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星空観光を考える

10月26日の日経新聞で、「星空観光、輝き増す 環境省の協議会加入最多 香川・さぬき市、廃校に望遠鏡博物館」というタイトルの記事が掲載されました。星空を観光に活用するというテーマで、事例を交えながら紹介している内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

美しい星空を観光誘客に生かす自治体が増えている。「光害」の抑制や大気保全に取り組む協議会には、2割超の自治体が参加する。星空は地域の有力な観光資源であり、訪日客などの大都市集中を緩和する効果も期待できる。

環境省は大気保全活動の普及や自然を生かした地域振興に向けて、1988年に現在の「星空の街・あおぞらの街」全国協議会を設立した。加入自治体数は市町村合併で一時減少したが、現在は379と過去最多だ。

加入率が5割の香川県は、晴天が多いうえに上空の気流が安定している。星の光の揺らぎが少なく、望遠鏡で拡大しても星が鮮明に見えるため観測に適した場所が多いという。同様の環境にある岡山県も2位だった。

高松市の中心部から車でおよそ1時間。徳島県との県境にあるさぬき市多和地区に天体望遠鏡博物館がある。全国の大学や公共天文台、個人などから不要になった天体望遠鏡を集めた施設だ。

同館の村山昇作代表理事は長年の天文ファン。公共天文台の廃止などで行き場を失う望遠鏡の多さを知って博物館の整備を思い立つ。廃校になった小学校の活用策を検討していたさぬき市と出合い、2016年に博物館と産直市場で構成する複合施設を開いた。所蔵する望遠鏡は500台以上。観測会も開いており、週末だけの開館だが年間2000人以上が訪れる。

岡山県井原市は美しい星空を地域おこしの中心に据える。同市の美星町地区(旧美星町)は1989年に全国で初めて「光害防止条例」を制定。星空を見えにくくする上方への光の漏れをなくしたLED街灯も導入している。2021年には米国のNPO法人から美しい星空の保護・保存に取り組む地域として「星空保護区」に認定された。

9月には同じく星空保護区の福井県大野市、東京都神津島村と協議会も立ち上げた。今後は連携して星空を軸にした誘客促進などを進める。大舌勲市長は「星空と特産のデニムを組み合わせた周遊プランなども打ち出して、地域を元気にしていく」と話す。

星空を生かした観光振興を進める自治体の代表例が長野県阿智村だ。キャッチフレーズは「日本一の星空の村」。SNSを集中的に活用した若者向けのプロモーションもあって、夜の観光だけで年間10万人以上を集める。阿智昼神観光局の松下仁氏は「星だけでなく様々なエンターテインメントも用意し、どんな天候でも来訪者の思い出に残るように工夫していきたい」と話す。

星空観光に詳しい奈良県立大学の尾久土正己学長は「昼と夜の観光を組み合わせれば波及効果は大きい。季節による観光客のバラツキを減らす効果も期待できる」と指摘。「星は毎日きれいに見えるわけではない。地域に2泊以上滞在してもらえるように、他の観光資源を磨くことも重要だ」としている。

「日本一の星空の村」をキャッチフレーズにした長野県阿智村のことは聞いたことがありましたが、「星空の街・あおぞらの街」全国協議会の存在は初めて知りました。同協議会への加入自治体数の半分が香川県で、同県が星空観測に適した環境だということも新たな気づきでした。

上記記事の内容は、2つの観点から興味を持ちました。ひとつは、既にある観光資源を有効活用している点です。

先日の投稿「訪日客消費を考える」で、各地の観光資源を活かして娯楽などのサービス費への支出を喚起することが課題ではないかと考えました。上記記事の例は、娯楽などのサービス費への支出の喚起につながる好例だと感じます。

しかも、星空というのは、他の地域には模倣がしにくい資源です。天体望遠鏡など多少の投資は必要ですが、大規模で新たな投資はあまり必要としないと思われます。加えて、同記事の事例のように廃校などの既存の遊休資産をうまく活用すれば、初期投資を抑えることができます。

星空を、美しい自然ということに加えて、観光資源という視点からとらえると、新たな価値が出てきます。廃校となった校舎も、視点を変えれば活用できる遊休資産かもしれません。視点を変えて新たな付加価値を生み出すという取り組みは、星空や観光に限らず、他のことにも転用できると思います。

もうひとつは、観光客分散化の可能性です。

訪日客の増加を受けて、一部の観光地が過密になることの弊害が指摘されています。この先受け入れインフラが整っていけばいずれ緩和されるのかもしれませんが、少なくとも現時点ではいろいろな問題を抱えたままです。その要因のひとつが、日本人の国内旅行者と外国人の訪日旅行者が、同じ観光目的地目当てで重なることです。

新たな観光資源が開拓されれば、国内旅行者の一部で優先したい目的地が変わり、目的地が分散するかもしれません。星空観光やそれに関連する新たな観光資源の開拓は、その一助となる可能性があります。

このことは、訪日観光客にも当てはまるかもしれません。

外国の星空事情について私はわかっておらず、私が国外旅行をしたことのある範囲内での経験になりますが、国やエリアによっては排気ガス等の問題で星空などとても望めない環境のところもあります。

そうした国やエリアでも、国内で田舎に行けば星空は見えると思いますので、日本に来ている間に星空を見に行きたいニーズがどれぐらいあるのかは不明です。それでも、ある程度の需要は掘り起こせるかもしれません。

いずれにしても、既存の資源を、付加価値を生み出す資産として明確に認識し活用していくことは、事業領域を問わず様々な企業活動において取り組んでいきたい視点だと思います。

<まとめ>
既存の資源を、付加価値を生み出す資産として明確に認識し活用する。

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