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「ねじの豆知識」 ナットの基礎知識5 「六角ナット」製造技術・機械の歴史

今では精度の高い六角ナットを安価で大量に入手できます。それを可能にしたナット製造の歴史を今回は振り返ってみます。

ナットの基礎知識
Vol.1 ナットとは? 働き・使い方
Vol.2 「六角ナット」の規格
Vol.3 様々な機能を持つナット
Vol.4 「六角ナット」の作り方
Vol.5 「六角ナット」製造技術・機械の歴史


六角ナット量産の黎明期

ねじの切削加工による量産が可能になったのは、イギリスの機械製造者ヘンリー・モーズレイと、弟子のジョセフ・ウィットウォース(1841年に初のねじ規格「ウィットねじ」の考案者)が全金属性のねじ切り旋盤を製作・改良した1798年以降と言われています。これによってねじを高精度に作成できるようになりました。その後1845年にタレット旋盤が、1850年に半自動単軸ねじ切り盤が出現します。こうして精密ねじの生産技術は、主に英国や米国で発達し始めました。

20世紀初頭にはボルトの圧造方法は普及していましたが、ナットの圧造方法の確立と普及は少し遅れることになります。

1925年、米国のウォーターベリィファレル社が、冷間圧造ナット製造機「コールドナットホーマ」一号機を世に送り出します。しかしながら1945年頃までほとんど普及しませんでした。

第二次世界大戦の物資不足の中、米国ではナットを増産する必要を満たすため、ウォーターベリィファレル社のコールドナットホーマの使用方法が研究されます。そして、1945年に米国ナショナルマシナリー社が先鋭的なコールドナットホーマを開発・発表します。同じころ、欧州でもスイスのハテバー社が2台1組でナットを製造するナットホーマを世に送り出しました。


国内の六角ナット量産への歩み

夜明け前

日本国内においては、昭和初期(1925年頃)まで、ナット製造用の機械として注目すべきものはなかったようです。海外からの機械の導入されることはありましたが、材料や工具類が十分でなかったため、本格的に普及することはありませんでした。

自動化の胎動

昭和5~10年(1930年代前半)頃に、簡便な装置でしたが手動式のナット製造専用の機械(切削加工)が開発され、大いに普及します。そして昭和10年以降に、現在の「切削ナット自動盤」の原型とも言える「全自動ナット切削機械」(当時は「自動ナット盤」と呼ばれた)が開発されます。この「自動ナット盤」は、手動式のナット製造と急速に入れ替わっていきます。

産声

圧造ナットの生産プロジェクトは、日本国内では1950年1月に始まりました。この年の8月に圧造方式は完成しましたが、材料問題や技術的な未熟さからコストの問題が表面化して、残念ながら2年で稼働が中止されました。

成長

本格的な圧造による量産は、神武景気(1954年12月~1957年6月)真っ只中の1956年12月、ハデバー社の方式に似た2台一組の機械による圧造ナット(ウィットねじW1/4)の製造から始まります。このサイズが選ばれたのは、入手できた冷間圧造用の材料がφ13しかなかったためのようです。

コイル状に巻かれた冷間圧造用の材料

発展

そして1960年、国内ねじ機械メーカーによってナットホーマが完成されます。ここに至り、国内においてもナットの主役が「切削ナット(磨きナット)」から「冷間圧造ナット」へ移りました。さらに、1966年末に六角線材を使う3ステーション式のナットホーマが開発され、普及していきました。

また、1960年代から1970年代の初めまでに、トランスファー機構を備えた欧米の機械メーカーの熱間ナットホーマが国内に導入されます。その後、国内メーカーによっても熱間ナットホーマが開発されていきます。

ねじ立て技術の進展

ねじ立てにおいても技術革新は進んでいます。タップによる切削加工だけでなく、塑性変形によってねじ立てを行う「転造タップ(盛上タップとも呼ばれます)」による加工が少しずつ増えています。

転造タップによるねじ加工の着想は意外に古く、1938年にドイツで公開されました。日本では昭和30年代から一部で使われてきましたが、大きく普及する動きは見られませんでした。しかし、ブランク下穴径の管理、タップ形状や材質及び表面処理、また潤滑剤等に関する近年の技術の進歩により、転造タップ(盛上げタップとも呼ばれます)によるねじ加工がされ注目されつつあります。

現在地

現在でも、自動制御によるナットホーマや複雑な形状のパーツホーマなど、ナット生産の技術は目覚ましい進歩を遂げています。例えば、現在では材料径が約φ50の冷間圧造も可能になっています。


5回にわたる『「ねじの豆知識」ナットの基礎知識』シリーズはいかがでしたか?ここまでお付き合いいただけた皆様に心から感謝申し上げます。楽しんでいただけたなら幸いです。

また次のブログでお会いできることを楽しみにしています。


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