見出し画像

スキマバイト活用を考える

1月28日の日経新聞で、「介護にスキマバイト活用 送迎や清掃、アプリで人手確保 厚労省、利用を後押し」というタイトルの記事が掲載されました。アプリ活用による隙間時間バイトの募集で人材活用する事業所が広がっていますが、その中で介護事業所での活用について取り上げた内容です。

同記事を抜粋してみます。

厚生労働省は、介護事業者が人材仲介アプリで未経験者を集める取り組みを後押しする。送迎や清掃など介護資格が不要な業務を切り出し、アプリで募集をかけてもらう。スキマバイトのように短時間や短期で働く学生らを呼び込み、人手を確保する。

2025年度に一部の自治体で実証事業を始める。自治体が主体となって事業者を募り、アプリの利用費を補助することを想定する。24年度補正予算に関連経費を計上した。

対象とする業務は利用者の送迎や調理補助、清掃のほか、レクリエーションの手伝いなどを想定する。

資格がなくてもできるものの、現場では介護福祉士などが行っているケースが多い。自治体や業務の切り出しのノウハウを持った業界団体が事業者に助言して、業務の切り出しを進める。介護福祉士などの資格を持つスタッフにとっては、介護の本来業務に集中しやすくなる。

単発アルバイトの仲介アプリ「タイミー」や介護の有償ボランティアの仲介ウェブサービス「スケッター」など、既存のアプリやウェブを使って募集することを見込んでいる。実証事業で使うアプリは自治体ごとに決める。介護現場の未経験者に焦点を当て、アルバイトや有償ボランティアとして短期・単発での新たな人材の参入を促す。

未経験者に介護現場を体験してもらうことで、介護業界への関心を深めてもらう狙いがある。本格的に介護職として働くきっかけになれば、長期的な人手不足の対策につながると期待する。

現場の働きやすさの向上にもつながりそうだ。アプリの口コミ機能では、実際に働いた人が業務内容や働きやすさなどを書き込める。多様な人材が体験を共有することで、職場の魅力や課題が見えやすくなる。求職者が自分に合う事業所を見つけやすくなるほか、外部の目が入ることで虐待などの防止にもつながる可能性がある。

厚労省は、働き手の確保に向け、これまで基礎知識を学べる入門研修を設けるなど取り組みを行ってきたが、介護に関心がない人を呼び込むことが難しかった。埼玉県川口市や北九州市などでは、先行的に取り組みが進む。国が後押しして、全国に広げたい考えだ。

介護業界の人手不足は深刻化している。厚労省によると、23年10月時点の介護職員数は前年比2.9万人減で統計を開始した00年以降初めて減少に転じた。同省は、40年度に必要となる介護職員数は約272万人で、22年度職員数から約57万人増やす必要があると推計している。

今後も人手不足が続けば、介護サービスを受けたくても受けられない高齢者が増える恐れがある。厚労省の担当者は、「アプリを使って資格のない未経験者を集める事業者はそれほど多くない。介護人材の裾野が広がり、事業者の負担軽減につながることを期待したい」と話した。

介護職員数が対前年比で初めて減少したということを、同記事で初めて知ったのですが、個人的には驚きました。

厚労省の調べに基づくGD Freak!の記事「日本の要介護(要支援)認定者数の将来予測 (2024年~2050年)」によると、高齢者(65歳以上)のうち、要介護(要支援)者と認定される人数は、2024年の693.5万人から増えていき、2030年には924.7万人でピークを迎えるということです。今より3割以上増える見込みとなります。その後横ばいが続き、2050年で911.5万人と予想されているようです。

現時点で介護事業所の職員数が適正人数をちょうど満たしているというわけでもなく、営業活動や企画などを充実させるための本来ほしい人員数を下回った状態でなんとか現場をやりくりしている事業所も少なくないのではないかと想像します。現状の不足分を補って、かつ今後増加する需要に応えていこうとすると、感覚的ですが、倍増近くまで職員を増やす必要があるのではないかと考えます。

もちろん、業務のオペレーションやパフォーマンスは「人員数×1人当たりの活動量や付加価値」で決まります。人手を増やす以外のもうひとつの要素である生産性向上で補うのも、有力なアプローチです。

介護事業者の中にも、生産性向上を重要テーマと認識し、業務の省人化、省力化、付加価値の高い介護サービスを目指した改善に熱心に取り組んでいるところもあります。そのうえで、今すぐ目立った省人化が実現できるわけでもありません。

また、介護サービスは、人による対人コミュニケーションが重要な要素です。コンビニなどであれば場所によっては無人化できるかもしれませんが、介護事業所で省人化するにも限界があります。今後画期的に技術革新が進むかもしれませんが、少なくとも当面は人手をいかに集められるかが大きな課題テーマだと言えます。

同記事によると、アプリでのスキマバイト活用による人手確保による効果は、次のようにまとめられそうです。

・これまでに介護事業でのバイトには縁のなかった人材が、隙間バイトという形態で新たに戦力化できる。これにより、現場で必要な人工数を確保しやすくなる。

・隙間バイトを活用する人材は介護に必要な職能が限定的なため、、担える業務が限られてくる。また、就業時間も限られているため、多くの種類の業務を覚えてもらうより、なるべく種類を減らし単一の業務を覚えてこなすことに集中できると、より効率的である。このことは必然的に、既存人材が担当する役割の見直しにつながる。

・有資格者など介護の分野で高度なスキルや経験を有する専門人材は、その専門力を活かした業務、あるいは有資格者のみが担当することが必要な業務に、より集中できるようになる。

隙間バイトを導入するかどうかは別として、各人が担当している業務の棚卸しを行い、やり方を改善するという考え方は、介護事業所以外の領域でも応用できると思います。

5W2H(だれ、何、いつ、どこ、なぜ、どのように、いくら)のような切り口で、各人の1日や1週間の業務時間はどのような使われ方をしているのか、それは人工の観点から費用に換算するとどのように捉えられるのか。このような把握は、大切なことではありながら、なかなかできていないことだと思います(自戒も込めてですが)。

把握した結果を受けて、より省人化、省力化できるやり方に変えられることを変える。今の担当業務の一部を別の人材に移管し、より活躍できる他の業務を担当するほうがよいのではないか検討する。別の人材への移管先が隙間バイトではなくても、既存人材との間でのやり取りや業務委託などに変えれば、このことはどの職場でも当てはまります。

一見すると直接の効果が見えにくいことにあえて取り組むことで、新しい発想やイノベーションにつながることもあります。ですので、既に存在している業務プロセスの効率性を追求して無駄ゼロに感じられる状態を目指すのがよいとは限らないと思います。また、厳密には自分の担当領域に入っていないことにもお互いが首を突っ込むことで、組織が成り立つ面もあります。

そのうえで、明らかに仕組み自体を見直して業務分掌や各人の役割を再定義することが必要な環境もあるはずです。

就業者がよりよい形で活躍できる環境設定を考えるうえで、参考になる事例だと感じた次第です。

<まとめ>
各人が担当している業務の棚卸しを行い、やり方を改善する。

いいなと思ったら応援しよう!