あえて非正規社員を選ぶ人材の増加
3月4日の日経新聞で、「「あえて非正規」若者で拡大 10年で14万人増 「やむを得ず」は半減 処遇や社会保障、新たな設計必要」というタイトルの記事が掲載されました。非正規社員について、以前とは異なる捉え方をする人材が増えているという内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
労働力調査をさらに見てみると、2013年の25~34歳労働力人口は1,239万人、2023年は1,156万人となっていて、10年間で83万人減っています。同記事で非正規社員が64万人減とありますので、非正規社員以外(正社員や経営者等)は19万人減ということになります。若年層で非正規社員の形態で雇用されている人の割合が、全体の中で大幅に減って正社員化が進んだと推察されます。
その中で、「都合の良い時間に働きたい」として非正規になった人は10年間で14万人増えているわけです。何かの事情で不可抗力的に非正規社員の形態を選ぶわけではなく、能動的に非正規社員という形態を選ぶ人の割合が増えていることが分かります。
上記からは、2つのことを考えました。ひとつは、今後雇用形態についての志向がさらに二極化していくだろうということです。
少し前から副業など、より柔軟な働き方やキャリア形成を求める人材が増えていますが、その場合でもひとつの企業に正社員として所属して生計・キャリアの軸を立てるのが基盤になっています。正社員という形態は、依然として高いニーズがあり、ほとんどの人にとって就業スタイルの基盤となっています。
そうした中で、同記事が紹介するように、正社員という選択肢を選ぶこともできる環境ながらあえて非正規社員を選ぶ若年層が増えているわけです。主業+「副業」ではなく、「複業」です。主な所属先が分散する、あるいは所属先はひとつながら帰属意識を限定的にしか持つことを望まない、ということでしょう。
もうひとつは、上記にも関連しますが、非正規の形態を含めた多様な人材の活用が、今後ますます企業には求められるということです。
普段いろいろな企業を見聞きする機会がありますが、多くの企業では従来同様、無限定正社員(勤務地・職種・職務内容・勤務時間が企業都合ですべて変わる)が圧倒的多数で事業活動の要となる形をとっています。非正規社員は、あくまで事業活動を補完するという位置づけにとどまっているわけです。しかし、上記の流れを踏まえると、対象となるパイの人材数が減っていくことから、このやり方では激しい人材獲得競争にさらされることになります。
もちろん、人材戦略に決まったひとつの正解はありません。例えば無限定正社員のみを採用する方針で、自社の魅力で労働市場から人材を引き寄せて事業活動を行い、成果を上げていくのもひとつの戦略です。
しかしながら、大半の企業にとっては、従来型の正社員以外の人材も一層有効活用していくのが、今後目指すべき方向性の基本線になるのではないでしょうか。それも、非正規社員を正社員の補完として位置付ける従来のような考え方ではなく、例えば非正規社員を人材の中核に位置付けるぐらいの考え方も、必要になってくるかもしれません。
普段訪問する企業の中には例えば、経営の各領域に対して、正社員でも非正規社員でもない、週に1~2日勤務の業務請負契約ベースの専門人材を活用し、成果を上げているところもあります。
こうした自社なりの人材戦略の立案と、正社員以外の活用が、今後ますます有効となるのではないかと思います。
<まとめ>
あえて非正規社員を選ぶ人材の有効活用も、今後さらに必要となる。