミルク。
しばらくは無言の時間。
ちょうど良いタイミングでのマスターからの
「今日はどうしましたか」
もちろんマスターは何があったかすべてお見通し。
マスターに愚痴を聞いてもらいまたしばらく無言の時間。するとよくドラマで見る
「あちらのお客様からです」
ふと目をやると3つ離れたカウンター席には綺麗な女性が。
キャミソールに髪は胸ぐらいまであり、色白の大きなピアスをつけ、見たことのあるブランドのバックを持つお姉さん。
「お兄さんタイプだわ」
僕は聞こえないフリをして、軽く会釈をし「いただきます」と飲み干しお礼を言おうと目を横にやる。
すると2つ横のカウンター席からお姉さんの声が聞こえる。
あれ移動してる?
「お兄さんなんかあったの」
僕は初対面の女性にベラベラとしゃべった。
仕事の愚痴、上司の不満、過去の恋愛話。
つまらなかっただろう。
お姉さんはうんうんと笑顔で聞いてくれた。
すでに丑三つ時。
「今日は帰るわね」
「あっ!ちょっとま、、、」
それ以上の言葉は勇気がでなかった。
僕は薄めのカルアミルクをさらにごくごくと飲んだ。
目が覚めるとそこは外だった。
強烈な臭いがする。
どうやら僕はゴミ袋をベットに寝ていたようだ。
頭が猛烈に痛い。
やばい仕事に遅刻だ!僕は走った。
仕事が終わり今日も同じbarに向かう。
「いらっしゃい」
マスターの声が笑顔だ。
ほんとはすぐに聞きたかったが、30分ほどしてマスターに聞いた。
「今日はあの女性来ないんですか?」
さぁどうでしょうね。マスターはグラスを拭きながら言った。
終電の時間も迫り僕は帰った。
翌日もbarに行った。
しかしあの女性はいない。
いつものカウンターに座る。
「そういえばあの後女性きましたよ。」
僕は思わず立ち上がった。
その勢いでほぼ牛乳のカルアミルクが床にこぼれる。
「す、すみません!何か言ってました?」
「あのお兄さんは今日はいないのねって。ハッハッハッ」
「今日は来ますかね?」
「さぁ、、、どうでしょうねぇ」
気付けば時刻は終電の時間。
僕は追加で注文した。今日はまだいよう。
その時だ!扉が開きあのお姉さんが来た。
ニッコリと笑う。
僕は頭が牛乳のように真っ白になった。
「あら久しぶりね。て言っても二日ぶり?」
僕は言った。
「お姉さん!!す、好きです!!」
お姉さんは笑顔でこちらに近付き、今日は僕のすぐ横の席に座った。
僕は言った。
マスター!お姉さんに一杯。
後さっきのカルアミルク、濃いめでお願いします。
「無理しないでよ。夜は長いんだから」
お姉さんはニッコリ微笑んだ。