入場料高額化の例を考える
11月3日の日経新聞で、「夢の国に広がる「格差」 米ディズニーが富裕層シフト 入場料2倍、優先パス7万円」というタイトルの記事が掲載されました。かつては庶民的なレジャーランドだったディズニーリゾートが、手の届きにくい高額サービスになりつつあるという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
先日、東京ディズニーリゾートに時々行く私の知人が、チケット代や関連費用が上がり続けているのを嘆いていました。しかし、同記事を参考にすると、それは日本に限らず世界的な傾向のようです。
東京ディズニーリゾートでの、1デーパスポート(大人)料金は、1983年の開業以来次のように変わっていきました。バブル経済崩壊後のデフレ下でも物価上昇率や賃金上昇率を大きく上回って上がり続けています。(もっと頻繁に価格改定されていますが、一部のみ抜粋)
1983年 3,900円
1989年 4,400円
1997年 5,200円
2014年 6,400円
2024年 7,900~10,900円
2024年現在は、7,900~10,900円の価格帯で6パターンの価格変動制になっています。この11月の料金を調べてみると、最も安い平日でも9,400円となっているため、事実上9,400円以上と想定できるのかもしれません。
かつて私が学生だった頃は、園内の買い物などでそれほどのぜいたくをしなければ、1万円もあれば1日遊んで帰れるレジャーランドでした。今ではとても無理です。
私は最近遠ざかっていますが、同記事やチケット代の情報を参考にすると、大人で1人あたり1日20,000円弱程度、4人家族なら6万円といったところでしょうか。約1年半前の投稿で東京ディズニーリゾートについて取り上げた際、「家族4人で飲食も含めると、1日で4万円以上の出費。昔のようにフラッとは遊びづらい」という声があることについて触れましたが、その後も必要な出費は増え続けていると言えそうです。
同記事で海外旅行と競合するほどになったとされる米国ほどではありませんが、それでも高額になっています。本家の米国の動向を見る限り、この流れは今後も続くのだと思われます。
この戦略は果たして正しいのでしょうか。
だれに何を提供するのか。
この問いへの決まった解答はありません。上位20%の収入の世帯を対象にするのもありですし、逆に上位80%を対象にするのもありです。絶対的なサービスコンテンツと一定の固定ファンがいることもあり、少なくとも短期的な収益性の観点では、現在の戦略のほうが有利だと想定できそうです。
また、もともとパークは混雑して来場者の不満要因にもなりかねない一面がありました。来場者を抑えて1人当たりの単価をより高くし、サービスの満足度を高めるという方向性にもうなずけるものがあります。
長期的な影響として想定できることのひとつは、同記事も指摘しているように富裕層を中心に顧客が偏っていくことです。
以前は、関東圏に住んでいる私の同世代で、東京ディズニーリゾートに一度も行ったことがないという人は、周囲でほとんどいませんでした。一度は体験するべき娯楽だという認識があったからです。
今後は、一度も行ったことがないという層が増えていきそうです。みんなに手の届く全世界市民にとってのパーク、という位置づけは、間違いなく変わっていきそうです。
もうひとつは、上記にも関連しますが、パーク事業と映画、放送、動画配信など他事業との分離です。
以前は、ディズニーを楽しむ人にとって、パークという体験と紐づいての映画や動画、といったイメージもありました。今後は、パークを一度も見たことがなく、ディズニーと言えば映画だけの世界、という認知の層も増えていきそうです。この新しい認知で、今後も夢の国は新たな進化を続けていくのかもしれません。
ディズニーといえば、マーケティングの領域でもお手本とされることの多いブランドです。自身や自社の事業について考えるうえでも、今後の推移は参考になりそうです。
<まとめ>
だれに何を提供するのかを、あらためて問う。
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