性別による賃金格差を考える
先日お会いした経営者様との間で、男女の賃金格差の新聞記事が話題になりました。7月14日の日経新聞で「男女の賃金格差、平均3割 管理職比率の差背景 開示義務1年、金融・保険が最大 7100社分析」というタイトルの記事が掲載されましたが、このテーマへの経営者の関心はやはり高いと感じます。
賃金格差の論点を少し整理してみます。
基本的に「同一労働同一賃金」であるべきです。つまりは、まったく同じ条件下で、同じ質・量の役割・成果の発揮などを求められ、それに対して同じように応えている2人の間では、賃金は同じであるはずということです。
例えば、もし同年度に同年齢で新卒入社、採用時の条件も同じ(AI関連のエンジニアに特別に高給が適用されている、などではなく)、配属先、担当業務も同じで、評価結果も同じ2人であれば、1年後の賃金も同じであるべきです。これが、性別を理由に2人の賃金が違う、などであれば、そもそも論外です。
記事はそうではない企業だと仮定して、性別ごとに賃金データを集計して、一方が有意に高くなり他方が低くなるということは、大きく次の3つの要因が考えられます。
・雇用形態や職務範囲(ジョブ)の違い
職務の種類、勤務地、配属などが無限定の総合職と、一定の範囲内の事務しか行わない一般職といったコース別採用は、以前から存在しています。性別でコースを区分する前提ではないはずですが、多くの会社では一般職は女性のみが存在するというのが実態です。
他にも、転勤が発生しない、宿直や残業を行わないなど、一定の制限以上の負荷を負わない働き方を選ぶ限定職があります。正社員という責任を伴う肩書より、心理的にも負荷の少ない非正社員という働き方を選ぶ人もいます。これらも性別は前提でないはずですが、限定職や非正社員は女性が多い傾向にあります。
業務内容や配置転換などの範囲が限定されていたり、非正社員として正社員が義務とされていることを一部免除されていたりするような、種類の異なる働き方であれば、そうでない働き方に比べて得られる対価が低くなるのは当然です。対価が低くなる働き方を選択している人が、女性のほうが多いということです。
あるいは、職種別に異なる賃金テーブルを採用している会社で、賃金の高い職種に男性が多く存在するということであれば、従業員の賃金を平均化した時に女性のほうが低くなる結果となります。
・期待される成果や役割の大きさの違い
期待される成果や役割が大きい典型は、記事中にもある管理職です。自身の担当職務に、組織の業務マネジメントやチームマネジメントが入ってきます。個人で完結できる仕事が多い非管理職に比べて、所管する組織内のメンバーや組織外の関係者と様々な連携が必要とされる仕事がほとんどです。一般的には、仕事の難易度や求められる成果が非管理職より大きくなります。その分、対価の賃金も高くなるのは当然です。
同記事にある通り、ほとんどの会社で管理職は女性の比率が50%未満です。そのことが賃金比較に反映されれば、結果は女性のほうが低くなります。
非管理職の中でも例えば、より多くの成果や役割を期待される上位の等級には女性が少ないということがあれば、結果は同様になります。
・パフォーマンス(評価)の違い
職位が同じ、期待される成果や役割が同じだとしても、そうした成果や役割の発揮度合いによって対価の賃金は変わってきます。当然、より多く発揮して高評価と認められる社員ほど、高い対価をもらうことになります。もしも、その会社にいる男性社員のほうが全体的に高評価なのであれば(公平な評価のプロセスを経ての前提)、男性社員のほうが賃金が高めになる結果となります。これは、会社によって当てはまる可能性も当てはまらない可能性もあります。
これらについて、どのように向き合うべきなのでしょうか。
続きは、次回取り上げてみたいと思います。
<まとめ>
その違いや区分に意味があるか、適正なのかを、再評価してみる。