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社員イベントの参加対象拡大を考える

10月7日の日経新聞で、「職場参観、友人・恋人も JTBやリクルート、対象拡大 働きがい・信頼醸成」というタイトルの記事が掲載されました。家族も参加できる社員イベントを、家族以外の人も参加できるようにするという内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

家族に会社で働く姿を見てもらう参観日「ファミリーデー」の参加対象が広がっている。

「社員チーム強いな」「ボールのコントロールがうまい」。東京・新宿にあるJTBのオフィスでは、数十人がパラスポーツのボッチャに熱中していた。スタンプラリーや和菓子の味付け体験などの催しも開かれ、スーツや私服姿の老若男女でにぎわっていた。同社が8月下旬に開いたファミリーデーだ。

今回から社員の配偶者や子どもに加えて、友人や恋人なども参加できるようにした。クルーズ船の仮想現実(VR)体験など大人も楽しめるブースを増やした。

来春入社予定の内々定者や取引先も招待し、昨年より3割多い約350人が参加した。母親や娘の友人を呼んだ社員の片山はるかさんは「事業領域の広さや社員の陽気な雰囲気を知ってもらうことで、家族以外からもJTBの印象が変わったと評価を受けた」と話す。

ファミリーデーの参加対象を広げる背景にあるのがライフスタイルの多様化だ。未婚化や晩婚化により独身世帯や子どもがいない世帯が増えている。総務省の国勢調査によると、単身世帯の割合は2020年に38%となり、10年から6ポイント上昇した。

JTBではこれまで対象を家族に絞っていたことで疎外感を感じる独身社員もいたという。社員が大切に思う人を受け入れることで、同僚同士の信頼や発言をしやすい職場づくりにつなげる狙いもある。高崎邦子常務執行役員は「業務を円滑に回すためには、従業員が心理的に安全だと思える職場をつくることが重要だ」と語る。

11月に開催するリクルートも23年から「社員にとって大切な人」なら誰でも参加できるようにした。昨年はオンラインとハイブリッドで開催し、前年の2倍の約2000人が参加した。大学時代の友人や恋人と参加する社員もいた。

企業にとっては事業内容や職場の雰囲気をより多くの人に知ってもらう機会となり、人材獲得につながる例もある。

パソナグループの社員の友人は、本社の一部を置く兵庫県・淡路島でのファミリーデーへの参加が一つのきっかけとなり24年1月に同社に転職した。「海が見える開放的な職場と社員同士の雰囲気の良さに引かれてここで働きたいと思った」と話す。

ファミリーデーは米国の大企業が家族を職場に招くイベントを開くようになり、日本でも2000年代に広まった。

人材マネジメントに詳しい学習院大学の守島基博教授はファミリーデーについて「企業が多様な価値観を認めていると社員や株主に対して発信する場に変わりつつある」と指摘する。参加対象を広げることは「エンゲージメントを高める手段の一つとしても有効」と指摘する。

ファミリーデーに限らず、社員旅行や忘年会などのイベントに、家族の参加を歓迎している企業も多いと思います。そうしたイベントで、家族の枠以外の人も招待できるようにするというわけです。

このことによってエンゲージメント向上にどれだけつながるのかはわかりませんが、直接的な効果として2つ考えてみます。ひとつは、社員の(満足感もさることながら)納得感の向上です。

「配偶者や子ども同伴も可」のような決まりだと、その権利を使える人と使えない人が出てきます。単身世帯の割合が38%ということは、全体の62%向けにしかならない決まりだと言えます。また、旧来の家制度に基づくような関係性とは異なるパートナーのような人の場合、対象になるのかならないのか悩ましいかもしれません。

「社員にとって大切な人」という定義であればシンプルで迷う必要もなく、あらゆる社員に対して公平になります。呼びたい人がいなければ、呼ばなければよいだけです。各人各様の状況を抱えているはずですので、いろいろな状況に対応している決まりのほうが社員としては納得感が高まるはずです。

もうひとつは、招待された人からの、本人や会社に対する理解の深まりです。

仕事関係の急用で、大切な人との予定の変更を余儀なくされたり、頼まれごとをされたりというのは、よくあることだと思います。例えば、保育園のお迎え当番を変わってもらえないか、明日会う予定だったのを別の日にしてもらえないか、などです。私たちは、一方的に予定の変更などを命令されたり頼まれたりすれば不満の要因になりますが、理由がわかっていれば納得もしやすくなります。

相手がどういう環境でどんな人とどういう目的で仕事をし、どういう状況で突発的な事情が発生しやすいかなどを、こうしたイベントなどを通して普段から理解しておけば、そうした場面でも心理的に協力がしやすくなるはずです。

また、会社の価値観や、会社が社業にかかわってくれる人材をどのように見ているかということについても、理解を深める機会になるはずです。人材獲得などは直接的な目的にはならないものだと思いますが、社会に向けて自社の考え方を発信することによる間接的な効果としてプラスの影響はありそうです。

ファミリーデーという、事業活動・組織活動全体の中では小さなイベントではありますが、小さなことだからこそ少しの工夫ややり方を変えるだけですぐに実行可能なことだとも言えます。身のまわりで参考にできる視点だと思います。

<まとめ>
小さなイベントの中にも、見直してよいルールがあるかもしれない。


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