大人になったらなりたいものは?
3月16日に、第一生命保険株式会社が全国の小学生・中学生・高校生 計 3,000 人を対象に行った、第 33 回「大人になったらなりたいもの」というアンケートの調査結果をリリースしました。いつの時代も、「大人になったら何になりたいか」「将来の夢」などは、子供に問いかけられるテーマです。
私自身が子供時代に何になりたかったかは、気恥ずかしいのでさておき、、、当時の上位は男子なら野球選手、消防士、大工などが多かった記憶があります。女子であれば、歌手、スチュワーデスと当時呼んでいた客室乗務員、看護師、ケーキ屋(今はパティシエと表現する)などが多かった気がします。うちの息子やその友人などの話から、今の1位はユーチューバーあたりかなと思って見てみたら、意外な結果でした。
小学生・女子の1位は「パティシエ」(13.2%)のようです。パティシエは1年前の前回(第32回)も1位だったということで、時代を超えて女子を魅了する職業なのかもしれません。
同率2位は7.2%で「看護師」「幼稚園の先生/保育士」。看護師は前回6位から順位を上げています。この結果に、同社は「実際に医療現場で働く方々の姿を目にする機会も多かったことから、人の命を救う姿に憧れを持った子どもたちが多かったのではないでしょうか。」と説明しています。看護師以外に「医師」も、前回の9位から5位に順位を上げています。
「医師」は小学生・男子でも、前回圏外だったのが今回6位に躍進しています。上記の説明はうなずけるものがあります。以前からもそうでしたが、特にコロナ禍以降の医療関係者の皆様のご尽力には頭が下がります。そうした動きは、しっかり子供に響いているのだと感じました。
小学生・女子では、前回圏外だった「YouTuber/動画投稿者」が今回6位に躍進していました。「TikTok などの動画投稿 SNS から新たなスターが生まれたり、視聴者参加型のオーディション番組が盛り上がりを見せたりしたことから」であろうと説明されています。「YouTuber/動画投稿者」は小学生・男子では前回・今回とも2位で、男子のほうがユーチューバーをより実益と結びつけて捉えているのかもしれません。
そして、なんと驚愕なのが、小学生・男子の1位が「会社員」だったことです。(既にこの結果をご存じだった方は驚かないのかもしれませんが)個人的には想像もしなかった回答です。しかも、前回に引き続き2回連続の1位のようです。「会社員」は小学生・女子でも4位でした。
さらに、中学生、高校生は、男子女子いずれも「会社員」が、他を大きく引き離してダントツの1位になっていました。
https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2021_072.pdf
会社員自体はよい存在ですが(私自身も会社員です)、子供が描く将来の夢が会社員? 他に具体的な「なりたいものイメージ」はないのかと、この順位を見た瞬間は思わず悲観的な見方をしそうになりましたが、調査結果項目の詳細と、同調査に関わった研究員の解説を見て捉え方が変わりました。以下、一部抜粋です。
~~子どもたちは「働きやすさ」を求めて会社員になりたいと思っているということです。(結果の)図表ではお示ししていませんが、会社員を選んだ理由として、全学年を通して男女ともに「働きやすそうだから」が最も多い回答でした。コロナ禍でリモートワーク、週休3日制、時差出勤など働き方の多様化が進みました。両親が在宅勤務をしている姿を見て、自分もこんな風に柔軟に働きたいと感じている子どもたちも少なくないのかもしれません。
しかも「収入がよさそうだから」の回答も用意していましたが、「働きやすそうだから」の方が上回りました。子どもたちは「収入」よりも「働きやすさ」を大切にしたいと思っているようです。もちろん「お金」を稼ぐことの必要性は誰もが思っていることです。でも、働くことの対価として何を重視するのかという価値観は多様化しています。「働きやすさ」というのは、働くことの対価として何を重視するのかという自分の価値観に基づいて、働き方を選べるようになるということでもあります。~~
私個人は、コロナ禍以前の、4年ぐらい前からテレワークスタイルを取り入れていました。それ以降現在まで、平均で週2日は在宅勤務という感じでしょうか(緊急事態宣言中の時などは毎日でしたが)。リモートでのお客さま対応に終始する日や企画に没頭する日などは、在宅勤務にしています。確かに、私自身が両親その他を通して見ていた「会社員像」と、自分の息子が私その他を通して見ている「会社員像」は、まったく違っていそうだと思い当たります。
同調査では、「会社員としてどんな分野の仕事がしてみたいか」という項目もありました。小学生・男子では、1位が同率で「科学技術・ものづくり」「食品・飲料」、3位「自動車」、4位「ソフトウェア・IT」、5位「旅行・レジャー(テーマパーク含む)」と続いています。単に漠然と「会社員」とだけ見ているのではなく、相応に具体的な仕事のイメージも持てているようです。(「決まっていない」と回答した子供も相応にいたようですが)
そして、「科学技術・ものづくり」は、中学生、高校生でも男子では1位でした。女子でも中学生で1位、小学生、高校生の女子でも上位に入っていました。「リケジョ」のトレンドも反映されているのを感じます。子どもたちの多くが会社員となって挑戦してみたい分野に「科学技術・ものづくり」を選んでいるということは、「ものづくり立国」を標榜しその伝統を受け継いでいこうとする日本としては、展望が開けてくる結果ではないかと思います。
どうやら、会社員という存在について、大人の想像を超えて、子供たちは一昔前とはまったく異なる概念で捉えているようです。もしかしたら、自分が表面的に「どう見られるか・見えるか」ではなく、実質的に「どうありたいか」「何に取り組みたいか」という、本質的なモノの見方をしているのかもしれません。若干飛躍する感がありますが、近年企業各社がよりその存在目的を明確にしようと「パーパス」を掲げようとしている動きなどを感じ取って、自身にも適用させようとしているのかな、などと思ったりもします。
「会社員」をなりたいものに挙げる、その理由に「働きやすさ」を挙げる。このことには、賛否含めていろいろな意見があるかもしれません。そのうえで、個人的には、一昔前だと悲壮感ただようようなイメージでさえ見られがちだった「サラリーマン」がイメージチェンジしたとも言える、ポジティブでよい変化の表れだと考えます。
同解説では、次のように書かれています。まったくその通りだと同意します。せっかくよい印象をもたれている会社員の私たちが、子供たちの前で「会社はつまらない」「会社に行きたくない」などと不用意にぶつぶつ言ったりして、その印象をつぶしてしまうことのないようにしたいものです。
~~子どもたちは今の社会を敏感に捉えています。次代を担う子どもたちが自分らしく働き、持てる力を十分に発揮することができるよう、「働きやすい」社会を構築することが私たち大人の責務と思われます。~~
<まとめ>
子供にとって、会社員はポジティブな職業になっていた。