中高年のスタートアップへの転職
12月22日の日経新聞で、「中高年、スタートアップへ 転職8割増、賃金上昇「やりがい」と両立」というタイトルの記事が掲載されました。かつて言われていた「35歳転職限界説」も昔の話で、40代以上の転職も一般的になりました。さらには、40代以上層が大手企業からスタートアップ企業に移る動きも増えてきたとしています。
同記事の一部を抜粋してみます。
大手自動車メーカーで25年以上在籍し、米国法人の副社長も経験した人材は、社内でも出世頭だろうと想像されます。キャリアチェンジは個人の職業観次第とはいえ、そのような背景をもつ人材がリスクをとってスタートアップ企業に移るのは、かつてはあまり見られなかった動きだと思います。
最近私の身のまわりでも、長年超大手の企業で実績を上げながら勤め上げ、まったく畑違いの新興企業に転職した人がいます。
普段中小企業や新興企業と仕事でご一緒していて感じるのは、ゼネラリストの経験が重宝されることです。
組織内外を取り巻く環境がどの発展段階に位置するかによって、必要となるマネジメントも変わります。例えば、自社の事業が属する市場の発展段階と、自社組織の発展段階という切り口で考えてみると、それらの成熟度合いに応じてマネジメントのあり様を変えていく必要性に気づきます。
市場の発展段階×自社組織の発展段階で、有効なマネジメントにつながるキーワードが下記のようにイメージできます。
【市場の発展段階と求められるマネジメント像】
・成長性高:「革新」「創造」「What」
・成長性安定:「維持」「改善」「How」
・成長性低(あるいは消滅)」:「取捨選択」「再定義」「What」
【組織の発展段階と求められるマネジメント像】
・創業期→拡大期:仕組化する
・拡大期→成熟期:多様性を束ねる
・成熟期→転換期:破壊・創造する
同記事が示唆しているように、市場が安定に向かう、組織が拡大期に移るのを可能にするには、大企業でのノウハウが役立ちます。
例えば、大企業を長期間勤め上げ、お客様対応やガバナンス、コンプライアンスなどに関連し、各役職の決裁権の設定や根回しの進め方など、具体的な組織運営の仕組みを知っているだけでも、中小企業や新興企業にとっては重宝するフェーズがあると言えます。
もちろん、中小企業・新興企業から大企業に移る場合でも、中小・新興で培ったノウハウが活きるフェーズがあるはずです。
さて、中高年のキャリアチェンジした先で活躍するために必要となる資質は、いろいろな切り口からいろいろと挙げられると思いますが、個人的には、特に次の2つのいずれか、あるいは両方ではないかと考えます。それは、「人と連携して(あるいは人を動かして)物事を進める力」と「学び続ける力」です。
キャリアチェンジした先では、前職までのスキルや経験が強みとなる可能性は大いにあります。そのうえで、他方では、新しい環境で勝手がわからず、前職までなら苦もなくできていたことができなくなる、あるいはできるようになるまでに大いに時間がかかることも、よくあります。
そうした際に、武器として活用したいのは、いろいろな人と連携したりいろいろな人を動かしたりして事を動かしていくノウハウです。中高年ならではの経験で培った、相手の懐に入って連携していく関係構築力は、発揮できると武器になります。あるいは、社外の様々なネットワークを持ち込んで、自分や新しい環境の組織・人材の不得意領域を埋めることも、大いに武器になります。
そうした武器の持ち合わせがあまりなく、人との連携にあまり強みがない場合も、学び続ける力があれば活躍できる可能性は高まると考えます。
何かの専門領域に秀でていたとしても、別の環境に行ってこれまでと同じように通用し続けるとは限りません。別の環境ならではの未知の知見や方法論、慣習もあります。
そのうえで、入っていった先で専門領域に学びをかけてさらに深めていく、周辺領域を学び知識に幅を広げていくなどがやり切れるなら、新しい環境に元からいる人の専門知識や手法とほとんど遜色ないレベルまで到達したとき、もともと持っていた外界での専門知識や手法の厚みがあることで、大きな優位性を持つ人材ということになります。
もちろん、ひとつの会社環境を何十年も勤め上げることにも、よさやそのことならではの貢献領域があると思います。
いずれにしても、キャリアを長期の営みと認識して、進路の方向性を自分なりに見定めながら取り組んでいくことが有益だと考えます。
<まとめ>
企業規模・業界などの垣根を超えた人の移動が、今後も活性化していく。