国内総生産(GDP)最高更新の今後
内閣府が15日に発表した日本の4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.5%増、年率換算で6.0%増でした。金額ベースでは560.7兆円で過去最高です。株価全体も一進一退しながら比較的堅調な状態が続いています。
一方で、景気の先行きには懸念もあがっています。経済情勢は今後どのように動いていくのでしょうか。今週取り上げられている情報から、いくつか考えてみたいと思います。
8月16日の日経新聞記事「日本、外需頼みの高成長 輸出が反動増」から一部抜粋してみます。
GDPの半分以上を占めるのが消費支出です。総務省が発表する「消費支出2人以上世帯」の統計を見ると、低迷の傾向がより明確に見えてきます。
消費支出2人以上世帯 前年比は、2023年3月以降マイナスが続いています。2月が+1.6%だったのが、3月-1.9%、4月-4.4%、5月-4.0%、6月-4.2%(6月分が最新の発表)となっていて、3月以降悪化しています。
5月分と6月分を、前年度以前と比べて見ると、次の通りです。
2019年5月+4.0%、2020年5月-16.2%、2021年5月+12.5%、
2022年5月-0.5%、2023年5月-4.0%
2019年6月+2.7%、2020年6月-1.2%、2021年6月-4.3%、
2022年6月+3.5%、2023年6月-4.2%
5月は、昨年(2022年)に対2021年比でマイナスになっていたところから、さらにマイナスになっているということです。2021年は対2020年比で大幅プラスですが、これは2020年のコロナ禍1年目緊急事態宣言直後で大幅減となっていたものが8割程度戻ったにすぎません。5月でいうと、2019年以前の消費支出から大きく後退したままというわけです。
6月は5月ほど対前年比で極端な動きがありませんが、トータルで2019年以前の消費支出から後退しているという点は5月と同じです。
賃上げの動きが定着しましたが、今のところ物価の上昇に力負けしていて、実質的な賃金が減っていることが、消費低迷の主な要因のひとつと考えられます。日経新聞記事を参照すると、6月の実質賃金は前年同月比1.6%減で、5月の0.9%減から減少率を拡大し、15カ月連続のマイナスとなっています。今後、インフレが落ち着く中でも賃上げの動きが続き、実質賃金が上がっていくかどうかが、消費支出の動向を見る上でのポイントとなりそうです。
設備投資については、輸出先である国外の需要の動向が大きく影響を与えます。
同記事にある米欧の利上げの影響が実体経済への影響として出てくるまで、数カ月~1年かかると言われています。日経新聞別記事によると、FRB7月公表の銀行の融資担当者調査では、基準を「厳しくした」と答えた割合から「緩めた」を引いて算出する大企業・中堅向け指数が4.8ポイント上昇したということです。融資の厳格化で設備投資の下押しとなれば、日本からの輸出も当然影響を受けます。
中国も景気減速の兆しがあります。景気の先行指標のひとつと言われる製造業購買担当者景気指数(PMI)は、7月も好調・不調の境目である50を下回り、4カ月連続の50未満となりました。中国では大学生を含めた若手人材の就職難が進み、6月の16~24歳の失業率は21.3%で、3カ月連続で最高を更新したそうです。7月の工業生産の指標が6月から鈍化、値下げしても売れない不動産が増えているなど、中国の経済関連指標は弱めの内容も増えています。
7~9月期の日本のGDPは、既にエコノミストから実質成長率でマイナスの予測も出ています。今は良さそうに見えなくもない景況感も、今後はより注意を要するのかもしれません。消費支出を後押しする実質賃金の動き、内需が連動する国外景気の動向は、今後の事業活動などを考えるうえでも注目してよいポイントではないかと考えます。
<まとめ>
日本国内の実質賃金の動向、海外経済の動向は、今後の内需への影響が大きい。