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「この人から学びたい」上司の存在

10月8日の日経新聞で、「〈YOUTH FINANCE〉(3)「背中見て学べ」もう古い 20代で外資金融辞め転職 給料より自己成長が決め手」というタイトルの記事が掲載されました。外資金融といえば人気就職先の花形のようなイメージがありますが、外資金融を辞めて日系金融に転職した人材の例を紹介した内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

就活生の憧れの一つの外資系金融機関。中途採用が中心だが、新卒で入る人も一握りいる。新卒で入社し、日系の証券会社に転職した20代の決め手は何だったのか。

「このままだと思い描く成長ができない」。木村千尋(仮称)さんは転職を決めた理由をこう話す。

新卒で入った会社は、東大や早慶、海外大を中心に毎年10人前後が採用されていた。どの社員も英語が堪能で「パフォーマンスが低い人はいない」。平日は午前8時~午後7時まで働き、日系企業で働く同世代よりも高い給与を得ていた。

転職へと心が傾いたのは、中途採用の社員が大半を占める職場環境が一因だった。少ない人数で高い成果を上げる外資系の金融機関で、しかも木村さんは職場で初の新卒社員。上司が何をどう教えるのかも不慣れな印象だった。「上司の背中を見て学べという雰囲気で、結局よくわからなかった」

人材紹介のエンワールド・ジャパン(東京・中央)の調査では職場に不満と答えた人のうち、その理由に「人間関係がよくない」と回答した人は外資系企業で35%、日系企業で28%だった。外資は華やかなイメージがある一方で、ミスマッチも生じやすい。

実は最近の若者はベンチャーよりも大企業志向が強まっている。博報堂生活総合研究所「若者調査」によると、2024年に「ベンチャービジネスよりも大企業志向だ」と回答した19~22歳は63%と、1994年の39%から大幅に高まった。両親が就職氷河期だった世代のため、安定を求めやすくなったとの見方がある。

一方で転職にためらいもない。リクルートワークス研究所が2019~21年に就職した人に「いつまでその会社で働きたいか」を聞いたところ「2、3年」の回答が28%と最多だった。7割強が10年以下と答え「定年・引退まで働き続けたい」のは2割どまりだった。

外資金融を辞めて日系の証券会社に移った木村さんは朝5時半に起きてマーケットの状況を確認し、夜中に海外で相場が動けば対応が必要になるなど、勤務時間は長くなった。何をするにも稟議(りんぎ)が必要で、出張手当は物価高に見合わない金額だ。

「それでも今の方が楽しい」と話すのは「この人から学びたい」と思える上司を見つけたからだ。金融機関を渡り歩き、今は後輩を育てる役割を担っている。1日に何百万円の損益を出すリスクを背負う仕事にもやりがいを感じている。

20代の職業意識の経年変化を追ったデータがある。パーソル総合研究所が20代に仕事を選ぶ上で重視することを聞いたところ「いろいろな知識やスキルを得られること」の回答が23年に22%となり、5年間で約8ポイント上がった。

木村さんの仕事の打ち上げは、前職では六本木の高級ホテル、今は町中華だ。それでも「今の上司の下で勉強できると思ったから転職した」。若者を突き動かすのはお金だけでなく、向上心という情熱なのかもしれない。

同記事からは、大きく2つのことを考えました。ひとつは、指導・育成の仕組み・取り組みは、必要で重要だということです。

外資系の企業は一般的に、日系企業ほどには新卒社員の一括採用・受け入れを日常的に行っていないところが多いと言われます。同記事の木村(仮称)さんも、そのことはある程度予想したうえで入社したはずだと思います。

また、同社のジョブに必要となる思考や行動特性を持ち合わせていて、活躍する見込みの高い感じの人材ではないかと、同記事からは見受けられます。その木村さんでさえ、自己成長できている実感がもてず、展望を描けなかったということだと想像します。

初の新卒社員受け入れということで、受け入れ側がどのようにかかわるか、指導のあり方をどうすればいいかなど、不慣れな面もあったことと想像します。そのうえで、組織として受け入れると決めた以上は、相応の受け入れ計画を立てて実行するべきなのだと、改めて感じます。

2つ目は、「この人から学びたい」と思える人が組織の中にいるのは、大切だということです。

管理職になりたがる人が年々減っているということが、各所で言われています。私も普段仕事で関わる企業の経営者や管理職者から、どうやったら若手人材が管理職を目指すようになるのだろうかと質問を受けることがあります。

そのような質問を受けたときに、私が真っ先に答えることにしている内容はシンプルです。それは、「皆さんのような管理職が張り切ってパフォーマンスの高い仕事をしていて、若手にとって「そういう人になりたい」と思える人になることです」です。

管理職者の様子が魅力的に見えない、管理職者自身が「割に合わない」という愚痴をはいているなどだと、若手人材がそうなりたいと思うはずもありません。それどころか、自分が勤続したあかつきに待ち受けている未来がそれだとすると、今のうちにやめて別の道を探したほうがよい、とさえ思う動機として十分です。

「今の会社で定年・引退まで働き続けたいのは2割どまり」とありますが、逆の見方をすれば、「終身雇用を望んでいる人材が全体の2割もいる」とも言えます。こうした人材を惹きつけ続けるには、「この人から学びたい」と思える人の存在が欠かせません。

10月7日の関連記事「仕事は生きがい、25歳ファンドマネージャーが映す若者像 YOUTH FINANCE④」には、次の内容の紹介がありました。(一部抜粋)

「仕事は生きがいになると思う」。こう考える19〜22歳は実は30年前より増えている。博報堂生活総合研究所「若者調査」によると、24年に57.3%と、微増だが約3ポイントあがった。

この5年ほどでバリバリ働きたいと考える若者が増えたとうかがえるデータもある。パーソル総合研究所が仕事を選ぶ上で重視することを20代に聞いた調査では「休みが取れる・取りやすい」「仕事とプライベートのバランスがとれる」は19年に4割超だったが、23年に3割台になった。

これらはひとつの調査結果にすぎず、どこまで網羅的に言い当てているかはわかりません。そのうえで、若手人材の中に、待遇志向よりも目的志向のほうが色濃い人材も一定数存在していそうだ、ということは言えるのかもしれません。

・組織として受け入れる以上は、相応の受け入れ体制をつくる
・目指したいと思える人が活躍できている
・入社を希望する側と受け入れる側とで、求めるものと提供できる環境とのマッチングを確認する

組織活動の原理原則は、時代に関係なく普遍なことも多いのだと思います。

<まとめ>
「この人から学びたい」と思える人がいることは大切。

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