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中高年のスタートアップへの転職

12月22日の日経新聞で、「中高年、スタートアップへ 転職8割増、賃金上昇「やりがい」と両立」というタイトルの記事が掲載されました。かつて言われていた「35歳転職限界説」も昔の話で、40代以上の転職も一般的になりました。さらには、40代以上層が大手企業からスタートアップ企業に移る動きも増えてきたとしています。

同記事の一部を抜粋してみます。

「まだ活力もある。これまでの経験を新しい分野で生かし挑戦したいと考えた」。大型蓄電池などを開発するスタートアップ、パワーエックス(東京・港)に勤務する男性(53)は今年6月、大手自動車メーカーから転職した。

前職には25年以上在籍し、米国法人で調達担当の副社長を務めた。パワーエックスでの役職は調達部門のリーダー。「在庫管理や交渉など調達業務を一通りやってきた経験が生きている」という。

エン・ジャパンが運営する転職サイト「ミドルの転職」などを通じて40代以上の新興企業への転職件数を調べたところ、24年(1~7月)は2年前の同時期比で78%増えた。30代(61%増)や20代(53%増)を上回った。新興とは、成長を目指し資金調達を急ぐ新進気鋭の企業だ。

40代以上でも、特に50代は転職者が過去6年で4倍になるなど動きが激しい。以前は中高年にとって、新興は選びにくい転職先だった。「転職によって年収が下がるケースが多かった」(「ミドルの転職」の峯崎直哉氏)ためだ。

状況は急速に変わっている。エン・ジャパンの調査では、新興に転職した40代以上の年収は23年に平均758万円と全転職先の705万円を8%上回った。転職後に年収が増えた割合は50%で、19年の22%から大幅に増えた。

給与上昇の背景にあるのは資金流入と組織の成熟化だ。
新興関連の調査を手掛けるスピーダによると、23年の新興の資金調達額は8039億円と10年前の9倍に膨らんだ。事業規模や組織の大きな企業も増えた。専門職や人脈が豊富な人材の需要が高まり、懐に余裕がある企業は資金を人材投資に振り向ける。

ビズリーチWorkTech研究所の友部博教所長は「大企業などで年功序列型の賃金制度が崩れる中、世の中にインパクトを与え、実力次第で給料も上がる新興企業の魅力が増している」と話す。

経済産業省が21年、大企業からスタートアップに転職した人に最も役立っているスキルを聞いたところ、1位が「業務を通じた専門性・知識・技術」(18.8%)、2位が「外部連携力」(17.8%)だった。「組織横断根回し力」も上位に入った。

新興の目はシニアにも向いている。人材サービスのHajimari(東京・渋谷)の木村直人代表は「持続的な成長には専門知識や幅広い人脈を持つ人材が欠かせない」と話す。同社は今年11月、三菱自動車などで役員を務めた有賀誠氏(66)を採用した。

新興の存続割合は創業10年で3割程度にとどまり、若い世代の社員らとの意思疎通の難しさもある。新たな挑戦をしたくても「失敗するリスクの方が高い」(大手メーカーで働く50代の女性)と二の足を踏む人はいまだ多い。

今は同じ企業に20年以上勤めると退職金の手取りが増える制度がある。労働市場に詳しい一橋大学の宮本弘曉教授は「労働移動を妨げないように、税制や労働政策は働き方に中立的にすべきだ」と話す。新興企業と大企業を行き来できるなど、経験を生かせる仕組みづくりも求められる。

大手自動車メーカーで25年以上在籍し、米国法人の副社長も経験した人材は、社内でも出世頭だろうと想像されます。キャリアチェンジは個人の職業観次第とはいえ、そのような背景をもつ人材がリスクをとってスタートアップ企業に移るのは、かつてはあまり見られなかった動きだと思います。

最近私の身のまわりでも、長年超大手の企業で実績を上げながら勤め上げ、まったく畑違いの新興企業に転職した人がいます。

普段中小企業や新興企業と仕事でご一緒していて感じるのは、ゼネラリストの経験が重宝されることです。

組織内外を取り巻く環境がどの発展段階に位置するかによって、必要となるマネジメントも変わります。例えば、自社の事業が属する市場の発展段階と、自社組織の発展段階という切り口で考えてみると、それらの成熟度合いに応じてマネジメントのあり様を変えていく必要性に気づきます。

市場の発展段階×自社組織の発展段階で、有効なマネジメントにつながるキーワードが下記のようにイメージできます。

【市場の発展段階と求められるマネジメント像】
・成長性高:「革新」「創造」「What」
・成長性安定:「維持」「改善」「How」
・成長性低(あるいは消滅)」:「取捨選択」「再定義」「What」

【組織の発展段階と求められるマネジメント像】
・創業期→拡大期:仕組化する
・拡大期→成熟期:多様性を束ねる
・成熟期→転換期:破壊・創造する

同記事が示唆しているように、市場が安定に向かう、組織が拡大期に移るのを可能にするには、大企業でのノウハウが役立ちます

例えば、大企業を長期間勤め上げ、お客様対応やガバナンス、コンプライアンスなどに関連し、各役職の決裁権の設定や根回しの進め方など、具体的な組織運営の仕組みを知っているだけでも、中小企業や新興企業にとっては重宝するフェーズがあると言えます。

もちろん、中小企業・新興企業から大企業に移る場合でも、中小・新興で培ったノウハウが活きるフェーズがあるはずです。

さて、中高年のキャリアチェンジした先で活躍するために必要となる資質は、いろいろな切り口からいろいろと挙げられると思いますが、個人的には、特に次の2つのいずれか、あるいは両方ではないかと考えます。それは、「人と連携して(あるいは人を動かして)物事を進める力」と「学び続ける力」です。

キャリアチェンジした先では、前職までのスキルや経験が強みとなる可能性は大いにあります。そのうえで、他方では、新しい環境で勝手がわからず、前職までなら苦もなくできていたことができなくなる、あるいはできるようになるまでに大いに時間がかかることも、よくあります。

そうした際に、武器として活用したいのは、いろいろな人と連携したりいろいろな人を動かしたりして事を動かしていくノウハウです。中高年ならではの経験で培った、相手の懐に入って連携していく関係構築力は、発揮できると武器になります。あるいは、社外の様々なネットワークを持ち込んで、自分や新しい環境の組織・人材の不得意領域を埋めることも、大いに武器になります。

そうした武器の持ち合わせがあまりなく、人との連携にあまり強みがない場合も、学び続ける力があれば活躍できる可能性は高まると考えます。

何かの専門領域に秀でていたとしても、別の環境に行ってこれまでと同じように通用し続けるとは限りません。別の環境ならではの未知の知見や方法論、慣習もあります。

そのうえで、入っていった先で専門領域に学びをかけてさらに深めていく、周辺領域を学び知識に幅を広げていくなどがやり切れるなら、新しい環境に元からいる人の専門知識や手法とほとんど遜色ないレベルまで到達したとき、もともと持っていた外界での専門知識や手法の厚みがあることで、大きな優位性を持つ人材ということになります。

もちろん、ひとつの会社環境を何十年も勤め上げることにも、よさやそのことならではの貢献領域があると思います。

いずれにしても、キャリアを長期の営みと認識して、進路の方向性を自分なりに見定めながら取り組んでいくことが有益だと考えます。

<まとめ>
企業規模・業界などの垣根を超えた人の移動が、今後も活性化していく。

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