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日本人の食生活から考えてみた

2月5日の日経新聞で「糖尿病、過食の新興国蝕む アジアなど45年5億人 成長で影、コロナ拍車」というタイトルの記事が掲載されました。経済成長に伴って過食で肥満になる人が増えたこと、コロナ禍での都市封鎖や外出制限で運動量が減ったことなどが要因と説明しています。

同記事の一部を抜粋してみます。

世界保健機関(WHO)によると、糖尿病は直接死因としては9位だが、高血糖が続くと血管が傷つき、死因1位の虚血性心疾患などの合併症を起こすリスクが高まる。投薬など継続した治療が必要で医療費負担が重くなるほか、日常生活に制約が出て社会的な損失にもつながる。

糖尿病は特に新興国を蝕(むしば)む。国際糖尿病連合の推計では、患者数はアジア・アフリカで45年に5億6000万人と、21年比1.5倍になる。南アジアは1.7倍の2億2000万人に、サハラ砂漠以南のアフリカは2.3倍の5500万人に急増する。同期間に1.1~1.2倍に抑える見込みの欧州や北米とは対照的だ。

新興国で2型(インスリンを分泌する細胞が機能しなくなる1型ではなく、肥満や運動不足が原因でインスリンが効きにくくなる2型)を中心に患者が増えるのは、経済成長とともに食生活が豊かになったことが大きな要因だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、ひとり当たりの1日のカロリー摂取量は世界平均で18年までの20年間に8%増だったが、新興国は平均を大きく上回る。ベトナムでは43%、エチオピアでは39%増えた。患者数は21年までの10年間にベトナムで2.3倍、エチオピアで1.4倍となった。

アジア・アフリカでは伝統食が比較的低カロリー・低脂肪だったのに対して、グローバル化の進展で高カロリー・高脂肪の欧米的な食習慣が流入した。都市部ではファストフード店も広がる。炭水化物や脂質の多い食事の取り過ぎが肥満を招き、糖尿病を誘発する。パキスタンでは成人の半数が肥満との調査もある。

20年以降の新型コロナ流行も患者数増加に拍車をかけた。行動制限で運動量が減ったからだ。米カリフォルニア大のタイソン助教授らが米新興企業Azumioの歩数データを解析したところ、21年5~11月のひとり当たりの1日の平均歩数は世界で4997歩と、コロナ前より1割低下した。アジアは3割減った。

タイソン氏は「(いち早く制限を解除した)北米や欧州でさえもコロナ前の運動量を回復していない」と指摘する。体を動かす習慣が戻らなければ、患者数の一層の増加や予後の悪化につながる。

同記事に関連して、3点考えてみました。ひとつは、改めて健康管理が大切だということです。

FAOのデータによると、アジア・アフリカの糖尿病患者数は、2000年には1億人未満でした。2021年には4億人に近い水準まで増えていて、2045年には6億人近くにまで増える見込みとされています。人口増加もあり、患者数が増え続けていく見通しで、ますます社会問題化しそうです。

休養、栄養、運動は健康管理の三大要素と言われます。経済発展と共に食事と運動のマネジメントが崩れる危険性を、同記事は改めて示していると思います。日々の生活の中で、健康管理のための行動を決め、意識的に取り組む必要があることを再認識します。

2つ目は、健康管理と医療に関する商機が、今後アジア・アフリカを中心に世界中で広まる可能性があるということです。

同記事では、新興国で「砂糖税」など、甘い飲み物などの取り過ぎを制限する動きも出てきたと紹介しています。食事管理に関する意識・関心が高まれば、それに適う食へのニーズが高まると想定されます。

また、アジアの都市圏では、日本などの都市に比べ運動できる環境が整っていないエリアがたくさんあります。例えば、私がベトナムで年末年始に過ごしたエリア一帯では、暑くてランニングなども簡単ではありません。日本などの場合一定割合で存在している公園なども、周辺にはない感じです。フィットネスクラブが日本ほど行き渡っているわけでもありません。詳しく調べておらず思い付きレベルではありますが、運動に関する関心と市場性も高まっていく可能性があるのではないかと考えます。

3つ目は、日本人の食生活を再評価することです。

同記事掲載のグラフでは数値の詳細が読み取れず目算なのですが(検索しても同じ内容はうまくヒットしませんでした)、1人当たりの1日のカロリー摂取量について、以下のような内容がありました。

<世界平均のカロリー摂取量>
1998年 2,699キロカロリー
2018年 2,928キロカロリー

<日本平均のカロリー摂取量>
1998年 約2,900キロカロリー
2018年 約2,650キロカロリー

1998年~2018年の20年間でカロリー摂取量が減っているのは、同記事に紹介されている国(中国、ベトナム、パキスタン、エチオピア、日本、米国)の中で、日本だけでした。世界平均を下回り、1998年の世界平均をも下回る数値です。上記の中では、摂取量でエチオピア、パキスタンの次に低い順位となっています。検索してみると、日本人のカロリー摂取量は終戦直後よりも低くなっているというデータも出てきます。

カロリー=食事のすべてではありませんし、そもそも1日2千何百キロカロリーという値自体が適正なのかわかりません。よって、上記だけで良い悪いなどの結論は出せないと思います。そのうえで、カロリーは食事量の大きさを表すひとつの指標であり、その変化の度合いは食事に関するひとつの傾向を表している指標だと言えると思います。

日本だけ摂取量が減っている背景には、いくつかの可能性があると考えることができます。例えば、以下のような切り口です。他にもあるかもしれません。少子化の中国などの傾向が異なることから、4.はあまり当てはまらないかもしれません。

1.人々の食への意欲が減退した
2.食以外のことも含め、消費意欲が全体的に減退した
3.食への意識が量より質にシフトした結果、カロリーや炭水化物の消費量が減っている
4.高齢化が進み、カロリー摂取可能量の少ない人口の割合が高まった結果

仮に3.だとすれば、各国で今後、健康寿命を延ばすための対策が必要となる中で、日本人の食を中心としたライフスタイルに関連する商品・サービスは、輸出などのポテンシャルがあるのかもしれないと思います(思い付きレベルですが)。

続きは、次回以降取り上げてみます。

<まとめ>
カロリー摂取量増加の世界的流れに反して、日本では摂取量が減っている。

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