9月27日の日経新聞で、「経営者「出社求む」8割 KPMG調査、昨年比19ポイント増」というタイトルの記事が掲載されました。コロナ禍で出社できない状況への対応が後押しとなって広がったリモートワークですが、その揺り戻しで出社を促す動きが進んでいることを取り上げた内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
世界で1300人の経営者の83%、つまりはほとんどの経営者が、オフィス勤務への完全回帰を目指しているということになります。オフィス出社に回帰する動きがあるということも聞かれるようになりましたが、想像以上だというのが見てとれます。
とりわけ、発言力、影響力の大きいアマゾンの動きが、注目度が高いようです。
日経新聞の関連記事で、9月17日の「Amazon、社員に週5日出社義務付け 米巨大テックで初」からも一部抜粋してみます。
オフィス回帰のテーマに限らず、トレンドや他社の動向は参考にしながらも、「他社がそうするから自社も」ではなく、自社としてどうしたいかの判断軸をもつことが大切なのだと考えます。
オフィス回帰のテーマに対して、自社としての判断軸をもつためにどのように向き合うとよいのでしょうか。同記事も参考にすると、業務プロセスに関する要因とコミュニケーションに関する要因の切り分けが、ひとつ大きなポイントになるのではないかと考えます。
例えば、記事にあがっている倉庫作業は、倉庫という場所と仕事とが紐づいているため、リモートという形はとれません。これを在宅ワークで置き換えようとするなら、倉庫を家に設置する必要があります。必然的に成り立ちません。
オフィスでの電話対応については、どうでしょうか。
例えばある企業様では、電話をすべて転送できるようにし、オフィス以外の場所でもオフィスにかかってきた電話をとれるようにしました。このことによって、オフィス出社は来客対応ができるための最少人数による持ち回りで行うこととし、事務員のリモートワークを可能にしました。他の作業は、リモートワーク専用のPCを貸し出すことで可能にしています。
そのうえで、このやり方でリモートワークを行うのは、ある程度業務に習熟した社員に限られているそうです。電話を受けて適切な対応がやり切れるスキルが十分に身についている社員はよいが、まだ十分に習熟していない社員は、適切に対応できているかの周囲による確認や、本人が周囲に対応方法を質問するためのコミュニケーションなどが必要なため、リモートワークという形態が相応しくないと考えているためです。
同社様の例では、電話対応という業務に係るプロセス自体はリモートワークが可能なものの、コミュニケーション上の課題があるケースについてはリモートワークという形をとっていないわけです。一方で、コミュニケーション上の課題がないケースではリモートワークという形をとっています。
また、完全リモートワークにしている事務員はいないそうです。来客対応や入社間もない社員へのフォローのための出社当番を回すことで、最低でも何日かに1回は出社することになります。また、事務員全体で取り組んだほうがよいタスクやミーティングの予定があるときは、全員出社としているようです。
同社様のようなイメージで、
・リモートワークが成立する(あるいは成立しない)要因を、業務プロセスそのものとコミュニケーション領域とで分けて考える
・コミュニケーション領域の要因によるものは、どのような方法なら解消(あるいは最小限に軽減)できるのかを明確にして、対処する
・そのことによって何かの課題が出てくれば、新たに対応する
といった整理は、意外とできていないことが多いものです。こうした整理を自社なりに進めれば、リモートワークというテーマについての自社なりの答えに近づくことができるのではないかと思います。
とはいえ、冒頭の記事にも見られるように、このような整理だけで簡単に解決するテーマでもなさそうです。
続きは、次回以降に考えてみたいと思います。
<まとめ>
リモートワークの成立・不成立について、業務プロセスに関する要因とコミュニケーションに関する要因とに分けて整理してみる。