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「ねじの秘密」 六角穴付ボルトのローレット

「ねじの秘密」の今回のテーマは、キャップボルトの「頭部のローレット加工」です。ファスナートラブルを避けるために役立つ(細かすぎるかもしれない(笑))ポイントをお伝えします。


六角穴付ボルトの“ローレット加工”って何?

六角穴付ボルト(キャップボルト)のローレット、と言ってもピンとこない方が多いと思います。もう一度冒頭のテーマ画像をご覧ください。

キャップボルト頭部ローレット
上:無し 下:有り

写真上の商品はボルトの頭部の「ローレット無し」、下側の商品が「ローレット有り」です。細かいので違いに気付かなかった方も多いと思います。

では、自分が使うパーツとして入手する場合はどうですか?皆さんは気にならないでしょうか?私なら必要数をどちらかに統一して購入しようと思います。やっぱり外観がそろっていたほうがカッコいいですよね(あくまで個人の感想です(笑))。

では製品のパーツのねじに、ローレットの有りと無しが混在していたらどうですか? 見た目がいまいち、な製品を皆さんはあえて購入されるでしょうか? 「全然気にしない」「ちょっとカッコ悪いけど、別に問題ないでしょ!」と言ってくださるお客様ばかりならよいのですが…

恐らくメーカーサイドとしては、商品を魅力的にみせて消費者にネガティブな印象を残さないために、製品を流通させる前にボルト外観の統一を図るでしょう。

ローレット「有り」と「無し」はなぜ混在?

そもそも、なぜローレット「有り」とローレット「無し」のキャップボルトが存在するのでしょうか?実は六角穴付ボルト類の「規格」が関係しています。

キャップボルトの規格では、「頭部ローレット加工はあってもなくても良い」となっています。つまりキャップメーカーが、製品の頭部ローレットの「有り」「無し」を自由に決めることができます。

ねじメーカーの立場に立って考えればローレットの有無はどちらでも、規格を満たしている安心・安全な問題のないファスナーです。

閑話休題。様々なメーカーのファスナーを扱う私たちは、日本製は頭部ローレット加工有りが標準で、海外製は頭部ローレット加工無しが多い傾向にあると観察しています。

さて、ねじメーカーからの直送であれば、ローレットの有無を含め外観は統一されていると思われます。しかしながら、おなじ規格の製品を複数の業者から購入する場合にはローレット「有り」と「無し」が混在している可能性があります。商社や問屋のような卸業者や、ホームセンターなどの小売業者を通じて入手している場合も同様です。流通段階においては、規格に適合している確かな品であれば、「ローレット有り」と「ローレット無し」を厳密に分けて納品することは「絶対必要!」ではないのです。

問題となるのは、完成品メーカー企業様の生産ラインに、外観の異なるキャップボルトが混在した形で供給されてしまったときです。純粋な見た目の違いだけで、キャップボルトの機能や安全性には何も問題はないのですが、メーカーサイドとしては外観の統一を図ることでしょう。

量産を始める前ならボルトの追加購入と選別だけで済むでしょうが、不幸にもすでに量産が始まっているなら、その対策コストは膨大なものになります。

“仕様”で仕上げを指定

こんな事態を避けるためのアドバイスは、「発注時に“仕様の指定”をする」ことです。キャップボルト発注の際に「頭部ローレット加工有り」、あるいは「ローレット無し」と、「仕様」を供給業者へ指定してみてください。

大抵は「ローレット」で分かっていただけると思います。ただ、納品されたものが「イメージしていたものと違う」という可能性もあります。それで、サンプルを用意するなどしてお互いのイメージをすり合わせれば、トラブルを避けることができます。

ファスナー供給者の側も、ローレットの有無が外観上の問題となりそうか事前に一言確認しておくなら、気持ちよく取引を行うことができるに違いありません。

ブログ「ねじの秘密」が皆さんの「ねじ」トラブル解消のお役に立てられるのなら嬉しいです。

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